栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:AIM & NEJM 肺炎に対するステロイド/大腸癌予測スコアの有用性/モータースポーツと一酸化炭素中毒/再潅流障害へのシクロスポリン/てんかん治療へのカンナビノイド

■AIM■

肺炎に対するステロイド 
Corticosteroid therapy for patients hospitalized with community-acquired pneumonia*1

 Annals of internal medicineに肺炎に対するステロイド治療のシステマティックレビューが掲載されていました。最近このネタは非常に多くなってきたので、一度まとめておこうという形でしょうか。
 論文のPICOは

P:市中肺炎の入院患者のRCT
I:ステロイド使用群
C:プラセボもしくはステロイド不使用群
O:死亡・合併症・入院期間
T:ステマティックレビュー
結果:
 3281研究とリファレンスから更に3研究が追加され、最終的に13のRCT、2005人の市中肺炎患者で検証した。
 過去のシステマティックレビューでは取り上げられていない研究が9研究あった。
 平均年齢は60歳代、60%が男性
 プライマリアウトカムの全死亡は、12研究1974人で検証され、ステロイド使用でRR 0.67(0.45-1.01)だった。
 人工呼吸管理は、5研究1060人で検証され、ステロイド使用でRR 0.45(0.26-0.79)
 ARDSは、4研究945人で検証され、ステロイド使用でRR 0.24(0.10-0.56)
 入院期間は、6研究1499人で検証され、ステロイド使用で-1日(-1.79 to -0.21日)だった。
 治療が必要な高血糖は、6研究1534人で検証され、ステロイド使用でRR 1.49(1.01-2.19)だったが消化管出血は増えなかった

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(本文より引用)

 おお・・・!とりあえずそれほど悪さはせず、死亡は有意差はつかなかったものの、かなり良い傾向ですね。挿管・ARDSは明らかに減らす結果。まあ、限界としては小規模RCTの結果が中心なこと、肺炎の重症度も様々なので重症度を分けて考える必要があるかもしれないことでしょうか。重症肺炎のみで検討すると死亡率でも有意差が出ています。GRADEのEvidence Profileが載っていましたので是非参考までにご覧下され。

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(本文より引用)

なかなかに興味深い結果です。ルーチンで短期ステロイドを使用することが推奨される時代は近いかもしれませんね。

✓ 市中肺炎に対するステロイド使用は全死亡を減らす傾向があり、挿管やARDSは有意に減少させる


大腸癌予測スコアの有用性 
Derivation and validation of a scoring system to stratify risk for advanced colorectal neoplasia in asymptomatic adults*2

 大腸癌予測スコアの考え方はあまり知らなかったので今回非常に興味深く読ませて頂きました。結構予測スコアたくさん出ていますね〜。この手のClinical Prediction rulesの論文は増えていますから読み方も押さえておく必要がありますね。
 まず予測スコアを作るためには観察研究を元にどの因子がリスクになるかを同定します。今回の論文では大腸癌リスクと関連する因子の抽出から始まります。この過程をderivationと呼びます。この過程で複数の因子を抽出して、スコアを作成し、そのスコアを元に別のコホートで前向きに検討します。この過程をValidationと言います。validationされたスコアでderivationと同様の結果がでれば比較的信頼性の高いスコアということになりますね。その後広く使用されるようになればスコアとしての外的妥当性が検証されたということになるわけです。
 論文のPECOは、

P:50-80歳で大腸癌内視鏡スクリーニングを受ける患者
E/C:スコアでvery low・low・intermediate・highの4群に分類
O:大腸癌発症
T:観察研究
結果:
 derivation cohortは、3025人、平均年齢 57歳、女性51%、白人 95%、第一親等に大腸癌 10%、非喫煙者 60%、BMI 29
 derivationコホート有意だった因子は、
①喫煙 1-30PE OR 2.06(1.52-2.80)、≧30PE OR 3.39(2.47-4.66)
②腹囲 95-119.9cm OR 1.44(1.11-1.88)、≧119.9cm OR 2.01(1.23-3.29)
③年齢(1歳上昇毎に) OR 1.06(1.04-1.08)
④男性 OR 1.69(1.30-2.20)
⑤第一親等の家族歴(fiers degree of relative:親・子・兄弟含む) OR 1.39(0.94-2.04)
と大腸癌に関連する傾向が見られた。
 これらの5項目を合計12点で層別化し、very low・low・intermediate・highの4群に分類した。
 validation cohortは、1475人、平均年齢 57歳、女性52%、白人 94%、第一親等に大腸癌 9%、非喫煙者 61%、BMI 29
 上記スコアでvalidation cohortをvery low・low・intermediate・highの4群に層別化。
 ①very low 121人(8.2%)Risk 1.65(0.20-5.84)、LR 0.18(0.05-0.73)
 ②low 665人(45.3%) Risk 3.31(2.08-4.97)、LR 0.37(0.25-0.55)
 ③intermediate 466人(31.7%) Risk 10.9(8.26-14.1)、LR 1.34(1.07-1.68)
 ④high 215人(14.7%) Risk 22.3(16.9-28.5)、LR 3.14(2.42-4.08)

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(本文より引用)

