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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:Henoch-Scgonlein紫斑病の診断/横紋筋融解症による色素性腎症の診断/Vibrio-vulnificus関連の壊死性筋膜炎

MKSAPまとめが遅くなりました。
一週間のタスクがようやく・・・紫斑病ってそうだったのか・・・

Henoch-Scgonlein紫斑病の診断  Diagnose Henoch-Schonlein purpura

❶症例 
  62歳男性が2週間前からの下肢の紫斑を主訴に来院。特記すべき既往はなく内服薬もなし。
 身体所見では、体温 37.2℃、BP 160/100mmHg、Pulse 88bpm、RR 12/min。粘膜は正常で、下肢遠位や足底部に有痛性の非対称性紫斑を認めた。足背部にはごく軽度の浮腫あり。関節腫張もなし。

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(MKSAPより引用)

 血清免疫電気泳動では異常所見なく、皮膚生検では白血球破砕性血管炎とIgA沈着を認めた。

 この患者の最も適切な診断は何か?
A. Churg-Strauss症候群
B. Henoch-Shonlein紫斑病
C. 顕微鏡的血管炎
D. 結節影多発動脈炎
E. 亜急性皮膚ループスエリテマトーデス

 ❷Henoch-Shonlein紫斑病
 本患者の症状から最も疑われるのは、Henoch-Schonlein紫斑病である。本疾患は、一般的に小児で多く見られるが、成人でも発症しより重症度が高い特徴的な所見は、下肢遠位を中心とした紫斑、関節炎、腹痛、血尿である。皮膚生検では、白血球破砕性血管炎とIgA沈着の所見が見られる。腎生検は持続的な血尿や蛋白尿、腎障害を来している患者で行われ、糸球体腎炎とIgA腎症で見られるようなIgA沈着が見られるのが特徴的である。
 腎病変は、一部の患者ではび漫性増殖性糸球体腎炎への進展を来すと重症化することもある。50歳以上の男性では、Henoch-Schonlein紫斑病は固形腫瘍や骨髄異形成症候群(MDS)との関連が指摘されている。本患者は62歳男性であり、追加の悪性腫瘍の検索を行うべきであり、とりわけ消化管腫瘍の検査くが必要である。

❸他の選択肢
Churg-Strauss症候群:一般的には喘息既往患者で発症する血管炎である。検査結果では、末梢血中の好酸球増多とp-ANCA陽性が認められる。

顕微鏡的血管炎:典型的には、小血管炎を来たし糸球体腎炎や皮膚の紫斑を来す事はあるが、皮膚の免疫グロブリン沈着はこの疾患の特徴ではなく、ANCAが陽性となる。

結節性多発動脈炎:小〜中血管の血管炎が特徴的で、腎動脈病変による高血圧と関連し、免疫沈着を伴う紫斑は本疾患の皮膚病変の特徴ではない。

亜急性皮膚ループスエリテマトーデス:斑状丘疹が特徴的で、一般的には胴体や四肢近医に生じる。抗核抗体は陰性かもしれないが、SS-A抗体はしばしば陽性となる。糸球体腎炎は本疾患では認められない。

Key Point
✓ Henoch-Schonlein紫斑病は成人でも起こり、固形腫瘍やMDSと関連することがある。

Mitsui H, Shibagaki N, Kawamura T, Matsue H, Shimada S. A clinical study of Henoch-Schönlein Purpura associated with malignancy. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2009;23(4):394-401. PMID: 19207675

 

 

横紋筋融解症による色素性腎症の診断 Diagnose pigment nephropathy from rhabdomyolysis

❶症例
  62歳男性がアパートの床に倒れていることを近所の住民に発見され入院してきた。患者は混乱しており、病歴も最低限しか聴取できず、数日前にけんかに巻き込まれたと話していた。高血圧と脂質異常があったが、内服薬は覚えていなかった。近所の人は患者にアルコール依存の既往がアルト話していた。
  身体所見では、患者は痩せており、髭が生え悪臭を放っていた。やや傾眠だが容易に覚醒し、四肢は指示通りに動かすことは可能だが、稼動時に疼痛を訴えた。多くのアザや裂傷が体幹部を中心に見られた。名前は答えることは可能。体温 37.3℃、BP 165/85mmHg、Pulse 102bpm、RR 18/minだった。横断はなく、粘膜は乾燥していた。心音は正常で肺音も異常なし。腹部は
平坦、軟だが、び漫性に軽度の腹痛があったが腹部膨満感はなかった。四肢末梢の浮腫はなく、脳神経で異常所見を認めなかった。

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(MKSAPより引用)

この患者で最も適切な診断はどれか?
A. 急性間質性腎炎
B. 肝腎症候群
C. 腹部コンパートメント症候群
D. 色素性腎症

 ❷色素性腎症
  本患者で最も可能性の高い診断は、横紋筋融解症による色素性腎症であり、これは筋障害によってミオグロビンや筋肉細胞内物質が循環血液中に流れることで腎障害を引き起こすことで知られている。腎毒性は、腎虚血および尿細管閉塞が原因と言える。横紋筋融解症はほとんどは筋毒性のある薬剤や感染症、過度の運動、長期間の臥床状態によって引き起こされる。診断は、血清CK>5000U/L以上の場合にすべきで、他の診断のキーは尿のディップスティック法で潜血陽性だが血尿がないという状態である。ディップスティックのヘムはミオグロビンを検出可能である。

