栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:小児院内CPAでのアドレナリン使用までの時間

小児院内CPAでのアドレナリン使用までの時間
Time to epinephrine and survival after pediatric in-hospital cardiac arrest*1

JAMA.2015;314(8):802-810.
【背景】 
 ショック不要の院内発症心肺停止患者ではアドレナリン投与が遅れると生存率が下がることは成人では明らかになっている。この関連が小児の院内発症心肺停止でも同様かどうかは良く分かっていない。
【目的】
 初回のエピネフリン投与までの時間が小児の院内発症心肺停止患者の予後と関連するかどうか。
【デザイン・セッティング・患者】
 Get with the Guidelines-Resuscitationレジストリーの解析を行った。米国の18歳以下の小児で院内発症心肺停止患者が対象。初期波形でショック不要で、1回以上エピネフリンが使用された症例が組み入れられた。全部で1558人の患者(平均年齢9ヶ月、日齢13日〜5歳)が最終的に解析対象コホートとなった。
【暴露】
 エピネフリン投与までの時間で、脈拍触知出来なくなってからエピネフリンが投与されるまでの時間(分)
【メインアウトカム】
 プライマリアウトカムは、退院時の生存率。セカンダリアウトカムは、心拍再開(ROSC)・24時間時点での生存・神経予後。神経予後良好の定義は、Pediatric Cerebral Performance Category scaleで1-2点と定義された。
【結果】
 1558人の小児の中で、487人(31.3%)が退院時生存していた。平均の初回エピネフリンまでの時間は1分(0-20分)だった。多変量解析の結果、エピネフリン投与までの時間が長くなる程、退院時の生存率は低下(RR 0.95:0.93-0.98)した。エピネフリン投与までの時間が長いと、心拍再開(ROSC)も低下(RR 0.97:0.96-0.99)し、24時間以内の生存率も低下(RR 0.97:0.95-0.99)し、神経予後良好な生存も低下(RR 0.95:0.91-0.99)した。エピネフリン投与までの時間が5分以上(233/1558人)になると、5分以内(1325/1558人)と比較して、退院時の生存率が低下し(5分以上 49/233人(21.0%)、5分未満 438/1325人(33.1%))、多変量解析でRR 0.75(0.60-0.93)だった。

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(本文より引用)

【結論】
 小児の院内心肺停止では初期波形がショック不要だった場合に、エピネフリン初回投与の遅れは、退院時の生存率低下・心拍再開・24時間生存率・神経予後良好な生存退院と関連していた。

【批判的吟味】
・まずはいつも通り論文のPECOから見ていきます。
P:米国院内小児心肺停止患者1558人(波形がショック不要、1回以上エピネフリン使用)
  除外項目は外傷・昇圧剤使用など多数
E/C:CPA認知からエピネフリン投与までの時間(分)
O:退院時の生存率
T:後ろ向き観察研究
・平均月齢9ヶ月、心肺停止目撃90%、Asystole 52%、PEA 48%、生存退院 31%
・観察研究なので交絡因子は否定できないが、小児の心肺停止という非常に難しいテーマの場合にこれ以上の研究は望めないかもしれません。
エピネフリンを投与していない患者は除外されているので、エピネフリンの投与そのものの効果を検証した訳では無く、エピネフリン投与までの時間で予後との関連を検討している研究。

【個人的な意見】
 この当たり前のことをきちんと検証するというデータは重要ですよね。小児は循環系のトラブルよりは窒息など呼吸器系の原因が多いと言われる中で、それでも心肺停止になればエピネフリンを早く打つ事が重要という当たり前の事が証明された貴重な論文でした。

✓ 小児院内心肺停止患者では、できるだけ早くエピネフリンを打つ方が退院時生存率・神経予後良好な生存などを改善する