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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM ピオグリタゾンと膀胱癌/院外CPAでのbystanderの役割 アメリカ/心房細動への抗凝固療法/腹部大動脈瘤の長期予後/胆嚢疾患への外科的・内視鏡的療法

JAMA NEJM 論文 薬剤 泌尿器 内分泌 悪性腫瘍 循環器 救急 心臓血管外科 外科 内視鏡 消化器

■JAMA■

ピオグリタゾンと膀胱癌 
Pioglitazone use and risk of bladder cancer and other common cancers in persons with diabetes*1

 ピオグリタゾンと膀胱癌問題は未だ決着着かずだったのですねえ。それにしてもピオグリタゾンの系統であるPPAR(peroxisome prolierator-activated receptor)系薬剤の歴史は副作用の歴史です。

 当初開発されたトログリタゾンは肝障害で開発中止、ロシグリタゾンは心血管問題で使用制限、で、現在のピオグリタゾンは、膀胱癌・心不全との関連が言われています。唯一市場に残っているピオグリタゾンですが、2003年にFDAは膀胱癌との関連を指摘し、10年前向き観察研究を命令。5年後の中間解析で関連は無かったものの2年以上使用者でリスクが増えるとしていました。今回はついに長期follow upデータが出たため報告されています。
 論文のPECOは2つあります
1つめが

P:19万3099人の40歳以上(1997年時)の糖尿病患者
E:ピオグリタゾンの2回以上処方歴
C:未使用者
O:新規膀胱がん発症
T:後ろ向き観察研究
結果:
 34181人(18%)がピオグリタゾンを内服していた(平均2.8年:0.2-13.2年)
 1261人に膀胱癌発症
 ピオグリタゾン使用者 89.8/10万人年、未使用者 75.9/10万人年で、HR 1.06(0.89-1.26)と有意差を認めなかった

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(本文より引用)

2つめが2002-2012年に新規発症の膀胱癌患者700人とランダム抽出対象患者700人の症例対照研究。こちらでは、膀胱癌患者でのピオグリタゾン使用者は19.6%、対照群は17.5%で両群の調整OR 1.18(0.78-1.80)とこちらも有意差なし

3つめが10個の癌についてピオグリタゾンとの関連を検証。こちらではピオグリタゾンと前立腺癌のHRが1.13(1.02-1.26)、膵癌のHR 1.41(1.16-1.71)と上昇していた。

 今回3つの研究が同時に報告されていますが、その全てが膀胱癌との関連を否定するものでした。中間解析での差がどこにいってしまったのかは分かりませんが、editorialではリスクのある患者に医師が処方しなくなったのでは?と推察しています。武田とイーライリリーが関与している模様ですが、武田は既にこの関連の訴訟で賠償金2400億ドルを支払うことになったのだそうで・・・

✓ ピオグリタゾン使用者の長期後ろ向き観察研究では膀胱癌との関連は認めなかった


院外CPAでのbystanderの役割 アメリカ 
Association of bystander and first-responder intervention with survival after out-of-hospital cardiac arrest in north carolina,2010-2013*2

 院外CPAの予後は過去と比較してもあまり改善しておらず、院外対応の重要性が叫ばれています。AHAのガイドラインでも救命の連鎖の話が強調され、2010年にはAHAが蘇生システムを作れと述べています。2010年にノースカロライナでは、CPAという連絡が来てから60秒以内にCPR・DCを開始することをも目的としたシステムを開始しています。今回は、そのシステムを検証したstudyです。
 論文のPECOは、

P:ノースカロライナ州11州の心原性と思われる院外CPA
E/C:2010から2013年のバイスタンダー蘇生処置・救急隊蘇生処置
O:神経予後良好生存
T:後ろ向き観察研究
結果:
 2010年から2013年にかけてバイスタンダーCPRは、39.3%から49.4%に増加
 2010年から2013年にかけてバイスタンダー除細動は、31.2%から33.9%にわずかに増加
 神経予後良好生存は、バイスタンダーCPRあり 11.8%、なし 8.6%
 2010年から2013年にかけて神経予後良好生存は7.7%→11.8%(バイスタンダーCPRあり)

 バイスタンダーCPRは神経予後を改善するんだなあとあらためて感じた次第。今回日本の論文も取り上げていますが、傾向は一緒なのですが、実際の結果が結構違いますよね。詳しくは日本のものも参照して下さい

✓ バイスタンダーCPRは神経予後良好生存を増やし、バイスタンダーCPRが経時的に増えることで神経予後良好生存も増える


心房細動への抗凝固療法 
Management of anticoagulation in patients with atrial fibrillation*3

 JAMAのClinical guidelines synopsisです。2014年に非弁膜症性心房細動に対する治療ガイドラインが2006年以降久々に改訂されています。AHA/ACC/HRS連名のガイドラインでした。主要な推奨をまとめておきますが、

