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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:AIM & NEJM シートベルト装着法律と交通事故関連死亡/上気道炎患者に対する抗菌薬投与の実態/巨大脳動脈瘤症例/ダビガトラン拮抗薬の観察研究/妊婦の静脈血栓症

■AIM■ 
今週はJAMAは不作だったのでAnnals of Internal medicineの1ヶ月の中からのピックアップをまとめておきます。

シートベルト装着法律と交通事故関連死亡 
Motor vehicle crash fatalities in states with primary versus secondary seat belt laws*1

 自動車事故死亡についての研究。交通事故死亡は米国の5-34歳で死亡原因の第1位です。実はかなり多くの研究がされています。例えば、制限速度だったり血中アルコールだったり、運転免許取得の学校などがそれぞれ死亡事故予防に効果があるとされていますが、今回はシートベルトに関する法律の効果について検証しています。ちなみにシートベルトの法律には、Primary法とSecondary法があり、Primary法とはシートベルトを着けていないだけで違反、Seconcary法とは、シートベルトを着けていない状態で他の違反を侵した場合に違反とするもので、Primary法は日本でも施行されています。
 論文のPICOは、

P:米国50週の自動車運転者
I:シートベルト Primary法
C:シートベルト Secondary法
O:交通事故発症30日以内の死亡
T:後ろ向き観察研究
結果:
 2001年と2010年を比較し、Primary法は16→30州へ、Secondary法は33→19州へ変遷。法律なしが1州。
 上記10年間で28万3183人が交通事故死亡。
 Primary法とSecondary法を比較すると、Primary法の法が死亡率が低かった 調整IR 0.83(0.78-0.90)。

f:id:tyabu7973:20150817123331j:plain
(本文より引用)

 もともとPrimary法の方がシートベルト着用率が増えることは分かっていましたが、今回法律そのものが死亡を減らした可能性が示唆されました。もちろん交絡因子もあるかもしれませんが・・・今後は全州に推奨していきましょうとか、シートベルトを着けない群の方々(男性、16-24歳などの若年者、田舎在住、人種等)にアプローチしていく必要がありますね。

✓ シートベルトを着ける法律を適応することは交通事故死亡減少効果がある
 

上気道炎患者に対する抗菌薬投与の実態 
Variation in outpatient antibiotics prescribing for acute respiratory infections in the Veteran Population*2

 いわゆる”風邪に抗菌薬”ってやつですね。これだけ言われてるのに、まあ世界各国どの国も処方されているわけですねえ。今回はアメリカの退役軍人病院を対象とした外来抗菌薬処方の実態調査という感じです。
 論文のPECOは、

P:2005-2012年に急性呼吸器感染症と診断された患者/糖尿病・COPD・癌患者は除外
  退役軍人病院の救急外来もしくは一般外来/肺炎や細菌性咽頭炎などの抗菌薬適応疾患は除外
O:抗菌薬処方の有無/マクロライド処方率/患者・処方医師データ
T:後ろ向き観察研究
結果:
 平均年齢60歳、男女比:男85%、女15%
 抗菌薬処方 714552人、抗菌薬非処方 329971人
 抗菌薬処方群:急性上気道炎 42.5%、気管支炎 29.7%、副鼻腔炎 23.4%、咽頭炎 10.5%
 抗菌薬非処方群:急性上気道炎 70.9%、気管支炎 11.5%、副鼻腔炎 8.0%、咽頭炎 11.3%
 抗菌薬処方は、2005年が67.5%、2012年が69.2%と有意に増加傾向。
 マクロライド処方は、2005年が36.8%、2012年が47.0%と有意に増加傾向。
 副鼻腔炎に対しては86%、気管支炎に対しては85%抗菌薬が処方されている

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(本文より引用)

