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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:COPD患者の術前ケア/成長ホルモン欠乏症の診断/円板状エリテマトーデスの診断

MKSAP 呼吸器 内分泌 脳外 膠原病
MKSAPアップやや遅れました。
今週は結構間違えましたね。
勉強勉強。

COPD患者の術前ケア  Manage preoperative care of a patient with COPD scheduled an intermediate-risk procedure

❶症例 
  60歳男性が、外傷性の股関節骨折で入院した。全身麻酔下でTHAが予定されている。COPDがあり呼吸困難のために強い運動制限があるものの、過去4-6ヶ月以上は肺機能は横ばいで経過している。時折喀痰を伴う咳嗽があるがこれも過去6ヶ月で変化は無い。急性の呼吸器症状は無く、タバコは20本/日を継続している。現在の使用薬剤は、チオトロピウム・アルブテロール・フルチカゾン/サルメテロール。
  身体所見では、体温正常、BP 108/72mmHg、Pulse 78bpm、RR 18/min、SpO2 96%。肺聴診所見では散発的なcracklesとwheezigを認めるがいつもと同様の所見。心臓聴診所見では、心音整でS1・S2正常だった。

 この患者で術後肺合併症を減らす最も適切な介入はどれか?
A. 夜間CPAP
B. 胸部X線
C. Incentive spirometry
D. 肺機能検査

 COPDの術前ケア
 COPD患者でTHA手術を予定している患者では、周術期肺合併症(PPCs)を減らす為に術前にincentive spirometryを行うべきである。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/32/Incentive_spirometer.jpg

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/3/32/Incentive_spirometer.jpgより引用

周術期肺合併症(PPCs)のリスク因子には、慢性肺疾患・高齢・脊髄/全身麻酔・横隔膜周囲の手術が挙げられる。COPD患者では、PPCsの頻度が2-5倍と言われている。PPCsのリスクを減らすために最も効果が証明されているのは、術前・術後の深呼吸もしくはincentive spirometryによる肺拡張である。

❸他の介入選択肢
夜間のCPAP療法:気道に陽圧をかけることは、intensive spirometryが使用出来ない場合の術後無気肺を最小にする方法ではある。しかし、intensive spirometryが使用出来る患者での周術期の陽圧換気の役割はよく分かっていない。更にCPAPは日中・夜間ともにCOPD患者に適応されていない。

胸部X線胸部X線は術前にしばしばオーダーされる。しかし全体の1-3%程度しか異常所見を来さず、更におよそ0.1%が臨床ケアに影響するのみ。さらに、ほとんどの胸部異常影は病歴・身体所見で予測可能だった。本患者では、症状も肺機能も変化なく、胸部画像検査が手術に関連した予後を改善することはないだろう。

肺機能検査:肺機能検査の結果はPPCsを予測しないと言われていて、ルーチンの周術期評価として行うべきではない。原因が明らかになっていない呼吸困難感の診断の際に用いるべき。

Key Point
✓ 周術期リスクが中等度の患者で、術後肺合併症のリスクを減らすために最も効果が証明されているのは、術前・術後の深呼吸もしくはincentive spirometryによる肺拡張である。

Qaseem A, Snow V, Fitterman N, et al; Clinical Efficacy Assessment Subcommittee of the American College of Physicians. Risk assessment for and strategies to reduce perioperative pulmonary complications for patients undergoing noncardiothoracic surgery: a guideline from the American College of Physicians. Ann Intern Med. 2006;144(8):575-580. PMID: 16618955

 

 

成長ホルモン欠乏症の診断 Diagnose growth hormone deficiency

❶症例
  27歳男性が、7ヶ月前からの筋力低下、進行性の倦怠感、なんとなく元気が無いという主訴で来院。患者は16ヶ月前に自動車事故で重度の頭部外傷を受傷していた。尿量過多や冷え、便秘、性欲低下や性機能障害を示唆する症状を認めなかった。内服薬はマルチビタミンのみ。
  身体所見では、バイタルサインは正常。BMI 30で、腹囲が増加傾向だった。神経学的所見も含めた他の所見には異常を認めなかった。

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(MKSAPより引用)

この患者の診断で最も適切な次に行うべき検査はどれか?
A. 空腹時成長ホルモン測定
B. 糖負荷試験
C. GRH検査
D. IGF-1測定

 ❷成長ホルモン欠乏症
  本患者では、成長ホルモン欠乏症のリスクがあるため、IGF-1を測定すべきである。頭部外傷既往のある患者でとりわけ重症例の40%に、その後下垂体機能低下症が発症する事が知られている。頭部外傷後の下垂体機能低下で最も一般的なのは成長ホルモン欠乏症である。成人の後天性成長ホルモン欠乏症は、中心性肥満と四肢骨格筋のやせなどの身体組成の変化、QOL低下、骨密度低下などが特徴的。心血管リスクは増加することもあるかもしれない。本患者では、進行性の除脂肪体重の減少、中心性肥満、日常生活のパフォーマンス低下、QOL低下など全ての症状が成長ホルモン欠乏症を示唆する。この様な患者では、成長ホルモン置換療法が筋肉量を増加させ、QOLを改善し、中心性肥満を減少させる。

