栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 脳卒中と認知機能/エドキサバン/重症乾癬へのグセルクマブ/肺扁平上皮癌へのPD1阻害剤/COPDとベースラインの肺機能

■JAMA■

脳卒中と認知機能 
Trajectory of cognitive decline after incident stroke*1

 脳卒中による死亡が減り、生存者の障害が大きな問題になっていますが、身体的な後遺症のみならず認知機能低下にも注目が集まっています。実際に脳卒中後にどの程度認知機能が低下するのかは良く分かってないため、今回前向きの観察研究で検証されています。
 論文のPICOは、

P:23572人の45歳以上の一般住民
  SIS(Six-Item Screener)<5点の認知機能低下患者は除外
I/C:脳卒中発症群と非発症群で経時的にSISを評価
O:SISの低下幅・低下速度
T:前向き観察研究
結果:
 脳卒中の診断は、「24時間以上持続する急性の神経脱落症状で血管由来である」というWHO criteriaに準ずる。
 平均follow up期間は6.1年、23572人のうち515人が脳卒中を発症(梗塞 470人・出血 43人・不明 2人)
 喫煙率 15%、DM率 20%
 プライマリアウトカムであるSIS低下幅は、0.1点(0.17-0.04)で低下速度も0.06点/年と有意に低下

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(本文より引用)

 ちなみにSISは3品想起と見当識から構成される簡易型の認知機能スコアです。SISが0.1点とか0.06点とかのインパクトが全く想像できませんが10万人overの前向きコホートだとそんなもんでしょうか。脳卒中survivorが増えると認知機能低下患者も増えてくることは必至です。今後は退院前ないし退院後に認知機能評価した方が良いかもしれません。
 
✓ 脳卒中発症後の認知機能は統計学的に有意に低下し、経時的に低下していく 


エドキサバン Medical letter 
Edoxaban(Savaysa)- The fourth new oral anticoagulant*2

 4つ目のNOACについてのMedical letter。エドキサバンについてです。Medical letterについては、以前も説明しましたが、薬剤情報について患者さん向けにEvidence basedに情報提供している雑誌で1-2年前からJAMAとコラボで記事掲載されています。エドキサバンは向こうでは商品名Sabaysaというんですね。1日1回内服の直接Xa阻害剤で、静脈血栓塞栓症の治療や非弁膜症性心房細動の予防目的に使用される薬剤です。近年新規の抗凝固薬が開発されておりエドキサバンは第4の抗凝固薬です。

 静脈血栓塞栓症の治療のゴールドスタンダードはワーファリンであり、新規の抗凝固薬であるダビガトラン・リバロキサバン・アピキサバン・エドキサバンは、有効かつ安全な代替薬ですが、高齢者や重篤な合併症を持った患者での臨床データは限られています。急性静脈血栓塞栓症の治療は通常少なくとも3ヶ月は継続します。また、中等度から重度の僧帽弁狭窄症や機械弁の場合にはワーファリンを使用すべきです。

 ワーファリンは頻繁なINRモニタリング・食事制限・他の薬剤との相互作用などにを懸念する必要があります。新規抗凝固薬はINR確認が必要なく食事制限なく、薬物相互作用も少ないと言われています。ただ、一方で抗凝固の効果を検証する決まった方法が確立されていません。また、末期腎不全患者には使用できないし、拮抗薬の開発も十分ではありません。

 エドキサバンの注意点としては腎機能に大きく依存する薬剤であり、腎機能補正が必要になります。Crクリアランス≧95では脳卒中リスクにがワーファリンよりも高くなるというENGAGE AF・TIMI-48のサブ解析があり使用しない方が良いとされています。
 
✓ エドキサバン使用に関しては腎機能補正に注意しながら使用のこと

 



■NEJM■

重症乾癬へのグセルクマブ 
A phase 2 trial of Guselkumab versus Adalimumab for plaque psoriasis*3

 重症乾癬や乾癬性関節炎に対する治療は徐々に進歩してきており、現在は生物学的製剤全盛時代に突入しつつあります。乾癬にはIL-12、IL-23が関与していることが分かっており、今回はそのIL-23の阻害剤の効果を検証したRCTが発表されていましたので紹介します。
 論文のPICOは

