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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 肝炎と皮疹と発熱/心血管リスク因子ある患者への生活習慣介入/脳死患者低体温療法の移植腎への影響/市中肺炎の原因微生物 EPIC研究

■JAMA■

肝炎と皮疹と発熱 
Fever and rash in a patient with hepatitis*1

 JAMAのClinical image。さて、これで診断できるかなあ・・・56歳男性HIV患者でART中。HCV-PCR陰性でCD4値は382。アトルバスタチンも内服している。新規に全身倦怠感が出現したため来院。採血検査を施行したところ、AST 217、ALT 610、T-Bil 2.2、HAV陰性、HBV陰性、HCV陰性、新規開始薬剤は無く、アルコールも摂取せず。ANA 640倍。肝生検結果は自己免疫性肝炎として矛盾しない所見だった。その後、PSL+AZAを開始したところ、すぐに高熱と手掌・足底を巻き込む皮疹が出現しています。

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(本文より引用)
 次に何をしますか?
A. スタチン誘発性肝炎を考慮してアトルバスタチンを中止
B. 自己免疫性肝炎としてPSL+AZAを継続
C. RPR検査を確認
D. 皮膚生検
 
 むむむ・・・という感じですが。ちゃんと肝生検までしているしなあ・・・とか思いましたが、答えはCで梅毒だったと言う結果です。今回の症例のポイントは、皮疹が手掌と足底を巻き込んでいるところです。発熱・倦怠感と合わせると二期梅毒に典型的な所見になるんだそうです。梅毒は偉大なるimitatorとして有名ですので、鑑別診断に困ったら考えておきましょう。梅毒性肝炎は、ALP高値、T-bil上昇も伴い自己免疫性肝炎と類似することが知られています。もちろん皮膚生検でも74-94%で梅毒の反応が見られることはありますが、二期梅毒では陰性になる事も多いと言われています。また、AIHは通常もう少しCD4値が高値(>500cells/mm3)の際に見られると言われ、本症例では考えにくいかもしれないとコメントされています。

✓ 梅毒性肝炎は、病理学的にも自己免疫性肝炎に類似することがあり注意が必要である

 

心血管リスク因子ある患者への生活習慣介入 
Healthy lifestyle counseling in persons with cardiovascular risk factors*2

 こちらはGuideline synopsis。2014年にUSPSTFが心血管リスク因子のある患者に対する生活習慣改善についてのガイドラインを提唱しています。米国の70%が肥満もしくはoverweightがあると言われており、運動・食事習慣改善は心血管死亡を減らす効果があることが分かっているが、多くの人が理想的な基準を満たしていないのが現状です。

 CVDリスクのある患者への生活習慣改善について検証した74RCTsをもとに、今回のガイドラインを提唱しています。74RCTsの内訳は、49が運動+食事療法、平均5回程度のコンタクトを取っており、平均9ヶ月間に渡る介入、そして5つが臨床的に重要な効果を検証したstudyでした。この5つの研究では4つがnegative、1つがpositiveとなっており、イベント発生数が1%未満の研究が3つでした。イベント発生数10%以上は2つ研究があり、そのうちの一つがCVDイベントを29%も減らしています。
 今回臨床的に重要な効果を検証していない残りの69研究の結果では、T-Cho値や収縮期血圧、体重、血糖値などが報告されており、それぞれT-Cho 5.4↓、sBP 2↓、BW 2-3kg↓、FGS 2↓という結果で、運動介入のみでは大半はnegativeな結果でした。

 今回のガイドラインで分かったことは、過去の多くの研究が臨床的に重要なアウトカム(心筋梗塞脳梗塞発症、死亡等)を評価していないこと、実際の介入方法を現場でreal worldに適応することは難しいなどが課題としてあげられました。今後はよりless intensiveな研究の効果や臨床的に重要な指標を評価した検証が重要です。

✓ 心血管リスク因子のある患者に対する食事・運動の生活習慣介入の効果は限定的である

 


■NEJM■

脳死患者低体温療法の移植腎への影響 
Taking the heat out of organ donation*3

 こちらはeditorialのみ。本文は是非ご覧頂ければと思いますが、今回、脳死患者からの腎移植の際に低体温を行ってから移植を行ったRCTが報告されており、低体温を行う事が移植後の機能遅延(delayed graft function)を減らす事が明らかになりました。