 ❸診断のための検査は?
IGF-1:成長ホルモン欠乏症の診断のための最初の検査はIGF-1測定である。IGF-1が低値であれば、追加検査としてGRH負荷試験を行い、成長ホルモン欠乏症の診断確定を行う。

空腹時GH:空腹時成長ホルモン値測定は成長ホルモン欠乏症の診断には役に立たない。というのもほとんどの患者で、成長ホルモンは拍動的に分泌されるため、一日のほとんどの時間では測定できないからである。空腹時GH測定では成長ホルモン欠乏症か否かの診断はできない

糖負荷試験:本患者では、糖負荷試験は役に立たない。糖負荷試験で成長ホルモンが抑制されないことは、末端肥大症などの成長ホルモン過剰状態の診断にはなるが、成長ホルモン欠乏症の診断には役立たない。

GRH試験:GRH負荷試験は低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の際にLH・FSHの機能が保たれているかを評価するために用いられる。本患者では男性ホルモンの欠乏症を疑うような倦怠感や筋力低下症状はあるが、貧血や性欲低下、勃起不全などの典型的な症状が欠けている。また、朝8時のテストステロン値測定は低ゴナドトロピン血症を除外することができ、GRH負荷試験は不要でアル。

Key Point
✓ 頭部外傷後に、最も頻度の高い下垂体前葉ホルモン欠乏症は、成長ホルモン欠乏症である。これは、IGF-1(Insulin-like growth factor 1)の値と刺激試験によるGH予備能の評価によって診断される。

Kreitschmann-Andermahr I, Poll EM, Reineke A, et al. Growth hormone deficient patients after traumatic brain injury–baseline characteristics and benefits after growth hormone replacement–an analysis of the German KIMS database. Growth Horm IGF Res. 2008;18(6):472-478. PMID: 18829359

 

円板状エリテマトーデスの診断 Diagnose discoid lupus

❶症例

 34歳女性が、過去2年間で頭皮の斑状な毛髪減少と持続する顔面病変を主訴に来院された。彼女は毛髪の脆弱性は訴えていない。夏期に悪化する一過性の掻痒はあるものの頭皮に症状は無い。他には既往歴はなく内服薬もなし。

 身体所見では、色素脱落、わずかな紅斑と萎縮斑が頭皮に見られ、毛嚢塞栓と瘢痕性脱毛を認めた。耳には角質増生と色素沈着を伴う薄いプラークあり。髪の密度は正常で、髪の毛引き抜き検査は正常。顔面所見は以下。

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(本文より引用)

 膝や肘・臍、臀部には皮膚病変は認めない。爪は正常でpittingなし。

 この患者で最も考えられる診断はどれか?
A. 円形脱毛
B. 慢性皮膚エリテマトーデス
C. 乾癬
D. 扁平上皮癌

 ❷円板状エリテマトーデス
 本患者は、頭皮・顔面に円板状ループス病変を伴う慢性皮膚(円板状)エリテマトーデスである。色素脱落・萎縮斑が頭皮・耳にあり、とりわけ黒人女性に多いのが特徴である。円板状ループスの部位は瘢痕性脱毛となる。慢性皮膚ループス患者のほとんどは全身性病変を来さない

 ❸鑑別診断
 円形脱毛円形脱毛症は頭皮に瘢痕を残さないのが特徴。毛嚢は開存していることが多く、円形斑を来すが、耳などの皮膚変化は生じない。

 乾癬乾癬は、頭皮に罹患することはあるが脱毛や瘢痕は起こさない。さらに、乾癬は色素脱落を来す事はまれで、古典的にはピンクの紅斑性の薄いプラークを形成し、周囲には銀色の落屑を伴う。部位は、肘や膝などの擦過部が多い。

 扁平上皮癌進行性の扁平上皮癌は毛髪減少を来す事はあるが、その様な場合では隆起性発育が認められることが多い。扁平上皮癌は、本患者の様に多発することは稀。

Key Point
✓ 慢性皮膚エリテマトーデスは、紅斑、色素脱出、萎縮、境界明瞭な隆起などが特徴的である。

Walling HW, Sontheimer RD. Cutaneous lupus erythematosus: issues in diagnosis and treatment. Am J Clin Dermatol. 2009;10:365-381. PMID: 19824738

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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