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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 骨粗鬆症とビタミンD・Ca製剤/周術期の抗凝固療法/気温の死亡への影響/変形性関節症レビュー/α1アンチトリプシン補充療法

BMJ Lancet 高齢者 論文 整形 代謝 薬剤 循環器 おもしろ 医学統計 呼吸器 内分泌 消化器

BMJ

骨粗鬆症ビタミンD・Ca製剤 
Web of industry, advocacy, and academia in the management of osteoporosis*1

 骨粗鬆症に対する薬物療法について、先日はビス製剤が取り上げられていましたが、今回はVitDとCa製剤についてのレビューです。自分の中でモヤモヤしていた領域の話題だったので、少し指針が得られた気がします。

■Introduction■
 現時点で骨粗鬆症の予防・治療にビタミンD・Ca製剤が推奨されている
 一般的に骨粗鬆症の有無に関わらず、Ca摂取量は不足しているのでCa補充は必要になる
 以前はCa・VitD補充が良いとするエビデンスが多かったが、2002年以降、徐々に相反するエビデンスが蓄積されつつあり

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(本文より引用)
 新たに分かってきているのは、Ca・VitD補充は骨折リスクを減らさない、害をもたらす可能性がある
 2009年のコクランレビューも同様の結果
 ただ、2015年時点でも多くのガイドラインが使用を推奨

■Commercial Value to Industry■
 VitD・Ca製剤は製薬会社・食品関連企業・検査会社など多くの利権が絡んでいる
 2013年時点で世界のCaサプリメントの売り上げは60億ドル/年。VitD製剤も米国では7.5億ドル/年
 食品企業ではフォンテラはCa含有乳製品で年間30億ドル、ダノンは年間120億ドル
 VitD測定検査はオーストラリアのみでのデータでも7700万ドル/年
 
■Industry and advocacy organizations■
 企業以外にも骨粗鬆症関連の団体も関連している
 アメリカ骨粗鬆症協会(NOF)欧州国際骨粗鬆症協会(IOF)。何だかプロレス団体みたい。
 両団体ともに「患者アウトカム改善」を目的に掲げているが、戦略方針決定メンバーにスポンサー企業社員が関わっている。
 公式・非公式に企業職員が参加しており、スポンサー企業の50%以上は栄養関連会社

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(本文より引用)

■Responses to unfavorable evidence■
 NOFとIOFは新たに分かったリスク減らさない・害があるといったエビデンスを知っても何のアクションも無し
 2013年にUSPSTFが新しいエビデンスを受けて「高齢者にはVitD・Ca製剤は不要」とコメントしたのとは対照的
 栄養評議会CRN)の対応としては2010年のCa補充と心血管イベントに関するメタ解析を受けて「消費者にCa補充効果を疑わせてはいけない」とコメント。
 
■Industry, advocacy, and academia■
 VitD・Ca製剤の論文著者の多くはCOI開示不十分
 National Bone Health Allianceの骨粗鬆症ガイドラインでは治療閾値を10年骨折リスク3%まで下げた
 この基準だと75歳以上の男性50%、女性86%が治療適応
 5年間のBis製剤の治療効果はNNT 167/5年
 企業・NOF・IOFはこの推奨を支持
 2009年のJAMAではCOI処理をするように勧告されるも各学会ともCOI処理法に関してコメント無し
 3つのガイドラインとも金銭的COIが非常に多い。
 43人の著者が270の金銭的COIあり

✓ 骨粗鬆症に対する盲目的なVitD・Ca製剤使用は十分検討が必要


周術期の抗凝固療法 
Peri-procedual management of patients taking oral anticoagulants*2

 BMJのレビューは当たり外れがある(すいません、偉そうで・・・)のですが、今回はかなりしっかりしたレビュー。実際のエビデンスのみならず、実際にワーファリン内服中の患者さん達とも意見交換し、発刊前に再度レビューしてもらってできあがったレビューです。今回のレビューのポイントは周術期・手技前後の抗凝固療法をどうするか?というのがテーマです。従来のワーファリンからヘパリンへのブリッジ療法以外に新規にNOACが出てきて問題が複雑化していることもあり、再度まとめ直されています。いやあ勉強になります。

