栃木県の総合内科医のブログ

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ACPJC:健常人に対する2型糖尿病スクリーニングは全死亡・心血管死亡を減らさない

ACPJCアップしときます。世間はシルバーウィークですねえ。

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Screening for type 2 diabetes mellitus: a systematic review for the U.S. Preventive Services Task Force.

Selph S, Dana T, Blazina I, et al. 

Ann Intern Med. 2015;162:765-76.

臨床上の疑問:
健常人において、2型糖尿病スクリーニングは全死亡や心血管死亡などの健康関連アウトカムを改善するか?
・スクリーニングで同定された空腹時高血糖や耐糖能障害を治療すると糖尿病は予防できるか?


方法:
 ①組み入れ基準:2型糖尿病・空腹時高血糖・耐糖能障害のスクリーニングと非スクリーニングを比較した研究 または 早期糖尿病(1年以内に診断されHbA1c<8.5%で無治療)もしくはスクリーニングで見つかった空腹時高血糖・耐糖能障害の無症候性患者に対する治療を評価した研究
 ②除外基準:
記載無し
 ③アウトカム:
プライマリ 全死亡と心血管死亡、2型糖尿病の進行
 ④検索方法:
MEDLINE、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cochrane database of systematic reviews(2007-2014年)、USPSTFレポート、リファレンスリストで英語文献によるRCT・観察研究・システマティックレビューが検索された。
 ⑤検索結果:88個の研究が組み入れ基準を満たしていた。スクリーニングと非スクリーニングを比較した2RCTs、診断早期の糖尿病もしくはスクリーニングで発見した糖尿病患者に対する治療を評価した13RCTsが組み入れ
られた。また、14RCTs・1半RCT・1観察研究の2型糖尿病進行を予予防する研究も組み入れ対象となった。


結果:

①健常人に対するスクリーニング
スクリーニング vs 非スクリーニング(10年時点で評価)
・全死亡:有意差を認めず。(2件の英国のRCT:①n=19226人、HR 1.06:0.90-1.25、②n=4396人、HR 0.96:0.77-1.20)
・心血管死亡:有意差を認めず(1件のRCT:n=19226人、HR 1.02:0.75-1.38)

②診断早期もしくはスクリーニング指摘の糖尿病・空腹時高血糖・耐糖能障害患者に対する治療
・血糖降下治療 vs プラセボ全死亡で有意差なし(8件のRCT:n=19061人、RR 1.9%:-13 to 17)、心血管死亡でも有意差なし(5件のRCT:n=18475人、RR 5.9%:-16 to 34)
・生活習慣改善 vs 通常ケア:全死亡で有意差あり(HR 0.71:0.51-0.99)、心血管死亡でも有意差あり(HR 0.59:0.36-0.96)。こちらは23年間経過を見た1RCT(n=576人)では有意差があり、1-14年のfollow up期間だった3RCT(n=1739人)では全死亡に有意差は出なかった。

③空腹時高血糖・耐糖能障害患者の糖尿病への進展抑制を目的とした治療
・生活習慣改善:糖尿病進展を有意に減らす(10件のRCT:n=5474人、RR 41%:26 to 52)、NNT 10(8-15)
・チアゾリジン系薬剤:糖尿病進展を有意に減らす(3件のRCT:n=6238人、RR 49%:8 to 72)、NNT 9(6-51)
・α-GI:糖尿病進展を有意に減らす(4件のRCT:n=3516人、RR 36%:10 to 55)、NNT 12(8-43)

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(本文より引用)

結論:
 ・健常人に対する2型糖尿病スクリーニングは全死亡・心血管死亡を減らさない。
 ・早期の糖尿病もしくはスクリーニングで明らかになった糖尿病・耐糖能障害・空腹時高血糖はに対する介入は生活習慣が全死亡・心血管死亡を減らす。
 ・スクリーニングで判明した空腹時高血糖・耐糖能障害患者の糖尿病進展予防には、生活習慣改善・チアゾリジン系薬剤・α-GIが同等に効果的である。

 なかなか分かりにくいテーマです。感覚的には無症状の疾患だし、スクリーニングが良さそうな気がしてしまうのですが、全死亡とか心血管死亡という段階で見ると、スクリーニングの効果は薄まってしまいます。ただ長期間経過を見ると生活習慣介入は全体的に良い傾向でした。

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