 うーむ・・・。ガイドラインでも推奨されていないこのプラクティスが世界中で拡がっている背景は何なんだろうか?とそこに興味があります。この辺りは理詰めの話だけではなくて、何かしら異なる機序がある様に感じています。そして、正論から攻めてもプラクティスは変わらない気も・・・教育と実践とFeedbackが大事かなあ。

✓ 本来抗菌薬非適応の急性呼吸器疾患に対して大量に抗菌薬が処方されている

 



■NEJM■

巨大脳動脈瘤症例 
A giant aneurysm of the anterior communicating artery*3

 NEJMの症例報告。55歳男性が3年前からの視力障害と人格変化を主訴に外来を受診された。妹が動脈瘤破裂で亡くなっている。診察では右眼の視力低下と視野欠損が判明し認知機能も低下していた。頭部CT・CTA・MRI(図A・B)では血栓充満、石灰化を伴う7cmの前交通動脈動脈瘤を認め、周囲の脳浮腫を伴った。破裂リスクを下げ、圧迫効果を下げるために血栓除去と動脈瘤修復が行われた。術後には、視力と認知機能は回復し、仕事がで切る様になった。2年症状は安定しており、フォローアップした頭部CTでは動脈瘤嚢が虚脱している様子が明らかになった(図C)。

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(本文より引用)

 2.5cm以上の巨大動脈瘤は、稀ではあるが未治療では破裂リスクが高い。およそ20%の動脈瘤患者に第一親等の家族歴がある事も抑えておく。

✓ 最大7cmの未破裂動脈瘤の治療成功症例がある


ダビガトラン拮抗薬の観察研究 
Idarucizumab for Dabigatran reversal*4

 ダビガトランは拮抗薬が無いとのことでしたが、現在開発が進んでいる模様で今回拮抗薬Idarucizumabの効果を検証した研究が報告されていました。とはいえ、中間解析で終了、COIありまくりの企業研究で、プラセボはおかない前向きの観察研究という体裁です。
 論文のPICOは、

P:18歳以上のダビガトラン内服中の患者
 PartA:緊急止血
 PartB:8時間以内に手術
I:拮抗薬Idarucizumab 点滴投与
C:なし
O:4時間時点のトロンビン時間
T:前向き観察研究
結果:
 平均77歳、ほとんどが心房細動患者、最終内服から平均15時間経過
 Part Aは脳出血 35%、消化管出血 39%
 GroupA/Bともに拮抗薬開始直後にはトロンビン時間は正常化

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(本文より引用)

 まあ、拮抗はされることは分かりましたが、そもそもプラセボ比較しなくても良いのか?と。ダビガトラン最終内服から15時間経過しており、内服しない群もこれくらい下がるんじゃ無いの?とか思ってしまいました。ちょっとひねくれてますかね。

✓ ダビガトラン拮抗薬は投与4時間後のトロンビン時間を正常化させる


妊婦の静脈血栓症 
Pregnancy complicated by venous thrombosis*5

 妊婦さんの静脈血栓症に関するレビューです。ざっくりと勉強になったことをまとめておきます。
 
・妊婦さんでは、呼吸困難感も下腿浮腫も生理的に起こり易いために臨床診断があてにならない
・妊婦さんのデータで臨床的な疑いで実際に診断されるのは10%前後
・下肢静脈超音波で比較的安全に除外可能。
・226人の妊婦データでエコー陰性でその後follow upでDVTが見つかったのは1.1%と報告されている。
・CTAによる被曝は多くの場合には、影響が少ないと考えられ、いざという時にはCTをとるべき
・妊婦ではd-dimerが除外に使えない
・妊婦のDVT予測はWellsではなくLEFT ruleなどがあるが微妙なところ
・治療のスタンダードは低分子ヘパリン。陣痛が来るまで治療を継続し、産後最低6週間は治療継続
・低分子ヘパリンの量や1日1回なのか2回なのか結論は出ていない。

まとめの表は以下になっています。ご確認下さい

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(本文より引用)

✓ 妊婦さんのDVTについて、通常成人との違いなどを整理しておく