・発作性心房細動も含めた心房作動患者では、TIA脳梗塞既往もしくはCHADS2-vasc ≧2点なら、ワーファリン(Class ⅠA)かNOAC(ClassⅠB)を推奨
・心房粗動でも心房細動と同様の対応を(Class ⅠC)
・非弁膜症性心房細動患者でCHADS2-vasc 0点であれば抗凝固は行わない(Class ⅡB)、CHADS2-vasc 1点であれば抗凝固もしくは抗血小板を考慮しても良い。
・CKD患者では、eGFR<15ml/minもしくは透析患者ではワーファリンを使用すべき(Class ⅡaB)
・中等度から重度のCKD患者ではNOAC(ダビガトラン・リバロキサバン・アピキサバン)は減量すべき(Class ⅡbC)
・ダビガトランとリバロキサバンは終末期CKD患者では使用すべきではない(ClassⅢ)

  今回のガイドラインは16人の委員会からなり、大半はCOIなく、COIある人には投票権を与えなていませんでした。AHAでは出血予測リスクの精度は中等度で使用は推奨していません。HASBLED等でしょうね。各ガイドラインによってリスク見積もりやVKA・ワーファリンの推奨が異なっています。今後の追加検証によって推奨が変わる可能性あり。

✓ 心房細動に対する抗凝固療法適応についての現時点での推奨を整理しておく

 


■NEJM■ 

腹部大動脈瘤の長期予後 
Long-term outcomes of abdominal aortic aneurysm in the medicare population*4

 AAA手術は近年大きく方針が変わっており、開腹手術からIVRになってきています。いまやAAA治療の78%がIVRだったとも言われており、最近のRCTでは手術よりIVRの方が周術期成績が良いことが分かっています。一方で長期予後はあまり変化が無く、もう少し長期間follow upしたデータが待たれていました。今回8年間のfollow upデータが出ていましたので紹介します。
 論文のPECOは、

P:米国メディケアに2年以上加入した67歳以上の患者で腹部大動脈瘤患者
E:IVR治療群(79000人)
C:手術群(49000人)
※両群をPropensity match scoreで調整し39966人のペア
O:①周術期死亡、②長期死亡、③その他
T:前向きコホート
結果:
 男性 77%、平均年齢75歳、緊急手術の割合 5%
 周術期死亡は、IVR群 651人(1.6%)、手術群 2094人(5.2%)、RR 3.22(2.95-3.51)と有意に減少
 8年後長期死亡は、IVR群 14548人(54.9%)、手術群 14681人(54.7%)で有意差なし
 動脈瘤破裂率は、IVR群 962人(5.4%)、手術群 353人(1.4%)とIVR群で多い。

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(本文より引用)

 結果を解釈するに、短期的な周術期の死亡は手術群が多いが、最終的に長期予後は改善しない。IVRでは修復しきれない大動脈瘤が悪さをして再破裂したり再度追加処置をしなくてはいけなくなってしまって予後は変わらなくなってしまうと・・・。しかも平均75歳の人の8年follow upは83歳なので半分くらいはその時点で亡くなっているというのは当然だよなとは思います。

✓ 腹部大動脈瘤に対する血管内治療は、周術期死亡を減らすが長期予後は手術群と変わらない


胆嚢疾患への外科的・内視鏡的療法 
Interventional approaches to gallbladder disease*5

 胆嚢疾患に対する治療についてのレビューが載っていました。結構新技術が導入されているんだなあと思いビックリした訳ですが、かいつまんで紹介していきますね。
 1985年に腹腔鏡が導入され、スタンダードになり、症候性胆石や軽症〜中等症胆嚢炎に対する治療が変化しつつあります。ちなみに一応急性胆嚢炎に対するガイドラインでの診断・治療のまとめが載っかっています。

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(本文より引用)

 例えばですが腹腔鏡のポート穴もかなりバリエーションがあります。以下に示しますが、現時点では臍以外の3ポートが主流ですが、最近だと大きめのポート臍1箇所のみという手技も行われつつあるのだそうです。

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(本文より引用)
 また、最近は胆嚢摘出アプローチ方法としてNOTESという方法が注目されています。NOTESはNatural Orifice Transluminal Endoscopic Surgeryの略で元々ある自然孔を利用して開腹しないで胆嚢摘出する方法です。2007年頃から導入され、子宮由来だったり直腸由来だったり胃由来だったりします。

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(本文より引用)

 さらに非手術療法として、経皮的以外に内視鏡的方法も検討されており、経内視鏡的な手技として、胆嚢内にVater乳頭を介してドレナージチューブを挿入する方法と、十二指腸と胆嚢の間に瘻孔形成する方法が報告されています。なんか凄い時代だなあ。

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(本文より引用)

 なんか「来てるな、未来」という感じでした。外科医ってこうゆう新技術の開発がすばらしいですよね。尊敬しています。あとは今後のそれぞれの治療法の検証と手技の習熟度という問題でしょうか。

✓ 胆嚢疾患に対する外科的・内視鏡的治療法は日進月歩である