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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet カルシウム摂取と骨折予防/心臓リハビリ/アロプリノール投与前のHLA評価/原因不明脳梗塞の特徴と予後/穿孔性胃十二指腸潰瘍レビュー

BMJ

カルシウム摂取と骨折予防 
Calcium intake and risk of fracture: systematic review*1

 BMJは完全に骨粗鬆症治療にロックオンした感じですね。前回はビタミンDだったのですが、今回はカルシウムについて。高齢者ではおよそ1000-1200mg/日のカルシウム摂取が推奨されていますが、通常西洋諸国では700-900mg/日程度しか摂取していないのが現状です。そこで多くの場合にはサプリメント摂取が推奨されることになります。ただ、一方でカルシウムサプリの副作用も問題となっており、リスク・ベネフィットで判断する必要があります。さて、そんな中システマティックレビューが報告されていました。
 論文のPICOは、

P:50歳以上の成人
  RCTや観察研究で組み入れられた患者
  腎不全・癌患者は除外
I/C:①食餌性カルシウム摂取 vs コントロール、②カルシウムサプリメント vs コントロール
O:骨折
T:ステマティックレビュー
結果:
 ①食餌性カルシウムの研究
  過去にRCT2つしかなくどちらも小規模で有意差なし。観察研究は44コホートを元に50研究があり、37件は食事中カルシウム、14件は牛乳によるものだった。74%の研究でneutralな結果。全体で統合しても骨折減少効果は認めず
 ②カルシウムサプリメントの研究
  過去にRCTが26あり、14件がカルシウムサプリ単独、8件がカルシウム+VitD、4つがその他の組み合わせだった。
  プライマリアウトカムの全骨折 RR 0.89(0.81-0.96)、脊椎骨折 RR 0.86(0.74-1.0)と減少傾向だったが、股関節骨折 RR 0.94(0.76-1.18)、前腕骨折 RR 0.96(0.85-1.09)は減らさなかった
  Funnel Plotを見ると、出版バイアスはありそうで、Caサプリ有利な方向の報告が多く見られた

  というわけで、authorらは食事中のカルシウムを増やしたから骨折が減るというエビデンスはないし、カルシウムサプリは骨折を減らす可能性はあるが、解析方法や骨折の種類によって結果が様々という結果でした。最も減った全骨折もlow ridk biasの研究に絞ると効果は無くなってしまいます。異質性もまずまずあるという感じ。
 最期にカルシウムサプリの副作用について。
・便秘などの消化器症状を10-20%増やす
・16人の骨折を減らす替わりに、消化器関連入院が24人
・56人の骨折を減らす替わりに、尿路結石が68人
・骨折を減らす数と同数の心血管イベント
なるほどー。まあ、この辺りも解析方法によって異なるとは思いますが、決して無害な介入とも言えない訳ですね〜。筆者らはunfavorableなものであると結論しています。Caサプリで便秘は気付かなかったです。今度から気をつけよ。

✓ 少なくとも食事中のCaを増やしても骨折を減らすというエビデンスはなく、サプリメントの効果も確定的では無い。リスク・ベネフィットを意識して使用を検討しましょう


心臓リハビリ 
Cardiac rehabilitation*2

 BMJさらっとレビュー。心リハについてです。今回も箇条書きで。
・心臓リハビリテーションそれ自体が死亡を減らすと言うエビデンスがあります。
・今まではリハビリテーションとして運動が主体でしたが、最近はそれのみならず心血管リスク減少・健康的な行動の推進・機能障害を少なくするといったcomprehensive approachが重要
・2011年のコクランの47RCT、10794人のメタ解析では、心リハの効果は全死亡をRR 0.87(0.75-0.99)と有意に減少しNNTは32でした。心血管死亡についてはRR 0.74(0.63-0.87)でNNT 67でした。
・ただ、英国の2年以上followした研究では死亡率を下げる効果は証明されず、最も最近のCochraneレビューでは、全死亡は減らせなかったと結論しています。
・そもそも心リハの中身ですが、
①健康に関する行動変容と教育
②生活習慣のリスク管理(運動・食事・禁煙)
③精神衛生
④医学的リスクの管理
⑤心保護治療
⑥長期管理
⑦AUDITと評価
なんだそうで。これってリハビリの中身なんだなあとしみじみ。包括ケアですね