 ということで、見事に層別化できましたよ〜と。6点より高いhigh riskな方々は4人に1人が大腸癌ということになります。逆に0点の人は100人に2人程度の大腸癌リスク。コレを元に内視鏡検査を行うかを検討できるかなあとは思います。実臨床では、便潜血というプロセスが入ってくるのでこれをどう取り込めるかと言うこともありますね。個人的には、便潜血陽性だけどCFやらなくて良い人の層別化という部分に興味があります。

✓ 大腸癌予測スコアとして有用なのは、年齢・喫煙歴・腹囲・男性・家族歴からなるスコアだった

 

 


■NEJM■

モータースポーツ一酸化炭素中毒 
Carbon monoxide poisoning due to "Mud bogging"*3

 Mud boggingって何だろ?って思ったらこんな感じのモータースポーツですね。

www.youtube.com


 こんなところまで守備範囲か、NEJM!とも思いましたが、この手のスポーツってしばしば泥の中で動けなくなってしまうことがあるんだそうですね。で、排気口とかが泥で詰まると自動車内に一酸化炭素が充満してCO中毒になる様です。最近だとMTVのBuckwildというテレビ番組でShain Gandeeさんが亡くなったことで注目を集めています。

 今回2件の症例報告があり、1件目は18歳の少年ドライバーで、もう一人は同乗していた16歳の女性でした。mudd bogging中に意識障害を来たし三次医療機関に搬送されています。救急外来搬送時には、COHb濃度は18.5%と14.0%でした。高圧酸素の治療レジメンに従って、2.8気圧30分→2.0気圧60分、360分インターバルの繰り返しを行い症状は改善しています。

 2件目は2人の男性ドライバーでこちらも16歳と19歳。mud boggingの後部座席に乗っていた2人が意識障害で三次医療機関に搬送されています。16歳の少年は糖尿病歴があり、脈拍微弱と徐脈だったため、心配蘇生術を受けています。彼らのCOHb濃度は39.6%と47.5%でした。

 Mud boggingがCO中毒の原因になることを救急医を含めた臨床医は知っておく必要があります。これって窓が開けられないということもかなり関係しますよね。

✓ Mud boggingは一酸化炭素中毒のリスクになる


再潅流障害へのシクロスポリン 
Cyclosporine before PCI in patients with acute myocardial infarction*4

 この研究を見てやや唖然としました。まあ確かにDES全盛期ではありますが、全身投与を普通考えるか?というのが率直な感想。まあ、でもやってみないと分からない、大科学実験!みたいな感じでしょうか。背景にあるのはSTEMIの死亡率は減ったけど心不全発症は増えていて、心不全を予防するために心筋傷害を減らす事が大事だよね〜というところです。シクロスポリンによって再潅流障害が軽減して心筋梗塞サイズが減少して心不全等の後改善に繋がるのではないか?という仮説です。
 論文のPICOは、

P:STEMI患者で発症12時間以内、責任冠動脈の閉塞を認めPCI施行予定の970人
I:冠動脈再潅流前にシクロスポリン静脈注射(2.5mg/kg)
C:プラセボ
O:全死亡、初回入院中の心不全増悪、心不全の再入院、左室拡張期容量の複合アウトカム
T:RCT/ITT解析あり
結果:
 シクロスポリン群 395人、プラセボ群306人
 平均60歳、男性 84%、BMI 27、Killip Ⅰが87%、Ⅱが10.7%、心不全既往はほぼなし
 プライマリアウトカムは、シクロスポリン群 59.0%、プラセボ群 58.1%で有意差なし。
 各項目毎、心筋梗塞の再発、不安定狭心症脳卒中など全て有意差なし。

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(本文より引用)

 まあ、シクロスポリンは失敗でしたね。STEMIの死亡率がぐーんと下がってますが、今後は健康寿命という観点でいうと、生存率を上げるだけでなく、元気で生活できる期間を延ばそうという流れですね。そのためには心不全と真っ向から立ち向かわなければならないですね。今後この方向性での研究に期待。

✓ シクロスポリン全身投与はSTEMI患者に対する投与で心不全関連のアウトカムを改善しなかった 


てんかん治療へのカンナビノイド 
Cannabinoids in the treatment of epilepsy*5

 てんかん治療薬としてカンナビノイドが注目されていることを知りませんでした。レビューなのでまあとりあえず箇条書きで。
・大麻は紀元前1800年頃からてんかんの治療に使用されている。
ヴィクトリア時代でも大麻はてんかん治療に使用されていた
・20世紀初めにフェノバルビタールなどが発見され、マリファナは使用制限が出てきたため大麻の使用が制限されるようになった
・1990年代に内因性カンナビノイドシステムの発見があり、再度注目を集めている。これはカンナビノイド受容体を刺激することで痙攣が治まるというもの
てんかん治療自体は若干行き詰まっており、現時点でてんかん全体の30%は難治性で現行の治療薬でのコントロールが出来ていない。
・カンナビノイドが治療のbreakthroughになるのではないか?と注目
・ただし、現時点でCochraneは”no reliable conclusions can be drawn at present”と結論。RCTデータの不足
・今後大規模な検証が待たれている
・長期予後の問題はやはり薬物中毒の問題であり、およそ9%程度に中毒が起こると報告あり
・医療大麻は米国では承認されているものの、全ての州で用いられるわけではない

✓ てんかん治療の一選択肢として医療用大麻(カンナビノイド)が検討されている