栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 週末入院によるリスク/プライマリケアレベルでの肺塞栓症除外スコア/ジゴキシンの効果と安全性/乳幼児細気管支炎への酸素飽和度目標/市中肺炎

BMJ

週末入院によるリスク 
Increased mortality associated with weekend hospital admission: a case for expanded seven day services?*1

 まあ、このネタはある程度出尽くした感も否めませんが。2009-2010年に一度英国で施行した観察研究の結果から、
①土日入院は平日入院よりも死亡率が高い
②入院患者の土日滞在は影響なし
と言う結果が分かっており、アメリカでも同様の結果が得られています。今回は2013-2014年の英国のデータアップデートです。

 まあ、そもそも入院全体のうち、月曜〜金曜は270万人/日で、土曜が120万人/日、日曜が100万人/日なんだそうです。土日入院は全体の17%で、水曜を1とすると日曜日の30日死亡はHR 1.15(1.14-1.17)、土曜日の30日死亡はHR 1.10(1.08-1.11)と有意に土日の死亡率が高い結果だった。一方、死亡日自体は土日と平日は差が無いため、土日に病院にいることではなく、土日に入院することが問題ということもやはり明らかになっています。これは両方とも2009-2010年の結果と同様でした。初期診断・治療があかんってことなんだろうなあ・・・ちなみに大変興味深かったのは、実は月曜・金曜も水曜と比較するとわずかに死亡率が上がるという事実。これはわかるなあ。週初めとか金曜休み前のごり押し入院はリスク高いわ。というわけで入院するなら火曜〜木曜がお勧めです(笑)。筆者らは7日間営業なんてするから行けないんだよみたいな笑い話が。

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(本文より引用)

 真面目な話をすると2009年の時と変わりがないので、そろそろ本腰を入れて何が原因かを調べましょうねと。完全シフト性の重要も必要かもしれませんね〜。

✓ 土日入院は30日死亡と有意に関連し、他の曜日と比べるとリスクである


プライマリケアレベルでの肺塞栓除外スコア 
Diagnostic prediction models for suspected pulmonary embolism: systematic review and independent external validation in primary care*2

 肺塞栓症は見逃しが多い反面、それを恐れた不必要な紹介が多いのも事実です。WellsやGenovaなどの予測スコアの多くは病院に紹介された患者さんで開発されたスコアなので、プライマリケアレベルで本当に使用出来るか?というところが最近のトピックになっています。近年は肺塞栓症のoverdiagnosisの問題も指摘され、CTを過剰に取りすぎているため、臨床的に意味の無い肺塞栓症をたくさん見つけている可能性も指摘されています。今回は、2012年にプライマリケアレベルでWells score+d-dimerを検証したコホートを用いて、その他各スコアを再検証しています。

 まずはシステマティックレビューで、プライマリケアレベルで測定可能な肺塞栓症予測スコアを検索。全部で8つのスコアがみつかり、最終的には5つのスコアを検証しています。
 論文のPECOは、

P:プライマリケア外来を受診した肺塞栓症疑い患者連続598人
E/C:5つの予測スコア
O:3ヶ月以内の肺塞栓症もしくは深部静脈血栓症の診断
T:前向き観察研究
結果:
 Original WellsとModified Wells、Simplified Wells、Original revised Genova、Simplified revised Genovaの5つが検証された。どのスコアもC-staticsは0.75-0.80とかなり予測精度は高かった。
 その中で最も予測が高かったのは、Original WellsとModified Wellsだった。更にd-dimerも組み合わせて検証しているが、d-dimerとの組み合わせでは、Original WellsでのPTE見逃し率は1.5%(0.4-3.7%)だった。同様にSimplified Wellsでは、d-dimerと組み合わせてPTE見逃し率は1.2%(0.2-3.3%)だった。

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(本文より引用)

 結論としては、Simplified Wells+d-dimerが良いんではないか?という話でした。ちなみにSimplified Wells scoreは、

・DVTを疑う症状や身体所見がある
肺塞栓症以外に鑑別診断が考えにくい
・心拍>100bpm
・過去4週間以内に外科手術や安静臥床状態があった
・過去にDVT/PE既往あり
・血痰
・6ヶ月以内に悪性腫瘍の治療歴があるもしくは緩和ケア行っている

の7項目を各1点として用いる模様です。1点以下をカットオフに。これらでは問診と身体所見のみで行けますね。自分も在宅などでは使ってみようかなと思います。

✓ プライマリケアレベルで肺塞栓症を疑った場合に、最も見逃しが少ないのはSimplified Wells score+d-dimerである


ジゴキシンの効果と安全性
Safety and efficacy of digoxin: systematic review and meta-analysis of observational and controlled trial data*3

 心不全・心房細動へのジゴキシンの効果はcontroversyです。このテーマはこのジャーナルクラブでもしばしば取り上げられていますが、実は過去の検証がわりかしヘテロな集団が多いのと、行われた研究のデザインも異なるため、結果が異なってしまうわけです。今回は、ジゴキシン関連の研究を全て集めてきて、その効果と安全性についてメタ解析を行っています。
 論文のPECOは、

