栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:高安病の診断/未破裂脳動脈瘤の管理/痛風関節炎既往のある患者の化膿性関節炎の管理

MKSAPアップします。
タスクがだいぶ進んできたので、次のステップへ。
まあ次から次へと・・・もう少しAcademicなこともやらんとなあ。

高安病の診断  Diagnose Takayasu arteritis

❶症例 
  33歳女性が、3ヶ月前から徐々に悪化する全身倦怠感と発熱、3.6kgの体重減少を主訴に来院。1ヶ月くらい前から、以前は問題なかった労作時に、腕の 筋クランプを認めるようになった。胸痛や背部痛・違和感は認めず。過去に特記すべき既往無く、非喫煙者で高血圧や脂質異常も指摘されたことは無い。
  身体所見では、T 37.9℃、右腕の収縮期BP 62mmHg、左腕の収縮期BP 80mmHg、Pulse 86bpm、RR 16/min、BMI 20。両側の鎖骨下に血管雑音を聴取し、両側頚動脈の圧痛を認めた。心雑音、ギャロップ、心膜摩擦音は聴取されなかった。両側腋窩動脈は触知不良で、橈骨 動脈は触知出来なかった。大腿・膝窩・足背・後脛骨動脈は両側対称性に触知可能。腹部および大腿の血管雑音は聴取しなかった。
 血液検査所見では、血算・生化は正常。ESR 82mm/時、LDL-C 68mg/dL、HDL-C 45mg/dL、TG 92mg/dLだった。胸部レントゲンは正常。

 この患者で最も考えられる診断はどれか?

 ❷高安病
 本患者で最も考えられる診断は高安病である。本患者では、全身症状と炎症反応上昇、大動脈弓などの大血管を巻き込んだ血管炎所見を示す身体所見がある。高安病は若い女性に好発する慢性の血管炎で、大動脈や大血管に病変を来す。初期症状は全身症状で、血管関連の症状は病状が進行してから出てくる。巨細胞性血管炎と同様に動脈の炎症は、動脈壁の肥厚・狭窄・動脈瘤・大動脈や主要血管の拡張を引き起こす。晩期症状は、腕や下肢の跛行や遠位の潰瘍形成などである。頸動脈や椎骨動脈病変は、頭痛・めまい・失神・視野障害などの原因となる。狭心症は、冠動脈の小孔部への炎症は旧で起こる可能性があり、腎血管性高血圧は中等度の大動脈病変により起こり得る。
 高安病の分類方法は複数報告されているが、ACR(アメリカリウマチ学会)による分類基準は以下の項目のうち、3つ以上を満たすものとしている。

・発症時の年齢が40歳以下
・四肢、特に上肢の跛行(運動時の疲労感や不快感)
・片側もしくは両側の上腕動脈の脈触知不良
・上肢の収縮期血圧の左右差が10mmHg以上
・鎖骨下動脈または大動脈部の血管雑音
・高安病に矛盾しない血管走行異常

❸鑑別疾患
急性大動脈解離:本患者は慢性経過の症状で、胸痛や背部痛が無く、胸部X線では異常所見なく、急性大動脈解離は否定的である。

Buerger病:Buerger病は、血栓性炎症性疾患で、主に手や足の小〜中等度の血管に病変を来たし、喫煙と大きく関連している。本患者の年齢はBuerger病として矛盾はしないものの、喫煙歴が無く、一般的には男性の病気である。更には、大血管が有意に障害を受けているのはBuerger病としては非典型的である。

川崎病川崎病はい小児の原因不明の冠動脈瘤を来す血管炎疾患で、大血管に病変を来さない。

Key Point
✓ 高安病は若い女性の大動脈や主要な大血管を巻き込む慢性血管炎である。

Mason JC. Takayasu arteritis - advances in diagnosis and management. Nat Rev Rheumatol. 2010;6(7):406-415. PMID: 20596053

 

 

未破裂脳動脈瘤の管理 Manage an unruptured cerebral aneurysm

❶症例
  45歳女性が、10代に始まり長期間続いている、月経に関連した頭痛を主訴に外来を受診された。彼女は6週間前から頭痛の性状が変化し、現在は週1回程度 頭痛があると言う。高血圧と20Pack-Yearの喫煙歴があり、家族歴は偏頭痛以外には特記事項無し。内服薬は、ヒドロクロロチアジド、プロプラノ ロール、頭痛症状のためにNSAIDs。
 身体所見では、BP 138/78mmHg、Pulse 62bpm、RR 16/min。その他の身体所見・神経学的所見は性状だった。
 脳のMRIとMRAでは、右MCA部位に4mmの動脈瘤を認める以外には特記事項無かった。

 この患者の最も適切な管理はどれか?

