栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 小学生近視予防にアウトドア活動介入/血小板増加/リード無しペースメーカー挿入/心不全の中枢性睡眠時無呼吸症候群へのASV

■JAMA■

小学生近視予防にアウトドア活動介入 
Effect of time spent outdoors at school on the development of myopia among children in China*1

 近視は主に遺伝要因と環境要因で起こると言われていて、世界的にも疫学が異なると言われています。例えばアメリカ人は30%ほどが近視ですが、アジアではもっと頻度が高く、今回studyを出している中国でも高校卒業時に近視が80-90%とも報告されています。一度近視になると、網膜剥離や黄斑変性リスクになるため、近視を如何に予防できるかということに注目が集まっています。今回はアウトドア活動を行うことで近視が予防できるか?という非常に興味深いテーマですね。
 論文のPICOは、

P:12学校の小学校1年生
I:平日学校のある日の放課後40分をアウトドア活動介入 + 週末親子にアウトドア活動推奨群
C:通常群 
O:小学校4年生時点での近視発症率
T:Cluster RCT(学校毎)
結果:
 アウトドア活動のアドヒアランスは抜き打ちで調査員チェックが入り80%
 学校外での活動のアドヒアランスは推奨にも関わらず有意差なし
 介入時の平均年齢6.6歳、近視は介入時点で2%、介入群の方が両親の近視が少ない
 プライマリアウトカムは、アウトドア活動介入群は259/853人(30.4%)、通常群は287/726人(39.5%)と有意にアウトドア活動群で低下(-9.1:-14.1 to -4.1)

 普通に効果あるんですね・・・アウトドア活動。先日の塩分制限の小学校単位のCluster RCTもそうですが、この規模の研究ができるのが今の中国の強みである気がします。それにしても小学校4年生時点で近視40%弱って結構多いですね。まあ、大きな交絡因子として、両親の近視が介入群と通常群で大きく異なるため、残念ながら遺伝学的要因を除外し切れていない可能性があります。
 editorialでもコメントされており、アウトドア活動の効果は予想されたよりも少なかった模様で、そもそもなぜアウトドアが良いのか?が分かっていないこと、アウトドア活動を止めても効果が残るのかなどが今後の課題ですねえ。

✓ 小学校低学年時代のアウトドア活動は高学年になった時の近視発症率を減らす


血小板増加 
Thrombocytosis*2

 またまたJAMAのDiagnostic test interpretationです。症例をベースに検査について考えましょう!というコーナー。
・症例
 32歳女性、3年前から頭痛あり。生活に支障もでるほどで週数回、嘔気・嘔吐を伴う。光・音過敏あり。神経巣症状は認めず、眼底所見・神経所見に異常なし。片頭痛の診断がついて、NSAIDsとスマトリプタンを使用したが症状改善せず。ルーチン検査を行ったところ血小板 66万/μlと著明高値でした。 

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(本文より引用)


・問題
 A.骨髄増殖性疾患による血小板増多
 B.一過性上昇で再現性のない状態
 C.片頭痛発作によるストレス性
 D.骨髄異形成症候群による血小板増多

・回答 B.一過性上昇で再現性のない状態
 血小板値は血算の一部として測定され、測定方法としてはインピーダンス法やフローサイトメトリー法などの測定方法があります。gold standardは目視であり、機械測定の結果が疑わしい場合には確定診断として目視を行います。血小板の正常値に決まったものはなく(これは産業医として基準値を決めるときに悩みましたが・・・)、「年齢」「性別」「人種」による影響があり、何より遺伝の要素が大きいと言われています。

 血小板増多を見た場合にまず行うべきは「再検査」です。というのも血小板増多全体で8ヶ月後測定しても増多が残っていたのは10%しかないとも言われており、多くは一過性上昇だからです。実際に再現性のある血小板増多であれば、まずはreactiveな上昇、その次にClonalな上昇を検討しましょうと。reactiveな上昇には一過性と持続性があり、一過性のものにはストレス・感染持続性のものには鉄欠乏性貧血・慢性炎症などが入ってきます。Clonalな上昇では大半が骨髄増殖性疾患で90%にJAK2やCALRが多い模様です。