P:どんな患者・研究でも。Medline/Embase/Cochrane/PRISMAガイドラインに登録されている研究
E:ジゴキシン投与群
C:ジゴキシン非投与もしくはプラセボ投与群
O:全死亡
T:ステマティックレビュー/メタ解析/Random effect model
結果:
 42研究が評価対象となった。26が観察研究、9がランダム化比較試験の事後解析、7がランダム化比較試験だったが、その全てが心不全対象のRCTで心房細動のみはいなかった。そもそもベースラインでジゴキシン群の方が、年齢が高齢で、糖尿病・利尿剤使用者が多かった。
 研究デザイン毎で比較すると、観察研究では死亡率がRR 1.76(1.57-1.97)と高かったが、RCTの患者に限るとHR 0.99(0.93-1.05)有意差は認めなかった。

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(本文より引用)

 研究バイアス毎で比較すると、やはりバイアスが大きい程ジゴキシン群が不利になることも判明した。

 結局毎回の結論ですが、質の高い大規模RCTを組みましょうという話が一つと、あとは対象疾患を心不全にするのか心房細動にするのかについては十分な検証が必要になります。非常に分かりやすい図表が載っていたので提示しておきます。

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(本文より引用)


✓ ジゴキシンの効果や副作用は研究デザインやバイアスの問題の影響もあるかもしれない
 

 


■Lancet■

乳児細気管支炎への酸素飽和度目標 
Oxygen saturation targets in infants with bronchiolitis(BIDS): a double-blind, randomised,equivalence trial*4

 あまり縁が無いかもしれない小児の細気管支炎の話題です。RSウイルスなどが有名ですね。WHOやAPPはSpO2≧90%を、UK SIGNはSpO2≧94%を推奨していますが、どちらも明確な根拠はありません。今回はSpO2をどちらに設定維持したら良いのかについて検証したRCTです。
 論文のPICOは、

P:生後6週間〜12ヶ月の細気管支炎入院患者
I:SpO2≧90%(4%多めに出るモニターで二重盲検)
C:SpO2≧94%
O:咳の持続時間
T:等価試験/RCT/8施設
結果:
 平均23週、平均SpO2 95%、家族内喫煙 43%、来院時SpO2<94%は40%
 プライマリアウトカムである、咳の持続時間は、SpO2≧94%群で15日(10-42.5日)、SpO2≧90%で15日(10-41日)で有意差なし
 退院可能可能になるまでの時間はSpO2≧94%群で44時間(18.6-87.5時間)、SpO2≧90%で30.2時間(15.6-59.7時間)
 実際に退院した時間はSpO2≧94%群で50.9時間(23.1-93.4時間)、SpO2≧90%で40.9時間(21.8-67.3時間)
 特に有害事象なし。

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(本文より引用)

 なるほどー。臨床効果は大きな変わりはなく、退院までの時間は明らかに減少するということで。この退院時間の減少って医療費的には大事なんだけど、実際の患者さんにとって数時間の差がどの程度意味があるかなあ・・・ってとこですよね。今回の研究の背景には、SpO2≧94%で切ってしまうと余計な紹介や入院が増えちゃうし・・・ってことがあったみたいですね。

✓ 小児の細気管支炎の酸素飽和度目標値は、SpO2≧90%と≧94%で臨床効果は差が無く入院期間は短縮される


市中肺炎 
Community-acquired pneumonia*5

 市中肺炎のレビュー。何だかしょっちゅう取り上げられているテーマなのでややお腹いっぱいという感じだけど、まあひとまず箇条書きで書いていきます。
・市中肺炎は「急性の下気道症状」で他に誘因となる疾患が無い状態で、胸部X線で新規に浸潤影を認めれば診断確定となる
・高齢者など特定のサブグループはatypical presentationで来るので注意
・病原菌によっても症状は様々なので、マイコプラズマやレジオネラなどには精通する必要あり。
・通常の市中肺炎と非定型肺炎を病歴・胸部X線で区別するのは難しい
軽症肺炎の鑑別診断は上気道感染
・重症肺炎では、心不全や他の呼吸器疾患など非感染性疾患との鑑別が重要
Dynamic evaluationの重要性。dynamic evaluationとは、通常の診断過程に時間軸を意識すること。経過を持って診断することも重要。
・年齢における頻度はU-shapeで5歳未満と65歳以上が多い
・死亡率は非入院では1%未満、入院患者で4-18%、ICU入室では50%
・入院時にいかにICU入室すべき患者を同定できるかが重要になる
・病原菌は世界的には年齢関係なく、Streptococcus pneumoniaeが多い。ヨーロッパでは35%、世界的にも27.3%という疫学データあり。
・他の菌では、Haemophilus influenzaeが12%程度、非定型肺炎(マイコ・クラミドフィラ・レジオネラ)で22%程度。
・また、最近ではウイルスが多いと言う報告も目立ってきている。
・最近では何種類か肺炎になりやすい遺伝子が明らかになっており、特定の病原菌との関連も指摘されている
CRPやプロカルシトニン測定は無駄な抗菌薬使用を減らしたというメタ解析あり
・肺炎といっても幅広いのでどこまで検査を行うべきかはcontroversyな領域。特に軽症〜中等症の肺炎では、悩ましいところ。例えば尿中抗原などは行っても行わないでempiricalに治療を行っても患者アウトカムに差は認めなかった。

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(本文より引用)

・肺炎の診断は原則胸部X線のみで十分。CTは特別な状況のみに行う。
・CAPのマネージメントで重要な事は、①入院させるか?、②ICU入室すべきか?
・上記質問への答えとして、PSIやCURB-65を用いてリスクを層別化する。
・ただし、PSI・CURB65の欠点は社会的要因が含まれていないこと
・治療は重症例では2剤併用、軽症〜中等症で2剤併用すべきかはcontroversialな領域

✓ 市中肺炎の診断・検査・治療について整理しておこう