 ❷未破裂脳動脈瘤
  禁煙カウンセリングは未破裂動脈瘤の増大や破裂を予防するために最も適切な介入である。本患者で見つかった未破裂脳動脈瘤は偶発的に発見されたもので、この大きさでは頭痛などの症状の原因になるとは考えにくい。彼女の症状の原因は変容性偏頭痛(transformed migraine)と考えられ、閉経前後に頭痛症状が変化することが知られている。脳動脈瘤患者と健常人の症例対照研究では、喫煙者は非喫煙者と比べてくも膜下出血頻度が増加し(女性RR 4.7)、喫煙本数が増える程リスクが高くなることが報告されている。この研究では、喫煙者かつ高血圧があると対照群の15倍くも膜下出血を起こしやすいと報告されている。

 ❸他の選択肢は?
積極的治療介入(クリッピングやコイル塞栓):動脈瘤の前向き観察研究による自然歴を考えると、部位と大きさが破裂率と関連し、これによる層別化対応が日常臨床では役立つ。過去にくも膜下出血既往が無い患者では、前交通動脈で7mm以下であれば最も破裂リスクが低く年間破裂率が約0.5%程度とされており、本患者では前交通動脈の動脈瘤でかつ大きさが4mm以下であり積極的治療介入よりは、手技のリスクが上回ると考えられる。

画像検査follow up:動脈瘤が発見されて1年後に神経画像検査を繰り返してサイズの変化を確認することは推奨されている。もし、動脈瘤の大きさが変化せず無症状の場合には、神経画像検査は2-3年毎に延ばしても良いとされているが、5年は長すぎる。

Key Point
✓ 未破裂脳動脈瘤の破裂に関連する主な危険因子は血圧とタバコである。

Wiebers DO, Whisnant JP, Huston J 3rd, et al; International Study of Unruptured Intracranial Aneurysms Investigators. Unruptured intracranial aneurysms: natural history, clinical outcome, and risks of surgical and endovascular treatment. Lancet. 2003;362(9378):103-110. PMID: 12867109

 

痛風関節炎既往のある患者の化膿性関節炎の管理 Manage infectious arthritis in a patient with concurrent gout

❶症例

 47歳男性が、5日前からの急性の右膝関節腫張・疼痛を主訴に救急外来を受診した。彼は15年前から痛風既往があり、一年に何度も発作を経験していた。糖尿病と慢性腎臓病の既往があり、内服薬はエナラプリル・グリピジド・アロプリノールだった。

 身体所見では、体温 38.2℃、BP 146/88mmHg、Pulse 96bpm、RR 15/min、BMI 27だった。MCP関節やPIP関節・肘頭嚢などに多発する複数の結節を認め、右膝は腫脹・発赤・熱感・疼痛・波動を認めた。
 血液検査所見は以下。

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(本文より引用)

 膝のレントゲン所見は軟部組織の腫脹のみ。関節液穿刺が施行され、関節液中の白血球数 110,000/µL ([110 × 109/L], 88% 好中球)で、偏光顕微鏡では、細胞内および細胞外の複屈折結晶を認めなかった。グラム染色は陰性で、培養結果待ち。

 この患者の行うべき管理はどれか?

 ❷化膿性関節炎
 本患者は、関節液培養検査結果が出るまではVCM・PIPC/TAZによる経験的抗菌薬治療が必要である。彼の痛風既往や痛風結節があり、細胞内・細胞外の尿酸結晶は認めない者の、現時点では痛風発作を呈している可能性が高い。しかし、関節液中の白血球数が著明高値(>50,000/µL [50 × 109/L]) であり、培養結果が出るまでは急性化膿性関節炎として対応すべきである。本症例では、グラム染色陰性という結果は、感染を除外するには感度が不十分である。痛風や他の関節炎を来す疾患のような慢性的に関節障害がある患者は、関節の感染を起こしやすい。本患者では糖尿病があるため、免疫抑制状態にもあることが予測され、グラム陽性球菌のみならず、グラム陰性桿菌や嫌気性菌も起因菌として考慮しておく必要がある。というわけで経験的抗菌薬治療として、VCM +
PIPC/TAZが適切な治療である。

 ❸他の選択肢
 関節腔内のメチルプレドニゾロン注射関節内メチルプレドニゾロン注射は、全身性コルチコステロイド使用による影響を最小限に抑えつつ、急性痛風発作を治療する適切なアプローチの一つではあるが、化膿性関節炎が疑われる患者に対する注射は推奨されない。

 プレドニゾロン内服プレドニゾロン内服も急性痛風発作の治療選択肢で、とりわけ多関節炎を来している場合には用いられるが、糖尿病があり、化膿性関節炎の化膿性も除外し切れていない状況では使用すべきでは無い。

 外科的デブリドマンとドレナージ本患者では現時点では感染の証明はされておらず、穿刺によって経皮的に関節液はドレナージされている。外科的デブリドマンとドレナージは、化膿性関節炎が確定的となり、経皮的アプローチでは感染のコントロールが困難である場合に検討する。

Key Point
✓ 化膿性関節炎と痛風は、どちらも同じ関節に同時に発生することがあり、関節液中の白血球数が>50000/μLで化膿性関節炎を疑うべきである。

Mathews CJ, Weston VC, Jones A, Field M, Coakley G. Bacterial septic arthritis in adults. Lancet. 2010;375(9717):846-855. PMID: 20206778

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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