栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 虚血性心疾患患者へのメール介入/院内CPAでのROSC後予後とDNARオーダー/高齢者糖尿病の血糖管理/CV挿入部位による合併症頻度の違い/Asthma-COPD overlap syndrome

■JAMA■

虚血性心疾患患者へのメール介入 
Effect of lifestyle-focused text messaging on risk factor modification in patients with coronary heart disease*1

 これもなかなか興味深い研究です。虚血性心疾患既往のある患者さんに対して効果のある介入というとスタチンやアスピリン、ACEなどが思い浮かびますが、生活習慣の改善がどんな効果があるかは良く分かっていないのが現状です。今回、定期的にメールを送ることでどんな効果があるかを検証したRCTが報告されています。
 論文のPICOは、

P:虚血性心疾患既往のある18歳以上710人
I:生活習慣に関する助言のメールを週4回配信を6ヶ月間
C:通常ケア
O:6ヶ月後のLDL値
T:RCT/1施設
結果:
 平均57歳、男82%、BMI 30、LDL 101、BP 129/83mmHg
 プライマリアウトカムは介入群で-5(-9 to 0)と有意に減少
 その他、血圧・BMI・腹囲・活動性・喫煙率など全てが有意に減少

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(本文より引用)

 メール効果すごいですね。内容自体はすごくシンプルなのですが、患者さんへのアンケートでもメッセージが有用 91%、分かりやすい 97%、メールの影響あり 70-80%と概ね好評でした。

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(本文より引用)

まあ、もちろんサロゲートアウトカムなんですが、LDL値だけでなく体重が減ったり喫煙率が減ったりするのは凄い効果ですね。今後の追試に期待です。

✓ 定期的な生活習慣に関する助言メールは虚血性心疾患既往のある患者の生活習慣パラメータを改善する
 

院内CPAでのROSC後予後とDNARオーダー 
Alignment of Do-Not-Resuscitate status with patient' likelihood of favorable neurological survival after in-hospital cardiac arrest*2

 院内CPAへの対応は早期認知、救命の連鎖、絶え間ない心マ、Vfであれば出来るだけ早い除細動、他では出来るだけ早いエピネフリンが効果的である事は分かっていますが、今回はROSC後の患者さんに焦点を絞っています。ROSC後に今後の方針を立てることは重要ですが、実際にどんな患者さんにDNARを取るべきかというのは実際には良く分かっていません。今回は、ROSC後のDNARオーダーと実際の神経予後良好生存との関連を観察研究で検証しています。
 論文のPECOは、

P:院内CPAでROSC後の患者
  CPA前にDNARやER・手術室は除外
E:ROSC後12時間以内にDNARオーダーあり群
C:ROSC後12時間以内にDNARオーダーなし群
O:神経予後良好生存(cerebral performance 1-2点)
T:観察研究
結果:
 ROSC後12時間以内にDNARオーダーがある方が年齢が高く(68歳 vs 64歳)、併存疾患が多く、CPA前ADLが低い
 全体の22%にROSC後12時間以内にDNARオーダーが出ている
 DNARオーダー率が上昇するにつれて、実際の神経予後良好生存率は低下した。
 最も良い群では神経予後良好生存 64.7%でDNARオーダー 7%、最も悪い群では神経予後良好生存 4.0%でDNARオーダーは36.0%だった。
 CASPRIスコアというROSC後の神経予後予測スコアを用いて層別化したところ、CASPRIスコアは神経予後良好生存を予測し得た。

 色々解釈はあると思うのですが、神経予後生存が見込めない人にDNARオーダーが出ていないのが問題では?と考察されています。確かに、純粋に予後良好か否かだけでDNARオーダーは組めませんが、CASPRIスコアなどはかなり正確に予測できる可能性もあり、客観的なデータを元にしてROSC後の説明と今後の方針決定を行う必要がありますね。最期に医療コストについても言及がありました。

 ちなみにCASPRIスコアとは、http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleID=1162169#ioi120023f2に掲載された観察研究で検証されたスコアで、年齢・CPA時の初期波形・Prearrest CPCスコア・入院場所・蘇生時間・心停止前の状態などを用いて算出されていました。

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✓ ROSC後の神経予後良好生存を適切に予測してDNARオーダーを出すかを検討すべき


高齢者糖尿病の血糖管理 
Potential overtreatment of older,complex adults with diabetes

 JAMA networkからのレビューです。取り上げられていたのはJAMA internal medicineの論文で、「Potential overtreatment of diabetes mellitus in older adults with tight glycemic control」というテーマでした。まあ、高齢者の糖尿病患者に対して治療が過剰すぎないでしょうか?というのがテーマですね。
 この論文のPICOは、

P:65歳以上の糖尿病患者1288人が対象
E/C:very complex群(透析またはIADL2項目以上障害)、complex群(IADL2つ以上または慢性疾患3つ以上)、relative healthy群(上記なし)に層別化
O:HbA1c<7%かつ低血糖リスク高い薬剤使用(インスリン・SU剤)
T:横断研究
結果:
 まず割合としてvery complex 22%、complex 28%、relative healthy 50%
 HbA1c <7%率は、very complex 56%、complex 63%、relative healthy 63%
 上記の7%未満の群では55%でインスリンとSU剤を使用していた

