栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 腹部に繰り返す有痛性皮疹/大腸癌検診便潜血1回法と2回法/CCP抗体陽性で関節炎なしの患者予後/口腔内外骨腫/侵襲性カンジダ症

■JAMA+α■

腹部に繰り返す有痛性皮疹 Recurrent painful abdominal rash*1

 JAMAのClinical challengeのコーナーです。いつもの通り症例から。
 80歳女性で糖尿病、高血圧、胃潰瘍、腹腔動脈閉塞、TIA既往のある女性が2日前から持続する側腹部の有痛性皮疹を主訴に外来を受診。外傷歴は無く、皮疹が出た近辺に塗布した外用剤などもなし。発熱、全身症状、関節痛、皮膚硬化などの自覚症状は無し。内服薬はメトホルミン・ランソプラゾール・ベンラファキシン・ジルチアゼム・アトルバスタチン・オキシコドン/アセトアミノフェン合剤・ラモプリル・レグラン・ゾルピデム・クロピドグレルだった。
 身体所見では、8cmの弧発性の紅斑局面があり、表面は水疱と中心部のびらん伴った。その他には特記すべき異常所見なし。皮膚生検が施行されたが、確定的な診断には至らなかった。クロベタゾールクリーム塗布で4週間程度で症状は改善し、色素脱落が残る程度まで改善した。
 上記経過の10ヶ月後に再度同部位に中心に潰瘍を伴う7cm程度の有痛性のピンク色皮疹が出現した。特に誘因となりそうなものはなく、再度パンチ生検が施行され、軽度の炎症と皮膚萎縮、上皮の過形成、浮腫、硬化、毛包がないなどの所見が認められた。

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(本文より引用)


 次に何を行いますか?
A. 抗核抗体・抗Scl-70抗体・抗セントロメア抗体提出
B. 詳細な手技に関する病歴聴取
C. 接触アレルギーの原因となりそうなアレルゲンでのパッチテスト
D. VZVの抗体検査
 
 回答はBの詳細な病歴聴取なのですが、診断名は慢性X線透視関連放射線性皮膚炎なんだそうです。最も多いのはCAG関連とのことで、病歴をよくよく再聴取すると、腹腔動脈塞栓症に対するステント留置が為され、その際に透視が使用されていたと。病理結果は典型的な放射線性皮膚炎なのですが、やはり病歴が無いとなかなか診断には辿り着きません。
 多くの患者さんは限定的に質問してあげないとこの辺りの病歴を話してくれません。透視検査に関連した放射線性皮膚炎は、最小1mGy/minから数Gy/minまでかなり幅広い線量で生じることが知られています。急性〜慢性の病態に分かれますが、急性は放射線暴露後7-14日後に起こる事が典型的で、多くは2-5Gy程度の線量被曝があることが一般的です。慢性経過のものは数ヶ月から数年経過してから出現してくることが多く、多くは合計10-15Gyと多くの放射線被曝を受けていることが多いです。どちらにしても疑ったら、具体的な疾患を想起した病歴聴取をしなければ診断には辿り着きません

✓ 放射線皮膚炎はCAGや透視検査などでも起こり得る


大腸癌検診便潜血1回法と2回法 
Attendance and diagnostic yield of repeated two-sample faecal immunochemical test screening for colorectal cancer*2

 今回はちょっと毛色を変えてGutから興味深い報告があったので紹介します。便潜血は日本では二回法で行われていますが、1回法と2回法でどちらがどの程度大腸癌発見率が良いのか?といった基本的なデータも実は十分検証されていないのが現状だと言います。今回のその問題に質の高いエビデンスを提供するためにオランダからRCTが報告されていました。
 論文のPICOは、

P:オランダ南西部に居住する50-74歳の住民からランダム抽出
  除外基準は、余命5年以内、3年以内に大腸検査施行、IBD患者
I:便潜血2回採取し2年後再検
C:便潜血1回採取し2−3年後再検
→両群共に陽性だった場合にはCFへ
O:①検診参加率、②大腸癌
T:RCT/ITT解析
結果:
 初回の2回法の検診参加率 61.3%、1回法の検診参加率 61.5%で差は認めなかった
 2−3年後の2回目の2回法の検診参加率 63.2%、1回法の検診参加率 61.3%でやはり両群に差は認めなかった
 大腸癌の同定率は、1回法で2.6%、2回法で3.0%で両群で有意差は認めなかった

 これだけ見てしまうと、1回法と2回法とそんなに差が無いような気がします。個人的には、2回法の中で、1/2陽性と2/2陽性では明らかに大腸癌発症頻度が異なる印象があるので、一度きちんと調べたいと思っています。そしてなんといっても大腸癌同定率。2-3%程度なんですね。これ、見ちゃうと高齢者でうっかり便潜血やっちゃって入院して必死に下剤のんで・・・っていうのは酷な気がします。もちろん高齢は大腸癌の一つのリスクにはなるので、難しい所ですが・・・

✓ 便潜血1回法と2回法で検診参加率も大腸癌同定率も大きな差は認めなかった


CCP抗体陽性で関節炎なしの患者予後 
Predicting the development of clinical arthritis in anti-CCP positive individuals with non-specific musculoskeletal symptoms: a prospective observational cohort study*3

 こちらはAnnals of Rheumatic diseaseより。BMJの子会社的なジャーナルなんでしょうか。関節リウマチは抗CCP抗体が計測できるようになってから診断が大きく変わった疾患ですが、逆に安易にCCP抗体が測定されるようになり、関節炎のない単なる関節症状で抗CCP抗体陽性という患者さんをどのように扱うかが明確になっていません。そこで、今回、抗CCP抗体陽性で関節炎なしの患者さんがどの様な経過を辿るかを前向き観察研究で調査しています。
 論文のPECOは、

