栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:脳血管低形成は脳梗塞リスク?/VAP予防バンドル/腹膜遊離体

今週のカンファまとめです〜
ネタかぶらないようにするとかなりマニアックになるなあ・・・

脳血管低形成は脳梗塞リスク? Is Vertebral artery hypoplasia a predisposing factor for posterior circulation stroke?

 前回はVAのBPASの話題が出ていましたが、今回は、VAが低形成や無形性だった場合の話です。結構そんな方はいるのでサラッと流してしまい易いですが、実はVA低形成・無形性は脳血管障害のリスクになる事が報告されている模様です。椎骨動脈の低形成があると対側の椎骨動脈が太くなり、塞栓が流入しやすいのが原因と類推されています。もともとはリスクにならないと考えられていた模様ですが、近年注目が集まっています。

 Fabienne Perrenらは、725人の初発脳梗塞患者のVAを評価し、VA低形成(直径≦2.5mm)があると後方循環系の脳梗塞有意に多かったと報告しています。

2013年には、Aristeidis H.Katsanosらがこの領域に関するReviewを発表しています。

Is Vertebral Artery Hypoplasia a predisposing factor for posterior cerebral ischemic events? A comprehensive review
 Eur Neurol 2013;70:78-83
 このIntroを読むとVA低形成の頻度は比較的多いこと、両側VAの太さが同じ人って25%くらいしかいないぜと始まっています。で、どうも若年発症の脳梗塞になるかもと。このreviewの報告一覧が非常にまとまっていたので載せておきます。それにしても関連がある事はほぼ間違いなさそうであること、若年発症梗塞のリスクになるかもしれない事が分かってきているんですねえ。

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  難しいのはそもともVA低形成の診断をどうするか?という部分でMRAには限界がありそうです。reviewの中では、Dopplarエコーで血流を評価することで、椎骨脳底動脈血流不全とその後の脳卒中を予測できるかもしれないとしています。

 ✓ 椎骨脳底動脈低形成は、後方循環系脳梗塞のリスクになる可能性がある

 

 VAP予防バンドル Ventilator-associated pneumonia bundle

 最近Ventilator患者さんがそれなりに増えてきたので、一応まとめておきます。VAP予防バンドルは様々あり、日本でも2010年に日本集中治療医学会・ICU機能評価委員会が作成したものがネット上に残っています。

http://www.jsicm.org/pdf/2010VAP.pdf


 米国のSHEA(Society of healthcare eoidemiology)とIDSA(Infectious diseases society of america)の提唱する基本的なVAP予防には、様々な項目がありますが、"Good Evidence"とされている項目を列挙しておきます。"Good Evidence"の理由は、介入を行う事で、人工呼吸器装着期間・入院期間・死亡率・医療費を抑制するという効果が証明されています。

①NPPV使用を考慮する High
②出来る限り鎮静を使用しない Moderate
③毎日鎮静を中断する High
④抜管準備を毎日評価する High
⑤鎮静を中止してSBP(自発呼吸トライアル)を行う High
⑥早期離床 Moderate
⑦人工呼吸管理が48-72時間を超えて必要な患者に対して、カフ上部吸引のために専用ポートからの吸引 Moderate
⑧人口呼吸回路の交換は見た目の汚染もしくは機能が損なわれたとき High
⑨頭部挙上 30-45° Low

 もちろん、手指衛生を確実に行う事は最も重要ですが、ICUほど出来ていないという現実があるもの事実。処置前後で頻回に行う必要があります。

 ✓ VAP予防バンドルは重要。どの項目が効果があるかは整理しておく。

 

 

腹膜遊離体 loose body of appendix epicloica

 腹部CTを撮像し、腹腔内に石灰化病変を診た場合に何を考えるべきでしょうか?胆石・尿管結石・膵石・糞石などは比較的Commonですし、腹部リンパ節の石灰化や大動脈石灰化もよく遭遇します。
 
 今回、腹膜垂遊離体の石灰化を経験したのでまとめておきます。腹膜垂 Appendix epiploicaは、結腸ひもに沿って存在する、脂肪を中心とした腹膜側への突起のことです。下記でいう”Epiploic appendages”のことです。
 腹膜垂炎を起こすことも知られ、知らないと憩室炎などと誤診されていることも多い疾患の一つですね。

http://2.bp.blogspot.com/-l7IQg0k3QN0/UuIHLGGd8EI/AAAAAAAAFuk/6-IN1WQwoAc/s1600/1.jpg


 腹膜垂は遊離して腹膜腔に脱落したものが腹腔ネズミ(peritoneal mouse)と呼ばれたり、腹膜遊離体(loose body)などと呼ばれます。腹腔内を移動することが知られており、脂肪成分が中心ながら石灰化頻度も高く、辺縁は平滑で、辺縁有意の石灰化を生じます。

 通常は無症状で、手術時や画像診断時にたまたま認められることが多い様です。体位変換によって病変部位の移動があるのだとか。勉強になりました



✓ 腹膜遊離体は腹腔内の石灰化病変を診た際に考慮する