ワーファリンについて■ 
 まずワーファリン内服中患者の処置時のヘパリンブリッジを行った場合と行わなかった場合の血栓イベント発症率を比較した観察研究のメタ解析が発表されており、これについてはOR 0.80(0.42-1.54)と統計学的に差がつかなかったという事実があります。

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(本文より引用)

更に、出血についてはブリッジを行った方がmajor bleedingが有意に上昇 OR 3.60(1.52-8.50)という追い打ちまで。

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(本文より引用)

最近NEJMに掲載されたBRIDGE studyというRCTでも検証されてもほぼ同様の結果でした。NEJMのRCTでは血栓リスクが中等度以上でない人でのルーチンのブリッジは不要との結論になっています。

 問題になるのは、”手技そのものの出血リスク””患者さんの血栓・出血リスク”の2点です。手技そのもののリスクは、何で規定するかは難しいですが、今回のレビューではmajor bleedingリスクが2日で2-4%程度をhigh riskと見積もっていて、普段良く関わるものだと、大腸ポリープのポリペクや腎生検、主要な外科手術が含まれています。逆にlow riskは0-2%程度と見積もられていて、主要なものだと胆嚢摘出術やヘルニアや痔核の手術、内視鏡生検、ペースメーカー挿入、白内障などの眼科手術などはここに入ってきます。

 もう一つの患者さん自体の血栓リスクは2012年にACCPがガイドラインを発表しており、リスクをHIGH・MODERATE・LOWの3群に分類しています。基本的に心房細動はCHADS2で分類。2点まではLOWリスクとなっています。静脈血栓塞栓症の場合にはいつ発症したかで分類され、1年経過していればLOWリスクです。LOWリスクでは原則ブリッジは推奨されず、MODERATEやHIGHリスクではワーファリン5日前中止の上ブリッジを行い、再開時には手技の出血リスクに応じて24時間後もしくは48-72時間後からの再開を推奨しています。

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(本文より引用)

■NOACについて■
 NOACはそれぞれキーとなるRCT(RE-LY・ROCKET AF・ARISTOTLE)がありますが、それぞれの試験中に30%程度が処置による薬剤中断を経験していて、そのデータを元に出血・血栓リスクを検討しています。まあ、サブ解析なので、本来はこれ自体をきちんと検証すべきなのでしょうが。で、その結果は中断による血栓リスク・出血リスクはどの薬剤も統計学有意差はないという結果でした。

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(本文より引用)
 で、現実的にNOACはどのタイミングで中止し、どのタイミングで再開するかも一覧になっていますので掲載しておきます。ダビガトランだけが腎機能で分けており、アピキサバンは処置の出血リスクで分けています。

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(本文より引用)

 今後については血栓リスクが低い患者ではブリッジ無しで継続の方針が確認できていますが、高リスク患者での理想的な対応は何か、NOACの対応が本当にこれで大丈夫かの検討が必要になります。

✓ 処置・周術期のワーファリンのヘパリン置換のブリッジ療法は低リスク患者では不要でむしろ出血を増やす。高リスク群では今後要検討

 


■Lancet■

気温の死亡への影響 
Mortality risk attributable to high and low ambient temperature: a multicountry observational study*3

 気温と体調不良に関する研究は過去にもいくつかあった模様。これまでは極端に暑い日の影響とかなどがありましたが、今回は寒い日も含めた平均気温と死亡への影響を多国籍のデータを用いて検討しています。
 論文のPECOは、

P:13ヵ国384カ所
E/C:24時間平均気温
O:21日後以内死亡者数
T:後ろ向き観察研究
結果:
 米国135カ所、タイ62カ所、スペイン51カ所、日本47カ所等
 74225200死亡が1985-2012年までに解析対象。
 死亡の7.71%(7.43-7.91)が気温が不適切(全体の95%から外れる気温)期間に発症
 coldとhotでは、coldの方が死亡に寄与 7.29%(7.02-7.49)、hotは0.42%(0.39-0.44)