P:18歳以上の新規筋骨格系症状が出現し、かつ抗CCP抗体陽性の患者連続100人
  抗CCP抗体≧3IU/ml、関節炎はなし
E/C:RF抗体、関節圧痛、関節エコー所見
O:1つ以上の関節炎(腫脹・圧痛)
T:前向き観察研究
結果:
 平均51歳、女性 72%、RF陽性 46%、症状平均22ヶ月、CRP 2.9mg/dL、圧痛関節 0.5カ所
 100人のうち50%の50人が平均7.9ヶ月で関節炎を発症し、43人は2010年ACRのRA基準を満たしていた

 ということで、当初は関節リウマチと診断されなくても8ヶ月程度follow upしていると関節リウマチの基準を満たしてくる方が半数はいるということですね。そもそプライマリケア医がどの程度関節痛と関節炎を区別出来るかは甚だ難しいところでもあり、迷った際には専門医の診療を受けてもらうのも一つの手ですね。もちろん検査前確率を考慮して、安易にCCP抗体を測定しないというのも重要なポイントだと思います。

✓ 関節炎のない抗CCP抗体陽性患者は平均8ヶ月後に半数が関節リウマチの基準を満たす

 


■NEJM■

口腔内外骨腫 
Oral maxillary exostosis*4

 画像一発、IMAGEでまた日本からです。歯科の先生みたいですね。

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(本文より引用)

 症例は73歳女性で口渇と舌の疼痛を主訴に外来を受診。口腔内は乾燥し、培養ではCandida albicansが検出された。上顎の診察では、歯槽骨の硬い突起が認められた。骨の良性の過成長である口腔内外骨腫と診断した。本患者では、骨は小児期から存在し、日常生活に支障がでておらず今回偶発的に見つかった所見だった。彼女の訴えた症状は真菌感染であり、治療で改善した。

 うーん、これで載るのか・・・狙っていきたいなあ。そしてこの開口器!写真撮るのに良いですね。

✓ 口腔内外骨腫でNEJM IMAGEに載ります!


侵襲性カンジダ症 
Invasive candidasis*5

 NEJMのカンジダのレビューです。COIばりばりの方が著者ではありますが、まあいつも通り箇条書きでさらっとまとめてみます。
・侵襲性カンジダ症は先進国入院患者で最多の真菌症
・侵襲性カンジダ症にはカンジダ血症、深部カンジダ症が含まれる
・侵襲性カンジダ症の死亡率は治療を受けても40%と高率
・世界的にはNon-albicansや耐性菌の増加が問題になっている
・疫学的には世界中で毎年25万人が罹患し5万人以上が死亡。ICUでは菌血症の原因として4番目に多い。
・侵襲性カンジダ症の主要なリスク因子は、①CV留置、②最近の手術歴(特に腸管リーク)、③広域抗菌薬使用
・侵襲性カンジダ症の中で最も多いのは血流感染
・かつてはCandida albicansが最多だったが最近は全体の半分程度で、non-albicansが増加している
・北欧・アメリカ・カナダでは、Candida glabrata、南欧・アジア・南アメリカではCandida parasilosisが増えている
・病原性も種類によって異なり、Candida parasilosisやCandida kruseiは病原性が弱く死亡率も低い

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(本文より引用)

・リスク因子が同じでも罹患する患者としない患者がおり、おそらく遺伝的に罹患しやすいfacterがある。Toll-like receptor 1-IFNγが疑わしい。遺伝子スクリーニングで予防的抗真菌薬というアプローチも検討されている
・診断には血液・無菌部位からの培養検査。血液培養の感度は21-71%とさほど良くない
βDグルカンは陰性的中率が高い為、陰性であれば否定に使えるかもしれないが、偽陽性は多いので要注意
・死亡率が非常に高いため、本来は高リスク患者に対する適切な予防的治療が確立されるのが理想
・一方でICU患者でルーチンに抗真菌薬を予防投与する事は効果が無いことも分かっている。ただし、腸管リークのある腹部手術後患者では有効という報告も!
・特定の対象群での予防的治療は50%ほど発症を減らしたと言う報告もあるが、生存率改善のデータは示されていない。
・現時点で分かっている予防的治療の適応は、①腸管リーク、②膵臓・肝臓・腸移植、③超低出生体重児などである。
・βDグルカンベースの治療効果は十分証明されていない
・抗真菌薬の選択肢として、①アゾール系、②ポリエン系、③キャンディン系がある。多くはhead to headの研究がなく非劣性試験が中心のため、どの薬剤が最も良いかは判断が難しい
・2007年のNEJMのRCTでは、anidulafunginとFLCZの非劣性RCTで、治療成功率が、anidulafungin 76%、FLCZ 60%ち非劣性だけでなく優越性が証明されてしまった。ただ、これのみで全てキャンディン系で行こうとは言えず、専門家の間でもフルコナゾールでいくかキャンディンでいくかは意見が分かれている
・ただ、その後も2012年の個人データレベルのメタ解析でもエキノファンギン使用がアゾール系・アンホBと比較して30日死亡率を改善したと言う報告あり。また、観察研究でも同様の結果。
・ただし、髄膜炎・視神経炎・UTIにはアゾール系が推奨
・現状で治療期間や経口薬へのスイッチはどうしたら良いか悩ましいが、エキノファンギン5日点滴+感受性のある経口アゾール系へ変更が良いか
・耐性は抗真菌薬の使用と関連。FLCZ導入でCandida glabrata増加、エキノファンギン導入でCandida parapsilosis増加、更にはCandida glabrataのエキノファンギン耐性も問題になりつつある。

✓ 侵襲性カンジダ症の疫学、診断、治療について押さえておこう