栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:HATCH score/濃厚流動食高い・・・/3連痰

今週のカンファまとめです〜
今週はネタ満載だったので少しストックしておきます(笑)。

HATCH score  HATCH score

 恥ずかしながら今回初めて知りました。病院で働いていると心房細動を除細動するか迷うシチュエーションは結構ありますが、その後結局また心房細動に戻っちゃったら意味ないよなとか考えますよね。で、除細動後に再び心房細動に進展するかを予測するPrediction ruleがあるんだそうです。
 せっかく教えてもらったのでちょっと元論文を出して見ます。論文は、

"Progression from paroxysmal to persistent atrial fibrillation"
J Am Coll Cardiol 2010 55: 725-731
論文のPECOは、

P:1219人の発作性心房細動患者、入院中に自然停止もしくは薬物による心房細動停止が確認されている患者
E/C:心房細動発症に関連した様々な因子(心不全・年齢・TIA/脳梗塞既往・COPD・高血圧)
O:1年後の心房細動発症
T:前向き観察研究
結果:178人(15%)が新規に慢性心房細動へ移行。
   多変量解析で心房細動発症に関連した独立因子を抽出。

f:id:tyabu7973:20150731000250j:plain
(本文より引用)

 上記の結果を基にHATCH scoreが作成されました。HATCH scoreは、

Hypertension
Age>75歳
TIA or Stroke(2点)
COPD
Heart failure(2点)

で、点数によって1年後の心房細動発症率を予測しています。

f:id:tyabu7973:20150731000502j:plain(本文より引用)

 2点以上は除細動しても再発率高そうだし、rhythm controlでいきますか・・・という使い方でしょうか。問題は、
①除細動後の患者さんのデータではないこと
②1年後の慢性化率が何%なら除細動をする、しないと決めたら良いかがはっきりしないこと
③ほぼCHADS2と一緒じゃね?
ということ。COPDがDMになればCHADS2ですね・・・

 ✓ 発作性心房細動患者が慢性心房細動へ移行するリスク層別化にHATCH scoreが使えるかもしれない

 

濃厚流動食高い・・・ Too expensive to use

 あまり特定の栄養剤を攻撃することが目的では無いのですが、あらためて記事にしておきたい!経管栄養の選択で研修医がよくやってしまうのが、食品のまま在宅に返すことです。

 経管栄養剤は「医薬品」扱いのものと「食品」扱いのものとがあります。多くの病院では、入院中には「食品」扱いのものを使用しています。厳密には、「医薬品」は経腸栄養剤、「食品」は濃厚流動食に分類され、管轄法規も薬事法食品衛生法に分けられるわけです。入院中は”給食”としての扱いですから、この部分に関して極端に患者負担が増えることはありません。問題は退院後です。今回はお金の話題なのでせっかくですから例を出して考えて見ましょう。

①ラコール(医薬品)
 1日1200kcal=200ml 6本=0.63円/ml=756円
 医薬品なので3割もしくは1割負担で、227円(3割)/76円(1割)
②MA-8プラス(食品)
 1日1200kcal=200ml 6本=1166円
 食品なので割り引きなし、消費税あり。

 まあ、結構違いますよね・・・一日の負担ですから、1ヶ月になると差は歴然としてきます。ただ、もっと恐ろしい製剤がありまして。それが「Ref-P1」。ご存知の方も多いと思いますが、誤嚥を予防するために液体の経腸栄養剤・濃厚流動食に追加する粘度調整食品です。これ、食品ですから10割負担です。そして、あくまで粘度をつけるものですから、これ自体ではカロリーはほぼ含まれていません。さて、こやつの値段を記載しておきます。

③Ref-P1(食品)
 毎食使用として1袋/回 → 3袋/日
 1袋=173円 518円/日

  ムムム・・・という感じですね。薬品だと3日分がとろみ剤に消える・・・ひとまずお金は大事だよーということで。

 ✓ 経管栄養の製剤選択には費用を考慮して相談しよう

 

 

3連痰  Three sequence sputum for tuberculosis diagnosis

 結核の診断・除外で3連痰はよく行われておりますよね。最近某MLでも話題になっていましたが、3連痰の定義についてです。毎日1回と考えていましたが、一応CDCなどでは「8-24時間以上あけて採取した痰」と定義されているようです。
Guidelines for Preventing the Transmission of Mycobacterium tuberculosis in Health-Care Settings, 2005
に記載されているのですが、これもReferenceが明記されていなかったので、今回Iwata先生達がretrospective cohortで検証していました。

The validity of three sputum smears taken in one day for discontinuing isolation of tuberculosis patients

Int J Tuberc Lung Dis. 2015 Aug;19(8):918-20.

論文のPECOは、

P:119人の肺結核患者から採取された喀痰塗抹検体、BAL採取は除外
E:早朝採取痰(朝5時か6時)
C:日中採取痰(12時前と12時以降)
O:塗抹陽性率
T:後ろ向き比較研究
結果:
 塗抹陽性は71検体(30%)、早朝採取と日中採取で陽性率は変化が無かった。

  要は何時に取っても良いよというデータが出たので、一日に3回出したって良いんじゃね?という結果と解釈できるかなあ。ただ、これをもとに8時間空けての3連痰でよいのか・・・はいまいちはっきりしない気もします。
 ちなみに本文を読むと早朝痰はGafkyの程度が高い検体が多いことが分かるのと、3連痰で3回目にようやく陽性になった症例は全体の15%だったことも分かります。なかなか興味深い結果でした。

✓ 3連痰は8時間あければ、同日内でも繰り返し検査が可能かもしれない