栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:STEMIの非梗塞血管へのPCI

STEMIの非梗塞血管へのPCI
Complete revascularisation versus treatment of the culprit lesion only in patients with ST-segment elevation myocardial infarction and multivessel disease(DDANAMI-3- PRIMULTI):an open-label,randomised controlled trial*1

Lancet 2015;386:665-71

【背景】
 急性のST上昇型心筋梗塞(STEMI)において、冠動脈の複数病変の方が単一病変と比較して予後が悪い。今回、STEMI患者に対して、FFR(Fractionla Flow Reserve)ガイド下に、全ての有意狭窄に対して再潅流療法を行う場合と梗塞責任血管のみに再潅流療法を行う場合とを比較した。

【方法】
 デンマークの2つの大学病院でのOpen-label、ランダム化比較試験が行われた。STEMI患者で一つ以上の臨床的に有意な冠動脈狭窄があり、梗塞の責任血管がある患者を対象とした。患者は、梗塞責任血管に対してPCIが成功した後に、それ以上の追加治療は行わない群とFFRガイド下に他の50%以上の狭窄病変に対して退院前に再潅流療法を行う群に1:1で無作為割り付けされた。ランダム化はwebベースのシステムで機械的に行われた。内科的治療は両群ともにベストなものが行われた。プライマリアウトカムは、全死亡・非致死的再梗塞・非梗塞血管由来の虚血による再潅流のCompositeアウトカムだった。追跡は1年間行われ、ITT解析だった。

【結果】
 2011年3月から2014年4月までに、627人の患者が組み入れられた。313人が梗塞血管のみ、314人がFFRガイド下に他の狭窄病変に対する再潅流療法が行われた。平均follow upは27ヶ月(12-44ヶ月)。プライマリアウトカムは、梗塞血管のみ群で68件(22%)、FFRガイド下で追加再潅流群で40件(13%)で、HR 0.56(0.38-0.83)だった。

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(本文より引用)

【結論】
 多発狭窄病変のあるSTEMI患者では、FFRガイド下で梗塞血管+それ以外の狭窄病変に再潅流療法を行う事は、梗塞血管のみに再潅流療法を行う場合と比べて有意にリスクを減らした。ただし、この効果の多くは非梗塞血管由来の虚血に対する再潅流療法が少ないことが影響しており全死亡や非致死的再梗塞では両群に差は認められなかった。将来的な追加の再潅流療法を回避するために、初回入院時に非梗塞血管の狭窄することは安全である。今後、非梗塞血管への治療をいつ行うべきか?ハードエンドポイント(全死亡など)を減らすかどうかについて更なる研究が求められる。

【批判的吟味】
・まずは論文のPICOから見てみます
P:STEMIで責任病変のPCIに成功した後に、他に50%以上の狭窄病変があるとカテーテル施行医に判断された患者
I:退院前に他の病変に対してもFFRガイド下(0.8未満)でPCI
C:介入無し
O:Compoiste(全死亡・非致死的心筋梗塞・非梗塞血管由来の再潅流療法)
T:RCT/ITT解析
・もともと4370人で適格性を確認されていますが、1350人は単一病変だったので除外されています。
・平均年齢64歳、DM 10%、3枝病変 31%、喫煙者 50%、前壁梗塞 35%、下壁梗塞 60%
・平均2日後にCAG再検を行ってFFR施行。
・イベント発生数は少なく全死亡は11例・15例。STEMIで多発病変があっても死亡率は5%以下なんですね〜。
・やはり問題はComposite outcome。本文でも検討されていますが、結局将来的な再潅流療法が減るというアウトカムで稼いでいるので、死亡率や実際の心筋梗塞を減らしたわけではありません。それぞれで分けて見ると、
 全死亡:HR 1.40(0.63-3.00)
 非致死的心筋梗塞:HR 0.94(0.47-1.90)
 再潅流療法:HR 0.31(0.18-0.53)
というわけですね〜。うーむ、微妙・・・
・まあ、もちろん再潅流が減るのは良いんでしょうけど、狭いところを治したい!という臨床医の判断がここで出てきますから悩ましいところです。もちろん、今回FFRを施行しているので、単純な狭窄病変ではなく機能的にも問題がありそうな病変への介入ではあります。
・follow upをもう少し延ばしたり、イベント発生数をもう少し増やすと違うのかもしれませんが、STEMIのハードアウトカムがこれほど起こらないとなると、もっと桁を増やした大規模検証が必要になるのかもしれません・・・トホホだな。

【個人的な意見】
 STEMI患者での非梗塞血管に対する治療の推奨は実は各国ガイドラインで異なっていて、2012年のESCでは推奨されていますが、AHAは反対しています。過去にPRAMI研究とCULPRIT研究という2つのRCTが行われていて、どちらも心筋梗塞・心血管死亡を有意に減らし安全だったという結果でした。そんな中での今回3つ目の結果。editorialはイケイケでしたが、今回の結果はちょっと一石を投じる可能性があるかなと思いました。

✓ 非梗塞血管に対するFFRガイド下でのPCIは、心血管関連の複合アウトカムは減らすが、死亡・非致死的心筋梗塞は減らさない