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(本文より引用)

・有効性のエビデンス揃いつつあるものの、普及率は20-50%と地域差があり、リハビリへのアクセスの問題もあるのでは?と。
副作用としては、50000時間のリハビリ中に1回心血管イベントが発症するという程度。

✓ 心臓リハビリの有効性はほぼ確立されてきており、適切な患者同定と依頼を


アロプリノール投与前のHLA評価 
Use of HLA-B 58:01 genotyping to prevent allopurinol induced severe cutaneous adverse reactions in Taiwan: national prospective cohort study*3

 台湾から非常に興味深い研究が出ています。アロプリノールは尿酸降下薬として使用されることをよく見ますが、重篤な皮膚合併症(DRESS・TEN・SJSなど)があり、注意が必要です。ただ、これらの皮膚合併症を来しやすいのはある特定の人種(日本人含む)だと分かり、過去の研究からHLA-B 58:01が関連していることが言われています。過去の報告では580倍もリスクが高まるのだとか。アリル4桁とか大変ですけどねえ・・・そこで、アロプリノール処方前にgenotypingを行う事で、副作用を予防できないかを前向きに検証しています。
 論文のPECOは、

P:アロプリノールの適応だが3ヶ月以内には内服していない患者
E:genotype+ →アロプリノール以外を処方
C:genotypeー →アロプリノール処方
O:重症皮膚有害事象(開始2ヶ月後まで週1回電話で確認)
T:前向き観察研究
結果:
 HLA-B 58:01は全体の約20%が陽性。
 平均55歳、35%が痛風発作での適応、高尿酸血症は24%
 2910人が組み入れられ、2339人がgenotype陰性群、571人がgenotype陽性群だった
 プライマリアウトカムは、両群とも1件も起こらず
 過去のデータを用いると7件は発症する見積もりだったとのこと。

f:id:tyabu7973:20151011222247j:plain
(本文より引用)

 台湾では過去にカルバマゼピンでも投与前genotype確定して副作用を大幅に減らしたという経緯があるようで、今回もアロプリノールで処方前のgenotypingを認可しようという話になっています。ただ、最も大きな課題はコントロールがきちんとないところでしょうか。本来はgenotype+の方にアロプリノールを使用した場合と使用しない場合を比較するRCTが理想なんですが・・・

✓ アロプリノールを投与する前にHLA-B58:01を測定しておくことは重篤な皮膚合併症を減らす事に有用かもしれない

 


■Lancet■

原因不明脳梗塞の特徴と予後 
Incidence, outcome, risk factors, and long-term prgnosis of cryptogenic transient ischaemic attack and ischaemic stroke: a population-based study*4

 脳梗塞を真面目に診療すると原因不明(cryptogenic)が多いと言われています。一番難しいのはアテローム血栓脳梗塞で、神経内科専門医でも典型的な症例を探すことがあるくらいだそうです。さて、cyptogenicは徹底的に検査をしてみても最終的に原因が分からない病態のことで、PFOやoccult atheroma、occult Afなどが関与しているのではないか?と考えられています。occultなものであれば、例えばoccult Afならその後経過を見ているとPAfが掴まったり次の脳梗塞として心原性塞栓を発症するかもしれません。この”次の脳梗塞”に注目したのが今回の研究で、初回脳卒中患者のサブタイプ別に予後を人口ベースで評価しています。
 論文のPECOは、