 ということで、結果としてhigh risk患者の血糖下げすぎですよ〜という結論。まずは自身の診療を振り返ってみましょう。他院からの転院などでまず見直すのはこの部分です。

✓ 実臨床ではhigh risk患者さんに対して低血糖リスクの高い薬剤を使用して血糖を下げすぎている実態がある
 

 


■NEJM■

CV挿入部位による合併症頻度の違い 
Intravascular complications of central venous catheterization by insertion site*3

 CV挿入部位に関するデータは過去のものは観察研究が多く、今回ランダム化比較試験を用いて合併症頻度を検証する研究が出ました!
 論文のPICOは、

P:ICUに入室しCV留置が必要と判断された3027人
  3カ所の部位のうち1カ所しか不可能な場合は除外
  2カ所OKなら組み入れ
  CV挿入は50症例以上の経験がある挿入者
I/C:①鎖骨下、②頚静脈、③大腿
O:composite(CRBSI、症候性DVT 全例エコーで確認)
T:RCT/ITT解析
結果:
 平均63歳、BMI 26、平均CV挿入期間6日
 3カ所のRCTだったのが2532件、2カ所のRCTだったのが939件
 最終的に予定通りの場所に挿入できた割合は、全体で90%
 プライマリアウトカムは、①鎖骨下で8例、②頚静脈 20例、③大腿 22例発症した。
 大腿は鎖骨下と比較すると有意に合併症が多かった HR 3.5(1.5-7.8)
 頚静脈も鎖骨下と比較すると有意に合併症が多かった HR 2.1(1.0-4.3)
 大腿と頚静脈は有意差なし

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(本文より引用)

 というわけで、一番合併症が少ないのは鎖骨下静脈ということにはなります。ただ、その他の合併症(気胸等)を合わせると3群ともにあまり変わりなくなるという結果。結局case by caseという感じもします。長期留置を予定するのであれば鎖骨下が良いかもしれません。血栓をアウトカムにしていますが、これは全例エコーを行っているので本来問題にならない血栓をoverに見つけてしまっている可能性があります。

✓ CV挿入部位で血栓・感染が最も少ないのは鎖骨下静脈だが、その他の合併症は多い


Asthma-COPD overlap syndrome*4

 最近注目のこの概念。GOLDもGINAもこの概念を提唱しています。今回レビューが出ていましたのでざっくり箇条書きで行きたいと思います。
・全人口の12人に1人が喘息もしくはCOPDに罹患していると言われている。
・喘息、COPDともにheteroな疾患群であると認識されている
・喘息とCOPD双方の特徴を持っているものを、Asthma-COPD overlap syndrome(ACOSと呼ぶ

f:id:tyabu7973:20151004003722j:plain(本文より引用)

・Asthmaはsmall & large airwayの炎症性疾患で、典型例では小児期より始まりアレルギー歴がある
・発作によって気道閉塞するものの発作が改善すると気道閉塞も改善し可逆性があり、気道過敏性がcoreだと言われている
COPDはsmall airwayの炎症性疾患で、慢性気管支炎型と気腫型に分けられる
・典型例では40歳前後から症候性となり、喫煙者に多く、緩徐に進行していく。
AsthmaとCOPDは双方とも炎症性疾患だが、相違点としてはAsthmaでは好酸球、Th2Tリンパ球が、COPDでは好中球、CD8リンパ球が炎症に関与している
・典型例は区別を付けることが比較的容易だが、高齢者などでは臨床症状のみでは区別が難しい事も多い
・Asthmaもリモデリングにより、可逆性が疑われ不可逆性変化を来しうる。また、COPDも可逆性がある事も報告されている
ACOSは閉塞性肺疾患の15-45%と言われ、かなり多いが最適な治療を検証したstudyもない。
・そもそも過去のAsthmaの研究からはsmokerは完全に除外され、COPDの研究からは喘息患者が除外されているため、ACOSの患者に対する臨床試験は過去には十分行われていない
・肺は30歳までに成長し以降は機能が徐々に低下していく。正常ではFEV1.0は25-50ml/年低下し、Asthmaは80ml/年、COPDは150ml/年ずつ低下すると言われる。
・Asthma患者が治療の進歩で長生きするようになりACOSが増えてきた可能性がある
気道過敏性は特定のアレルゲンだけでなく、寒さ・乾燥・空気・ヒスタミンなどで非特異的に出現することもある。過去にはasthmaの特徴と信じられてきたがCOPDとの鑑別には使えないことが分かってきている。
・気道過敏性は好酸球炎症と相関する事は分かっているが、FEV 1.0低下と関連するかはcontroversy
・気道過敏性はCOPDのリスクでもあり、COPDの60%にあると言われているが、こちらでは好中球が関連。
・SABAによる可逆性がAsthmaの特徴と信じられてきたが、進行したasthmaでは可逆性がなくなり、COPDの40-50%には可逆性が存在する
アトピーはasthmaのリスクとして知られ、アレルギー性のasthmaはICSの反応性が良いと言われている。アトピーありのCOPDにはICSが効く
・現時点ではACOSをどう診断するか、どの様な治療が最適化についてはほとんど研究が無い状態。今後の検証が待たれている

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(本文より引用)

✓ ACOSの概念の診断基準や標準的治療方法の確立が待たれている