 さて、この症例では再検査でも血小板増多が持続し、他に原因はなく精査の結果原発性血小板増多症(ET)と診断されたとのことでした。

✓ 血小板増多の多くは再現性のない一過性上昇、再現性があっても80-90%は反応性上昇である

 


■NEJM■

リード無しペースメーカー挿入 
Percutaneous implantation of an entirely intracardiac leadless pacemaker*3

 ペースメーカーのリード感染を一度でも経験したことがある人はリードさえなければ・・・って思った事があるのではないでしょうか?今回ついにリード無しのペースメーカーが出たとのことで、コントロール無しの前向き観察研究が行われています。題してLEADLESS Ⅱ研究。
 論文のPICOは

P:永続的に心室単腔ペーシングを必要とする患者
I:リードなしのペースメーカー挿入
C:なし
O:有効性アウトカム:6ヶ月後の認容可能なペーシング閾値(0.4msecで≦2.0)+認容可能な検出振幅(R波≧5.0mV)
  安全性アウトカム:デバイス関連の有害事象
T:前向き観察研究/ITT解析あり
結果:
 試験は現在も進行中。
 504/526人(95.8%)でペースメーカー植え込みに成功。
 有効性アウトカムは、最初の解析症例の270/300(90%:86.0-93.2%)で達成され、安全性アウトカムは、280/300例(93.3%:89.9-95.9%)で達成された。
 デバイス関連の有害事象の発生は6.7%で、デバイス脱落 1.7%、心穿孔 1.3%、ペーシング閾値の過剰上昇 1.3%などだった。

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(本文より引用)

 なるほどー。興味深いのは通常のリードありのペースメーカーの植え込み関連合併症は3.1%程度であることです。通常植え込みの2倍の合併症ということになります。もちろん長期予後を検討する必要がありますが、もう少し技術革新、安全性確保が重要なのではないか?と思ってしまいます。コントロールがないと何とも言えないですね・・・

✓ リード無しのペースメーカーが開発され、植え込み成功率は90%だった


心不全の中枢性睡眠時無呼吸症候群へのASV 
Adaptive servo-ventilation for central sleep apnea in systolic heart failure*4

 心不全の合併症として中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)が報告されています。重症度と関連しているとも言われ、心不全+CSA」に対する加療をどうするか?という点が論点になりつつあります。ちなみに過去には、この心不全+CSAにCPAPを導入したRCTが報告され効果は不十分でした。今回巷で言われているASVの効果を検証したRCTが報告されていました。ちなみにASV療法とは、呼吸に合わせて圧を増減させるCPAP的な意味合いでしょうか。
 論文のPICOは、

P:EF≦45%およびAHI≧15の心不全患者 1325人
  NYHA Ⅲ or Ⅳ
I:ASV夜間5時間以上装着、週7日以上
C:通常ケア
O:12ヶ月時点での死亡・致死的疾患・心不全入院のcomposite outcome
T:RCT/ITT解析
結果:
 平均69歳、BMI 28、NYHA Ⅲ 69%、EF 32%、AHI 31の患者群です。
 ACSアドヒアランスは60%
 ASV群では平均AHIが31から6.6まで改善
 プライマリアウトカムは、ASV群と通常ケア群で有意差なし(54.1% vs 50.8%,HR 1.13:0.97-1.31)
 全死亡と心血管死亡はASV群の方が有意に高かった(全死亡:HR 1.28、心血管死亡:HR 1.34)。

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(本文より引用)

  期待されていた(?)ASVも厳しい結果です。というかAHIはやはりサロゲートマーカーとしては不適切なのかもしれないと思いました。AHIこんなに減ってるのに死亡が増えるって・・・プライマリアウトカムは複合ですが、無視できない結果です。なかなか心不全の予後改善効果を提唱できる介入方法がでないですね・・・

✓ 中枢性睡眠時無呼吸を合併しているEF低下心不全患者に対するASV療法は効果なく死亡が増える