栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:腹腔動脈解離/子宮留膿腫/咽後膿瘍

今週のカンファまとめです。
今週は荒れ荒れ。いやあ、こんなことあるんだなあみたいな。
で、今日色んな人に聞いたら、そんなに引くことはあまりないんだとか・・・
引き当てたい人は是非当院へ!

 

腹腔動脈解離 Dissction of celiac artery

 まあ一例報告もできそうなレア疾患の様ですが。急性大動脈解離と一緒に避けていくパターンはよくあるのですが、腹腔動脈のみが単独で解離を起こすというパターンはかなりレアです。

 腹腔動脈は総肝動脈・左胃動脈・脾動脈が分岐していますが、左胃動脈であれば胃が虚血になる事はほとんどないため、症状は出ないことが多い様です。一方で、脾動脈が詰まると脾梗塞になり、総肝動脈が閉塞すると、胆嚢動脈が詰まったりするなど重篤な合併症が起こるようです。

 Pubmedみたら19症例をまとめた報告があり、

www.ncbi.nlm.nih.gov
 これによると、平均年齢は39-76歳で、腹痛があるものよりもたまたま見つかるものの方が多いのは衝撃的でした。これも画像進歩の弊害でしょうか・・・治療は保存的に行くことが多く、腸管虚血を合併すれば手術になる事も。
 

 ✓ 腹腔動脈解離は、大動脈解離に合併しない単独のものがあり、予後は比較的良好

 

 

子宮留膿腫 Pyometra

 子宮留膿腫は、閉経後の高齢者や子宮頚部疾患を有する女性を中心に認められ、子宮腔内の感染+子宮頚部の狭窄や閉塞によって、子宮腔内に膿が貯まるという疾患概念です。

 高齢者になって増えるのは日常生活動作の低下が疾患発症と関連している可能性があるからとも言われています。症状は古典的には、発熱・不正性器出血・膿性帯下・下腹部痛などがありますが、発熱は18.5%とそれほど頻度は高くないようです。

 原則治療は、膿瘍のドレナージと抗菌薬投与であり、子宮頚管の拡張と共に排膿されるとそれだけで症状が良くなる人もいます。起因微生物は連鎖球菌・大腸菌に加えて嫌気性菌が多いです。

 ✓ 子宮留膿腫は高齢者の原因不明の発熱の原因にはなりえる

 

 

咽後膿瘍 Retropharyngeal abscess

 咽後膿瘍とは咽後間隙・椎前間隙に膿瘍が形成される病態です。名前は聞くけどあまり馴染みがなく、というのも抗菌薬の普及でかなり発生頻度は少なくなっているからです。また、通常3歳以下の乳幼児に多いとされ、成人例は比較的稀です。

 主に原発性と続発性に分けられ、原発性は上気道炎による咽後リンパ節が感染し、リンパ節膿瘍が自壊して発症するものが多い模様です。また、成人例では、外傷・異物・内視鏡・気管内挿管あたりもリスクになります。続発性としては、リンパ節結核・頸椎カリエスから冷膿瘍を来す場合や化膿性頚椎炎からの炎症波及が考えられます。

 化膿性脊椎炎からの波及は更にレアですが、椎間板に隣接する椎体終板直下に病巣が生じ、椎体中央部と椎間板へ拡大するのだそうです。頚椎部の化膿性脊椎炎の5-15%程度で起こる合併症とも言われている様です。手術は結構大変。

http://bestpractice.bmj.com/best-practice/images/bp/en-gb/599-1-hlight_default.jpg

http://bestpractice.bmj.com/best-practice/images/bp/en-gb/599-1-hlight_default.jpgより引用)
 

 ✓ 咽後膿瘍は前からだけではなく後ろからも来る