P:18歳以上の中等度から重度の乾癬
  6ヶ月以上症状持続し、体表10%以上を占める
  Physician's Global Assessment:PGAが3点以上、Psoriasis area severity index:PSAI12点以上
I/C:プラセボ16週間、②IL-23阻害薬(Guselkumab) 5種類容量 16週間、③アダリムマブ 16週間
O:16週間後のPGA 0-1点の割合
  16週間終了後も52週間までfollow up
T:多施設RCT/ITT解析と記載されているがITTではない
結果:
 平均45歳、平均体重91k、乾癬罹患期間 19年、PSAI 18.2点(中央値)
 プライマリアウトカムのPGA 0-1点:
 ①プラセボ 3/42人(7%)、②Guselkumab 5mg 14/41人(34%)、③Guselkumab 15mg 25/41人(61%)、④Guselkumab 50mg 33/42人(79%)、⑤Guselkumab 100mg 36/42人(86%)、⑥Guselkumab 200mg 35/42人(83%)、⑦Adalimumab 25/43人(58%)
 ※95%CI記載なし

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(本文より引用)

  新規のIL-23阻害剤であるGuselkumabは高用量であれば標準治療薬であるAdalimumabと比較して有意に高いという結果でした。まあCOIバリバリの企業スポンサーの研究です。副作用はAdalimumabより少なく、効果は16週間以降も効果続くことも分かっています。さて、これも今後治療は変わっていくんでしょうか。

✓ 重症乾癬に対するGuselkumabはAdalimumabと同等もしくはそれ以上に有効である


肺扁平上皮癌へのPD1阻害剤 
Nivolumab versus Docetaxel advanced squamous-cell non-small-cell lung cancer*4

 PD1阻害剤は先日も悪性黒色腫に関する効果が報告されてきていますが、今回は進行性扁平上皮癌に対するPD1阻害剤の効果を検証した企業ファンドのRCTが報告されています。
 論文のPICOは、

P:プラチナ製剤ベースで一度治療後再発した扁平上皮癌 StageⅢ or Ⅳ
  Eastern Cooperative Oncology Group:ECOG score 0-1
I:PD-1阻害剤 2週間おき
C:Docetaxel 3週間おき
O:生存率
T:RCT/ITT解析
結果:
 平均63歳、Stage Ⅳ 80%
 プライマリアウトカムは、PD-1阻害剤 9.2ヶ月(7.3-13.3)、Docetaxel 6.0ヶ月(5.1-7.3)と有意に生存期間を延長した。1年後の生存率はPD-1阻害剤で42%(34-50%)、Docetaxel群で24%(17-31%)と有意に低下した。
 Grade 3-4の副作用はPD-1阻害剤群 7%と比べて、Docetaxel群 55%と有意に副作用は少なかった。

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(本文より引用)

 化学療法のRCTを見るときに、生存期間3ヶ月延長・・・とか思うと結構微妙と思ってしまいますが、1年生存率が24%と42%と聞くと印象が違いますよね。データの提示方法って大事。副作用も少ない様ですし、今後に期待。あとは長期予後と費用対効果でしょうか。

✓ 進行期・再発の肺扁平上皮癌に対するPD-1阻害剤は、Docetaxelよりも有効で副作用が少ない


COPDとベースラインの肺機能 
Lung-Function trajectories leading to chronic obstructive pulmonary disease*5

 COPDは気流制限が徐々に進行することで発症します。そういった意味でベースラインがある程度のレベルまで達しないこともCOPDリスクになるのではないか?と推測されています。過去にも小規模な研究はあるものの、長期follow upデータは少ない状態です。今回、過去に行われた3つのコホート研究(Framingham研究、Copenhagen、Lovelace研究)を元に、肺機能のベースラインとその後の予後を比較検討できたデータを元にコホート研究を発表しています。
 論文のPECOは

P:2つのコホート研究(Framingham研究、Copenhagen)のうち40歳以前のデータと50-65歳のデータがある人のみ
E/C:ベースラインFEV1.0>80%群とベースラインFEV1.0≦80%群
O:COPD発症の有無
T:前向きコホート研究のデータ統合
結果:
 ベースライン平均33歳、平均follow up 21-25年
 プライマリアウトカムは、①80%以下群で174人(26%)がCOPD発症、②80%以上群で158人(8%)がCOPDを発症し、有意に80%以上群が多かった。

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(本文より引用)

 他にもFEV1.0の低下速度を検討していますが、やや複雑なのでそちらは割愛。本文内で多変量解析が行われていますが、COPD発症リスクと同定されたのは、①喫煙量(PackYear)と②FEV1.0のベースラインが低いこと、③FEV1.0の低下率としています。

 色々解析されていますが、COPDの半分はベースラインが低かった人とされており、ベースラインカットオフを85%まであげるとCOPDの70%はベースライン値が低い人になります。また、Never smokerの人のみで見ると、COPD発症の74%がベースラインが低い人という結果でした。今まで知られてきた喫煙などのFEV 1.0の低下率を上げる因子への対策だけでなく、20歳までにFEV 1.0が十分上がらない因子への介入が必要とのことでした。

✓ 20歳時点での肺機能(FEV 1.0)の低下はその後のCOPD発症に関連する