 本患者では、喧嘩によるあざや裂傷があり、その後アルコール摂取したことで長期間臥床状態出見つかっている。これらの所見は全て横紋筋融解症や筋障害のリスクである。尿中Na高値や顆粒円柱は内因性の腎障害を示唆している。

 ❸他の鑑別診断
急性間質性腎炎:急性間質性腎炎は被疑薬暴露があるべきだが、本患者では疑わしい薬剤内服はない。

肝腎症候群:肝腎症候群は、肝疾患の明らかな既往がある場合に考慮すべきであり、尿中Na低値が特徴的であり、本患者には当てはまらない。

腹部コンパートメント症候群:胃腹部コンパートメント症候群は、通常外科手術や大量輸液蘇生を行った場合に考慮する必要がある。通常は腹部膨満が認められ、集中治療領域で問題になる病態である。

Key Point
✓ 横紋筋融解症は、尿中ナトリウム排泄亢進・FENa高値・色素性円柱・筋障害を疑う病歴などが関連する内因性の腎疾患である。

Bosch X, Poch E, Grau JM. Rhabdomyolysis and acute kidney injury [erratum in N Engl J Med. 2011;364(20):1982]. N Engl J Med. 2009;361(1):62-72. PMID: 19571284

 

Vibrio vulnificus関連の壊死性筋膜炎 Diagnose Vibrio vulnificus-associated necrotizing fasciitis

❶症例

 55歳男性が、昨日の午後から発熱と悪寒があり、今朝起床時に両上腕痛と上肢有意の皮疹に気付いて救急外来を受診された。患者は3日前の晩に湾岸で生牡蠣を摂取していた。最近ヘモクロマトーシスと診断されていた。

 身体所見では、患者はグッタリしており、体温 39.1℃、BP 85/50mmHg、Pulse 130bpm、RR 28/minだった。上肢の皮膚所見は以下。

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(MKSAPより引用)

 心肺診察では異常所見なく、腹部診察ではshifting dullnessを認めるが、筋性防御や反跳痛は無し。随膜刺激症状も認めなかった。

f:id:tyabu7973:20150920225427j:plain(MKSAPより引用)
末梢血スメアは正常だった。

 本患者の現在の病状を引き起こしている最も疑わしい病原体はどれか?
A. Babesia microti
B. Capnocytophaga canimorsus
C. Rickettsia rickettsii
D. Vibrio vulnificus

 Vibrio vulnificusによる壊死性筋膜炎
 本患者で最も疑われるのは、Vibril vulnificusによる壊死性筋膜炎である。本患者ではヘモクロマトーシスの既往と腹水の存在から門脈圧亢進を伴っていることが分かる。肝疾患のある患者で、汚染された水分との暴露と敗血症や血疱を伴うような皮膚感染症を診た場合には、グラム陰性桿菌であるVibrio vulnificus感染を考慮すべきである。
 鉄利用が増加することは、V.vulnificusの成長や増殖に関連すると言われており、これはヘモクロマトーシスが感染を起こしやすい理由である。具体的にはオプソニン化の低下と血性抗細菌活性の低下がみられている。生や十分加熱していない魚・貝などを摂取後に敗血症が起こることが知られている。また、V.vulnificusに汚染された水の場合には傷のある皮膚からも感染を起こすことがある。この微生物は、温かい汽水や海水中に発症し、メキシコ湾などが有名である。最も感染が起こる時期は夏の時期であり、海水温は特に高い時期である。

 ❸その他の微生物
 Babesia microtiバベシア症の原因となり得る微生物で、アメリカ沿岸北東部や中西部で発生するダニ媒介感染症としても知られている。ダニに咬まれて約1週間程度経過した後に、インフルエンザ様症状を来す事がある。診断は主に、末梢血スメアで赤血球内寄生の有無を確認することであり、皮疹は典型的な症状ではない。また、脾機能が低下している様な患者さんでは、重篤な合併症を起こしやすいので注意が必要。
 Capnocytophaga canimorsus
Capnocytophaga canimorsusは、グラム陰性桿菌で、脾機能低下していてイヌやネコに咬まれた患者における蜂窩織炎敗血症の原因微生物になる。
 RIckettsia rickettsii本微生物は、ダニ媒介感染症の病原菌の一つで、ロッキーマウンテン紅斑熱(RMSF)の起因微生物として知られている。肝機能は異常が出ても良いが、これはV.vulnificusとの鑑別には使えない。皮疹は典型的には手掌・踵・手首や足首などが特徴的と言われている。皮疹は初期には斑状丘疹だが、徐々に点状出血へと進展。無菌性髄膜炎は起こる可能性はある。RMSFは血疱を来す事は稀である。

Key Point
✓ 肝疾患を持つ患者では、生貝摂取や傷の海水暴露などによって、Vibrio vulnificus感染による壊死性筋膜炎を起こすリスクが高まる。

Bross MH, Soch K, Morales R, Mitchell RB. Vibrio vulnificus infection: diagnosis and treatment. Am Fam Physician. 2007;76(4):539-544. PMID: 17853628

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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