 2012年にアメリカで腎移植を行った患者の予後が報告されていますが、生体腎移植は5年機能が84%、一方死体腎移植の場合には73%と生体腎移植が良いことが分かっています。生体腎移植の方が機能率が高いのは、脳死の影響が指摘されており、脳死になると頭蓋内圧が上昇しカテコラミンサージが起こる事、補体効果が上昇することなどが、移植腎に影響するのでは無いか?と報告されています。これらの影響で、移植後に機能が回復するまでの時間が長い、delayed graft functionが報告されており、これをいかに減らせるか?に注目が集まりましたが、今回のRCTでは、低体温にすることで予防することが可能となりました。

 今回の研究では問題点がいくつかあり、まずは長期予後が不明である事、拒絶反応が低体温にすることでどうなったかの情報がないこと、介入群の方が移植までの時間が長いことなどが指摘されています。ただ、今回のRCT自体は中間解析で終了になってしまう程、効果が高かったことが判明しており、今後脳死患者の腎移植時に低体温療法が併用される可能性が出てきそうです。

✓ 脳死患者の腎移植時に低体温療法を併用することで、移植後の機能遅延(delayed graft function)を減らす


市中肺炎の原因微生物 EPIC研究 
Community-acquired pneumoniae requiring hospitalization among U.S. adults*4

 市中肺炎の原因微生物については、様々な意見がありますが、今回米国で大規模な研究が為されており、EPIC研究として報告されています。ちなみに小児症例は一足先に先日報告されていました。

 今回の論文自体は、前向き観察研究で、2010-2012年に入院した18歳以上の市中肺炎患者を対象としています。病名として、acute infection、acute respiratory infection、pneumoniaなど全てを対象に、放射線科医が確認して胸部X線で肺炎像がある症例のみを組み入れいています。厳密に市中肺炎症例を組み入れるために、28日以内の入院歴や免疫不全、HIV感染、施設入所者などは除外しています。これらの患者さんに出来る限り血液培養・喀痰培養・尿中抗原・ペア血清(退院後も採血)・咽頭スワブPCR・鼻スワブPCRを採取することで、起因微生物が何だったかを検討しました。
 
 結果ですが、最終的に2320人の患者が市中肺炎として組み入れられました。平均年齢57歳、集中治療が必要だったのが498人(21%)で、52人(2%)が死亡しています。2259人のうち病原体が特定できたのは38%。ウイルス性疾患が530人(23%)、細菌が247人(11%)で、ウイルス・細菌の共感染は59人(3%)だった。最も多い起因微生物はライノウイルスで9%、続いてインフルエンザウイルス 6%、肺炎球菌 5%でした。

f:id:tyabu7973:20150810003244j:plain(本文より引用)

培養採取率は、血液培養91%、喀痰培養41%、尿中抗原85%、ペア血清37%で、抗菌薬投与前に採取できた割合はさらに低い結果でした。

 うーん、まずは同定率がかなり低いですね。40%切ってます。重要な喀痰培養は41%しか取られておらず、これじゃあ同定できないかもなあと。肺炎でlow yieldな血液培養を90%以上で採取して、喀痰培養これしか取らないんじゃ意味ないっすよね。やっぱりきちんと良質な喀痰を採取する戦略をとらないといけません。discussionのところでも小児EPIC研究では81%が原因微生物を同定できており、成人ではきちんと同定できる手法を考えよう!ってなってましたが、まずは痰取ってからな!という感じ。ただ、意外とウイルスが多いのもビックリ。ライノウイルスなんて風邪のウイルスでしょ?と思ってましたが。今回は同時期の非肺炎患者でも検証してそちらではライノウイルスが出ていないので、やはり何かしらの悪さをしていることは間違いないようです。

✓ 米国の市中肺炎の起因微生物同定率は低く、喀痰培養が取られていない。起因微生物はライノウイルス・インフルエンザウイルスなどのウイルス性疾患が多く、細菌では肺炎球菌が多い