栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:月経関連片頭痛の予防/Ⅰ型胃カルチノイド腫瘍/脳外科術後の細菌性髄膜炎の治療

MKSAPです。相変わらず良問。
勉強になりますね。

月経関連片頭痛の予防  Manage a menstrually related migraine with prophylaxis

❶症例 
  32歳女性が、増悪傾向のある頭痛で外来を受診。彼女は初潮を契機に発症した19年来の前兆のある片頭痛が既往疾患としてある。患者は、1-2日程度持続する、嘔気・嘔吐・日常生活への支障を来す左側頭部に拍動性の頭痛が繰り返し発作的に起こっていると訴えている。発作は、50分ほど先行する部分的な視野のカラフルな光と、60-90分程度持続する同側顔面・上肢しびれなどの前駆症状を伴う。発作は徐々に頻度が増し、週に2-3回の頻度になっている。また、月経中には4日持続する重度の頭痛を来す。発作は経口スマトリプタンで改善する。彼女の母親は50歳で脳梗塞の既往あり、内服薬はスマトリプタンのみ。
 身体所見ではバイタルも含めて異常所見なし。頭部MRIも正常。

 この患者の片頭痛予防のために次に行うべきなのはどれか?
A. ブタルビタール・アセトアミノフェン・カフェイン
B. 腰椎穿刺
C. ナプロキセン
D. 経口避妊薬
E. トピラマート

 片頭痛予防
 本患者では片頭痛予防としてトピラマート投与を行うべきである。患者は前兆のある片頭痛の既往があり、頻度が増悪傾向である。また、片側で拍動性、日常生活に支障のある頭痛発作が繰り返し起こり、視覚および感覚の前兆と嘔気嘔吐を伴う。急性期発作は治療に反応するが、1ヶ月以内の頭痛発作の出現日は増えている。本患者で見られる頭痛頻度・1週間に2回以上の頭痛薬使用・前駆症状が1時間以上持続などの片頭痛の臨床症状は、発作頻度を減らすための予防薬使用を考慮すべき項目である。エビデンスに基づいたガイドラインでは、トピラマート・プロプラノロール・チモロール・アミトリプチリン・バルプロ酸ナトリウム片頭痛発作予防の第一選択として考慮すべきである。また、最近の臨床研究では、トピラマートとボツリヌス毒素注射が片頭痛予防に有効である事を示している。

❸他の選択肢
ブタルビトール・アセトアミノフェン・カフェイン:片頭痛発作の治療のための適応はない。スマトリプタンは本患者の発作に有効であり、急性期発作に対する薬剤を検討する必要は無い

腰椎穿刺:乳頭浮腫などがなく典型的な片頭痛症状であり、腰椎穿刺は頭痛評価としては不要である。

NSAIDs:ナプロキセンの様なNSAIDsの連日投与は片頭痛予防に対するエビデンスは無い。一方で頻回の鎮痛薬使用は、薬物乱用頭痛や反跳性頭痛症候群を来す

経口避妊薬経口避妊薬は、月経関連の片頭痛に用いられることがあり、特に月経を抑制する目的で継続的に使用される。ただし、非典型的もしくは持続時間の長い(60分以上)前兆を伴う片頭痛や若年の脳卒中家族歴などの脳卒中リスク因子がある場合には使用を避けるべきである。

Key Point
✓ トピラマートは片頭痛予防に効果のある薬剤である。

Brandes JL, Saper JR, Diamond M, et al; MIGR-002 Study Group. Topiramate for migraine prevention: a randomized controlled trial. JAMA. 2004;291(8):965-973. PMID: 14982912

 

 

Ⅰ型胃カルチノイド腫瘍 Manage a type Ⅰ gastric carcinoid tumor

❶症例
  65歳女性が食後に時折感じる心窩部痛を主訴に外来を受診。嚥下障害・えん下痛・逆流症状・発熱・体重減少はなく、家族歴も含めて特記すべき既往歴はなかった。
 身体所見では、バイタルは正常、BMI 23。腹部診察では、心窩部に軽度の圧痛を認めるが明らかな腫瘤は触知しない。腸管蠕動音は正常。皮疹なし。内視鏡検査では、襞の消失と起因にの粘膜下血管透見像を認め、胃体部・穹隆部のランダム生検では、慢性炎症所見と、腺萎縮、腸上皮化生の所見だった。4mmと8mmの結節を認め、それぞれ切除したところ、病理ではカルチノイド腫瘍の所見だった。血清ガストリン値は 550 pg/mL (550 ng/L) で、腹部〜骨盤CTでは明らかな異常所見を認めなかった。

