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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:顕微鏡的大腸炎の治療/慢性腎障害患者の周術期急性静脈血栓症の治療/入院中の糖尿病患者の基礎インスリン投与を含めた血糖管理

MKSAP 循環器 外科 内分泌 消化器 診断 内視鏡
MKSAPまとめ。
だいぶ遅れました。早く読める様になってきたので5問くらい行くかを悩み中。

顕微鏡的大腸炎の治療 
Treat a patient with microscopic colitis

❶症例 
  49歳女性が4ヶ月前からの水様性下痢が一日に5-6回/日程度あるとのことで外来を受診した。下痢は腹痛や便意切迫感を伴うが出血はない。既往に逆流食道炎があり、妹がCeliac病である。内服薬はランソプラゾールのみ。
 身体所見では、バイタルは正常。腹部診察は正常で、大腸内視鏡検査では粘膜面は正常で、大腸生検結果では粘膜固有層の上皮下に異常なコラーゲンバンドが認められた。

 この患者の下痢治療で次に行うべきはどれか?
A. ブデソニド
B. グルテンフリー食
C. メサラミン
D. プレドニゾン
E. ランソプラゾール中止

 ❷顕微鏡的腸炎
 本患者の治療で最も行うべきはランソプラゾール中止である。顕微鏡的腸炎は2種類あり、本患者はcollagenous colitisが疑われる。もう一つはlymphocytic colitisである。顕微鏡的腸炎は通常40歳以上に見られ、女性の方が頻度は多い。症状は慢性で再発性の水様性下痢が多く、重症度は様々で、体重減少や腹痛、倦怠感、嘔気を伴う事がある。自己免疫性疾患を合併することも多く、甲状腺疾患やCeliac病、糖尿病、関節リウマチなどの併存疾患が多い。顕微鏡的腸炎の原因は明確にはなっておらず多因子によるものが多いとされているが、薬剤や感染などの粘膜面への暴露物質に対する異常な粘膜応答の結果ではないかと推測されている。

 大腸内視鏡検査では、粘膜面は正常であり、診断は生検で為される。lymphocytic colitisでは上皮内のリンパ球増多(100上皮中20以上)が、collagenous colitisでは粘膜固有層内の上皮下コラーゲンバンドが10μm以上(正常は5-7μm)が病理学的特徴である。ランソプラゾールは関連が最も高い薬剤で、他には、NSAIDs・セルトラリン・ラニチジン・チクロピジン・アカルボースなどがある。H2拮抗薬は顕微鏡的腸炎との関連が指摘されているが、シメチジンは最も関連が少なく、本患者でのPPIからの代替薬として選択しやすい薬剤である。下痢症状に対する対症療法として、ロペラミドやビスマス、ジフェノキシレートなどが必要時頓用で使用しても良いかもしれない。

❸治療選択肢
メサラミン・ブデソニド:顕微鏡的腸炎の治療に効果があるかもしれないが、第一選択の治療ではない

グルテンフリー食:内服薬の減量や顕微鏡的腸炎の通常治療に反応しない場合には、celiac病の合併を考慮すべきである。というのも顕微鏡的腸炎とceliac病は関連があると言われているためである。本患者では最初からグルテンフリー食にする必要は無い。

プレドニン治療抵抗性の顕微鏡的腸炎の場合には選択肢に上がることもある第一選択薬にはならない。

Key Point
✓ 顕微鏡的腸炎の治療の第一選択は起因可能性のある薬剤の中止である。最も一般的なのはランソプラゾール・NSAIDs・ラニチジン・チクロピジン・アカルボースである

Beaugerie L, Pardi DS. Review article: drug-induced microscopic colitis - proposal for a scoring system and review of the literature. Aliment Pharmacol Ther. 2005;22(4):277-284. PMID: 16097993

 

 

慢性腎障害患者の周術期急性静脈血栓症の治療
Treat a patient with kidney insufficiency and acute venous thromboembolism in the postoperative period

❶症例
  75歳女性が前日からの右下肢腫脹で入院中にコンサルトされた。3日前に腎細胞癌に対して腎臓摘出術を施行している。投与薬剤は、未分化ヘパリンを5000単位×2回/日皮下注射とリシノプリルだった。
  身体所見では、血圧 130/75mmHg、Pulse 85bpm、RR 20/分、体重 80kgだった。右下腿は腫脹・熱感・下腿圧迫での疼痛を認めた。腎臓摘出術後の創部は発赤・出血は認めず、その他の身体所見は正常だった。

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(MKSAPより引用)

 下肢静脈超音波では、右下腿大腿〜膝窩静脈に血栓を認めた。両側腎臓超音波検査では水腎症はなく術後部位に血腫を認めなかった。

未分化ヘパリン皮下注射を中止するとして、以下のどの薬剤が最も適切な治療か?
A. 未分化ヘパリン静注で用量調節
B. エノキサパリン 80mg×2回/日
C. フォンダンパリヌクス 7.5mg/日
D. ワーファリン