P:2002-2014年に発症した初回TIA脳梗塞患者2555人
  全症例を神経内科医がレビューして、TOAST分類に基づいて7つに分類
E/C:①Cardioembolic、②large vessel、③small vessel、④cryptogenic、⑤unknown cause(検査不十分)、⑥2つ以上の原因、⑦その他
O:心血管リスク・6ヶ月のmRS・脳梗塞再発率
T:後ろ向き観察研究
結果:
 脳梗塞  1607人、TIA 948人
 内訳は、32% Cryptogenic、26% Cardioemboli、13%精査不十分、12% small vessel
 55歳未満に限ると48%がcryptogenic
 心血管リスクは、large vessel・small vesselより少ない
 6ヶ月後のmRSは心原性よりは良いが、large vesselとほぼ同等
 初回cryptoの人で再発で最も多いのはcryptoだった

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(本文より引用)

 うーむ。結局cryptoはcrypto。occultな何かが見つかると言うこともあまり多くないようですね〜。それにしても3人に1人は原因不明。時間ないとついついTOAST分類サボっちゃいがちなのですが、また心新たに頑張りたいと思います。今回の問題点はTIAを含めているところで、TIAは診断が難しく検査も不十分な事も多いので解釈には注意が必要とコメントされていました。

✓ 脳梗塞の病型分類で最も多いのはcryptogenic stroke。診断をもう一度見直そう

穿孔性胃十二指腸潰瘍レビュー 
Perforated peptic ulcer*5

 ちょっとネタ切れ気味で先週の分を。外科レビュー特集でしたからね、Lancet。箇条書きでザックリまとめていきます
・消化性潰瘍関連の合併症で最多は出血で、次に多いのが穿孔である。ただし、穿孔は出血の1/7程度の頻度
・一方潰瘍関連死亡の37%は穿孔と言われ、頻度は多くないが発症すると死亡率高いという結果である
・消化性潰瘍穿孔についてのクオリティの高い研究がほぼない。
・同じ消化性潰瘍の患者の中で、穿孔する人としない人の違いも良く分かっていない。例えば潰瘍のサイズと穿孔は関連がないことは分かっている
・疫学的には発展途上国で頻度も死亡率も問題になっており、先進国では死亡率はここ数十年変化はない
・穿孔性消化性潰瘍のリスクとして知られている因子として、NSAIDs・ヘリコバクターピロリ・肥満手術後潰瘍・飢餓・コカイン/覚醒剤・Zollingre Ellison症候群・ストレス潰瘍・ステロイド・塩分摂取・アルコール・Bevacizumabによる化学療法などがある。

f:id:tyabu7973:20151011222806j:plain
(本文より引用)


・症状では、典型的な腹膜炎症状を来すのは全体の2/3と言われ、診断の遅れに繋がると言われている。
・重要な鑑別は腹部大動脈瘤破裂、急性膵炎で、どちらも早期認知しないと致死的な疾患である。
・血液検査はほぼ何の役に立たない。抗菌薬投与前に血液培養は採取すべき。
・画像診断は重要で、腹腔内に遊離気腫がある場合に最も考慮すべきが消化性潰瘍の穿孔で、次が憩室穿孔、サルモネラ・チフスなどの腸炎の穿孔である。
腹部CTの感度は非常に高く98%とも報告されている。
・予後規定因子やClinical prediction rulesも作成されているが、十分検証されているとは言えない状況である
来院時に敗血症を期待してる患者が30-35%程度とも言われ、敗血症は死因の最も多い誘因である。
・基本的には外科的手術が必要な疾患だが、半数以上では粘膜の自然治癒により保存的治療で治癒することも報告されている。ただし高齢者では保存的治療の失敗が多いとも言われている。
・保存的治療の内容としては、抗菌薬投与・禁食・経鼻胃管・制酸剤(PPI)を投与し、経口造影剤でリークがなくなったかを確認することが重要になる。

✓ 穿孔性消化性潰瘍については未だ良く分かっていないことも多く、保存的治療は注目されている