栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:アルツハイマー型認知症の興奮症状へのデキストロメトルファン+キニジン

アルツハイマー認知症の興奮症状へのデキストロメトルファンキニジン
Effect of dextromethorphan-quinidine on agitation in patients with Alzheimer disease dementia*1

JAMA. 2015;314(12):1242-1254.  
【背景】
 Alzheimer型認知症の患者さんにとって興奮はありふれた症状で、安全かつ効果的な対処法の確立は不十分である
【目的】
 Alzheimer型認知症患者さんの興奮に対するデキストロメトルファンキニジンの効果・安全性・忍容性を評価する。
【デザイン、セッティング、患者】
 Phase 2の多施設二重盲検ランダム化比較試験で、プラセボ対照試験である。2012年8月〜2014年8月にかけて、5週間毎2クールの連続した治療が検証された。おそらくAlzheimer型認知症であろう患者で、臨床的に明らかな興奮症状がある(Clinical Global Impressions-severity agitation score≧4)患者で、MMSE 8-28点の患者が米国42施設から組み入れられた。抗うつ薬抗精神病薬睡眠薬認知症薬を使用することは許可された。
【介入】
 第1クールでは、1220人の患者が3:4の比率でデキストロメトルファンキニジン(n=93人)とプラセボ(n=127人)に割り付けられた。
 第2クールでは、デキストロメトルファンキニジンは継続され、プラセボ群は効果判定が為された後に再度1:1でデキストロメトルファンキニジン群(n=59人)とプラセボ群(n=60人)に割り付けられた。
【メインアウトカム】
 プライマリアウトカムは、Neuropsychiatric inventory(NPI) 興奮スコア(スケール0-12)で評価した。
【結果】
 全体で194人(88.2%)が研究を完遂した。並行比較試験により152人がデキストロメトルファンキニジンを内服し、127人がプラセボを内服した。解析は第1クール、第2クールを統合すると、NPI興奮スコアがデキストロメトルファンキニジン群で有意に減少していた(-3.95点,p<0.001)

 第1クールでは、平均NPI興奮スコアはデキストロメトルファンキニジン群で7.1から3.8まで減少し、プラセボ群では7.0から5.3まで減少していた。第1クールでの両群差は有意で、NPI興奮スコアの差は-1.5(-2.3 to -0.7)だった。第2クールでのNPI興奮スコアはデキストロメトルファンキニジン群で5.8から3.8まで減少し、プラセボ群では6.7から5.8まで減少していた。第2クールでの両群差も有意で、NPI興奮スコアの差は-1.6(-2.9 to -0.3)だった。

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(本文より引用)


 副作用は、転倒(デキストロメトルファンキニジン群で8.6%、プラセボ群で3.9%)、下痢(デキストロメトルファンキニジン群で5.9%、プラセボ群で3.1%)、尿路感染症(デキストロメトルファンキニジン群で5.3%、プラセボ群で3.9%)だった。重篤な有害事象はデキストロメトルファンキニジン群で7.9%、プラセボ群で4.7%だった。デキストロメトルファンキニジン群は認知機能低下や鎮静、臨床的に有意なQTc延長とは関連していなかった。
【結論】
 試験的な10週間のPhase2ランダム化比較試験では、デキストロメトルファンキニジンはAlzheimer型認知症患者さんの興奮に対して効果的な治療法で、全体的に忍容性も良好だった

【批判的吟味】
・ちょっと複雑なデザインですが、いつもの通りまずは論文のPICOから見てみます。
P:50-90歳のprobable  Alzheimer型認知症患者220人
I:デキストロメトルファンキニジン漸増法(1週間 20mg/10mg、2-3週間 40mg/20mg、4-5週間 60mg/30mg)
C:プラセボ
O:5週時点でのNPI興奮スコア
T:RCT
→更に5週時点でプラセボ群を更に2群にランダム割り付けして、上記と同じ介入を行い10週後に再評価しています。
・平均78歳、女性57%、施設入所者5%、AChEI 73%、メマンチン 49%、MMSE平均 17点
・ちょっと複雑なデザインなのと、第2クールでランダム化した時のベースラインが両群で異なっているのは気になりました。
・あとはアウトカムがこのNPI興奮スコアで良かったのかな?と。実際に臨床的にどの程度良くなるのかがイメージが湧きにくいです。
・更には、興奮も治まっていますが、それなりに副作用が出ているのが気になります。副作用全般を合算すると実に61%の方に副作用が出ている計算になります。

【個人的な意見】
 話題のメジコンⓇ論文(笑)。デキストロメトルファンメジコンⓇ)ってまあ効いてるんだなあというのがまず最初の印象。そして、今回の研究目的とはそれますが、通常の鎮咳薬としての使用時にも注意が必要だなと認識を新たにしました。転倒倍ですもんね。安易な処方には気をつけよう。

✓ デキストロメトルファンキニジンはAlzheimer型認知症患者の興奮症状を有意に抑制する