 ❷術後急性静脈血栓症
  本患者で用量調節でAPTTを治療域に調節した経静脈的未分化ヘパリンが最も適切な治療である。理由は術後でかつ慢性腎障害を合併しているため。未分化ヘパリンは腎臓よりも網内系で排泄されるため、他の選択肢にある薬剤よりも慢性腎障害のある患者のDVT治療で使用しやすい。また、未分化ヘパリンは更に半減期が短く、プロタミンで完全に拮抗可能である。

 ❸他の治療選択肢
エノキサパリン:エノキサパリンは1mg/kgを1日2回皮下注射が、eGFR>30ml/minの患者では通常レジメン。本患者のeGFRは30未満であり、今回の選択肢の用量では過量であり、術後の出血を増やす可能性があると判断する。更に、エノキサパリンは未分化ヘパリンより半減期が長く体内に蓄積しやすい、プロタミンでは60%ほどしか拮抗されないなどの特徴がある。エノキサパリン投与中に出血を合併した場合には、より治療が難しい。
 結果として、術後で腎機能障害を合併しているDVT患者の治療には、未分化ヘパリンの方がエノキサパリンよるも安全な選択肢である。

フォンダンパリヌクス:フォンダンパリヌクスは腎機能正常の患者でも半減期が長く、17-21時間と言われおり、大部分は腎排泄である。eGFR<30ml/minの術後患者では禁忌になる。更には、プロタミンで拮抗できず、出血時の治療が非常に困難になる。フォンダンパリヌクスの抗凝固効果は組み替えヒトⅦa因子で拮抗可能だが、投与に伴う血栓塞栓リスクがあり、DVTを合併している患者への使用は控えるべきである。

ワーファリンワーファリンは肝代謝であり、腎機能障害のある患者でも薬剤が蓄積したりすることはない。ただ、ワーファリンの抗凝固活性は少なくとも5-7日程度必要であり、治療開始初期には一過性の過凝固状態を来す事も知られている。血栓塞栓症の患者でワーファリンを開始する場合には、常に未分化ヘパリンの様な経静脈的抗凝固療法を併用する。

Key Point
✓ 慢性静脈機能不全に対する最も適切な初期治療は下肢挙上とストッキングでの圧迫である。

Hirsh J, Bauer KA, Donati MB, Gould M, Samama MM, Weitz JI; American College of Chest Physicians. Parenteral anticoagulants: American College of Chest Physicians Evidence-Based Clinical Practice Guidelines (8th Edition). [Erratum in: Chest. 2008;134(2):473]. Chest. 2008;133(6 Suppl):141S-159S. PMID: 18574264

 

入院中の糖尿病患者の基礎インスリン投与を含めた血糖管理
Treat a hospitalized patient who has diabetes mellitus with basal insulin

❶症例

 62歳男性が、右股関節の人工股関節置換術目的に入院した。患者は36歳から1型糖尿病と診断されていた。彼は増殖性網膜症があり過去にレーザー治療を受けている。また、末梢神経障害と自律神経障害も合併。入院前には、レギュラーインスリン/中間型インスリンの30/70製剤を18単位(朝食前)-12単位(夕食前)の2回打ちで使用していた。直近のHbA1cコントロールは良好。

 身体所見では、体温正常、BP 138/79mmHg、Pulse 88bpm、RR 16/min、BMI 22だった。その他の診察所見では、眼底検査でレーザー治療痕があるのと、自律神経障害と、右股関節の変形性関節症を認めた。

 本患者の術後のインスリン治療として最も適切な方法はどれか?
A. グラルギン1日1回+アスパルト各食前
B. 経静脈的インスリン持続投与
C. 30/70インスリンを元通りの量で投与
D. スライディングスケールでレギュラーインスリンを血糖が150mg/dL以上で使用
E. 経皮的インスリン持続投与

 ❷周術期の血糖管理
 本患者では、術後には一日一回のインスリングラルギンと各食前のインスリンアスパルト投与を検討すべきである。本患者は罹病期間が長期の1型糖尿病であり、内因性インスリン分泌はなく、ある程度臨機応変に調節するインスリン投与が必要である。一般的には一日使用量の半分をグラルギンとして投与し、残りを食前に振り分ける方法が一般的である。

 ❸その他の方法
 経静脈的/経皮的インスリン持続投与インスリン持続投与は本患者では不要であり、もし行う場合には集中治療室で管理する方が安全である。

患者では典型的にはエストロゲン値は十分あるが無排卵周期であることが無月経の原因であり、プロゲステロン試験で消退出血を来す。
 術前の投与量を継続
入院中の活動性や食事摂取量は不確定であり、術前投与量をそのまま継続するのは不適切である。
 スライディングスケールスライディングスケールのみで、基礎インスリン投与なしかつ血糖が150mg/dLを越えない限り投与しない方法だと、高血糖と低血糖のスイングが出現する恐れがあり、本患者の治療法としては不適切である。

Key Point
✓ 基礎インスリン投与なしのスライディングスケールでの対応は入院中の糖尿病患者の血糖コントロール方法としては不適切である

Queale WS, Seidler AJ, Brancati FL. Glycemic control and sliding scale insulin use in medical inpatients with diabetes mellitus. Arch Intern Med. 1997;157(5):545-552. PMID: 9066459

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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