 意外でしたねえ。暑いよりも寒い方が死亡に関連するんですねえ。まあこんな暑い日にそんなことを言われても困りますが、まあ写真だけでもヒンヤリしたものを・・・ただ、今後温暖化と共にhotが関与する健康被害には更に注目・対策が必要でしょうと。

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(本文より引用)
✓ 死亡への影響が出やすい気温は、”暑い”よりも”寒い”だった


変形性関節症レビュー 
Osteoarthritis

 今週はレビューばっかりなのでサラッと。変形性関節症のレビューです。コモンな疾患でありある程度基礎知識はブラッシュアップしておく必要がありますよね。
■Intro■
 60歳以上の男性10%、女性18%にOAがある
 歴史的には疼痛管理と進行期手術というのが鉄板の流れ
 病態生理解明によって早期のOA検出・予防へシフトしている。

■Epidemiology■
 最大のリスクは年齢
 性差は女性に多い。ホルモンが関連するかは不明
 他に疫学的に関連するのは、解剖学的異常・スポーツ・外傷・肥満・遺伝

■Pathogenesis■
 OAはかつては軟骨の病気と考えられていた。
 最近ではもう少し複雑な病態が疑われ、軟骨・軟骨下骨・滑膜など関節全体を巻き込んだ疾患と考えられている
 全身炎症との関連も指摘されており、2013年のSystematic reviewではXp所見よりCRPの方がOA症状と関連することが判明した

■Diagnosis■
 診断は臨床診断
 Structural OA(軟骨消失)が症候性になるのかどうかの予測が難しい
 実際に画像で軟骨消失していても症状が無い人も多い
 画像所見と症状にあまり関連が無いとも言われている

■Image■
 伝統的にXp。Xpは関節裂隙狭小化に対する感度は高い
 早期OAへはXpでの感度・特異度ともに低い
 注目されているのはMRI
 MRIには多くの撮影方法・プロトコールがあり、今後要検証。

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(本文より引用)

■Treatment■
 重要なのはまずはlifestyleへの介入
 体重減少と運動はエビデンスがあり、特に運動は死亡率減少効果もある
 手術の効果は今一つ
 薬剤はヒアルロン酸も含めて微妙なところ。現在は炎症抑制が主なターゲット

■Discussion■
 予防法は検証されていない
 life style介入効果
 OAの画像・症状解離問題
 以下に早期OAを見分けるか
 OA phenotype毎の個別化治療

✓ 変形性関節症に関する知識を整理しておく必要あり


α1アンチトリプシン補充療法 
Augmentation treatment for α1 antitrypsin deficiency

 正直この疾患はこれまで診断したことはありません。etiology不明の肝硬変・肺気腫で少し気にするようにしていますが。editorialで結構勉強になったのでサラッと。
 
 α1アンチトリプシンは肝臓で生成され、活性化された好中球もしくは死んでしまった好中球から放出されます。プロテアーゼを阻害して肺胞を守るという機能があります。1963年に初めてα1アンチトリプシン欠損症が発見。肺気腫±肝硬変の患者で、喫煙者は30-40歳代には肺気腫を来たし、非喫煙者は50-60歳代に肺気腫を発症すると報告されました。その後1980年代にはα1アンチトリプシンが気腫を起こすメカニズム判明。欠損患者に捕囚するのが良いのでは?と考えられてきました。

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(本文より引用)

それ以降、α1アンチトリプシン補充が行われてきましたが、なかなか臨床的に効果が十分得られていません。今回Lancetに掲載されたRCTでは、治療期間2年でCT上の肺異常をプラセボよりも抑えることに初めて成功し、今後に期待が持たれています。まあ、まだサロゲートアウトカムですし、今後ですね。
 
✓ α1アンチトリプシン欠損症に対する補充療法にようやくpositive data