この患者で最も適切な管理はどれか?
A. 幽門側胃切除
B. オトクレオチド
C. 6ヶ月後に内視鏡再検査
D. 胃全摘

 ❷Ⅰ型胃カルチノイド腫瘍
  本患者で最も適切な管理は6ヶ月後の内視鏡再検査である。胃のカルチノイド腫瘍は非特異的な消化器症状や徴候のスクリーニングのために施行された内視鏡検査でたまたま見つかることが多い。3つのサブタイプがあると言われ、Ⅰ型は慢性萎縮性胃炎に併発して起こり、最も頻度も多く全体の65%を占めると言われている。腫瘍は単発のこともあれば多発もあり得る。通常、病変は通常2cm以下で自然歴では無痛で予後は良好である。転移は稀で5年生存率は95%を超える。本患者では内視鏡切除が施行されており、その後のサーベイランスは少なくとも3年間は6-12ヶ月毎に行うという戦略が好まれる。

 ❸診断のための検査は?
幽門側胃切除:幽門側胃切除はG細胞を減らし、Ⅰ型カルチノイド腫瘍を増大させるとされる血清ガストリン値を低下させるために行う事がある。しかし、この手技は一般的には5個以上の多発病変や巨大病変で推奨される。

オトクレオチド:オトクレオチドは、ほてりや下痢などカルチノイド症候群を来している患者に用いられる。とりわけ、Ⅱ型腫瘍でZollinger Ellison症候群やMEN 1型などの場合で見られる。オトクレオチドは、ソマトスタチン受容体と結合することで、カルチノーマやインスリノーマ、ガストリノーマなどの種々の腫瘍からの種々のホルモン産生を抑制する。

胃全摘:胃全摘は、Ⅲ型のカルチノイド腫瘍や弧発性の症例で検討すべき。Ⅲ型病変(胃カルチノイドのおよそ20%程度)は、血清ガストリン値は正常で、予後は不良であり、外科的切除が正当化される。

Key Point
✓ 2cm以下の小さなⅠ型胃カルチノイド腫瘍は、少なくとも切除後3年間は、6-12ヶ月毎に内視鏡サーベイランスを行うべきである。

Hwang JH, Rulyak SD, Kimmey MB; American Gastroenterological Association Institute. American Gastroenterological Association Institute technical review on the management of gastric subepithelial masses. Gastroenterology. 2006;130(7):2217-2228. PMID: 16762644

 

脳外科術後の細菌性髄膜炎の治療 Treat a patient with bacterial meningitis following neurosugery

❶症例

 36歳女性が右前頭葉の腫瘤性病変切除で開頭術を施行後、7日経過して発熱と頭痛があるとのことでコンサルトされた。病理学的な検査で腫瘍は悪性星細胞腫と判明した。今回の症状が出るまでは患者は元気だった。

 身体所見では、体温 38.9℃、他のバイタルは正常で項部硬直あり。残りの身体所見は異常を認めなかった。 

 検査所見では白血球 9600/µL (9.6 × 109/L) で分画は正常。MRIでは術後変化による脳実質の軽度浮腫はあったものの他は正常。腰椎穿刺が施行された。

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(本文より引用)

 バンコマイシンに加えて、経験的抗菌薬で使用すべきはどれか?
A. セフトリアキソン
B. ゲンタマイシン
C. メロペネム
D. メトロニダゾール
E. ST合剤

 ❷脳外科術後の細菌性髄膜炎
 本患者では、脳外科術後の細菌性髄膜炎の状態でありバンコマイシンに加えてメロペネムを投与することが最も適切な抗菌薬選択である。この状況で最も一般的な髄膜炎の起因菌は、グラム陽性菌黄色ブドウ球菌・CNS)やグラム陰性桿菌である。黄色ブドウ球菌特にMRSAによる髄膜炎の可能性を考慮して、バンコマイシンは経験的治療に含めるべき。多くのグラム陰性桿菌も考慮すべきであり、特に緑膿菌アシネトバクターは重要である。今回の選択肢の中では、医原性髄膜炎患者でのグラム陰性桿菌の治療にはメロペネムが良い選択である。

 ❸その他の抗菌薬
 セフトリアキソン緑膿菌活性がない
 ST合剤
緑膿菌活性がない
 ゲンタマイシン多くのグラム陰性桿菌に活性があるが、経静脈的投与では脳脊髄関門を通過しない。
 メトロニダゾール嫌気性菌の活性を有している。

Key Point
✓ 医原性髄膜炎の経験的治療にはバンコマイシン+脳脊髄液への移行性が良好でかつ緑膿菌アシネトバクターなどのグラム陰性桿菌に活性のある薬剤を投与すべきである。

van de Beek D, Drake JM, Tunkel AR. Nosocomial bacterial meningitis. N Engl J Med. 2010;362(2):146-154. PMID: 20071704

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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