栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:下痢型IBS患者でのセリアック病の評価/高齢者の抗けいれん薬治療/AIDs患者でのクリプトコッカス髄膜炎の治療

MKSAPまとめなり。
今週はオンタイムを目指します。

下痢型IBS患者でのセリアック病の評価 
Evaluate for celiac disease in patient with diarrhea-predominant irritable bowel syndrome

❶症例 
  42歳女性が、8ヶ月前からの腹疝痛と1日に3回ほどの腹部蠕動低下を主訴に外来を受診された。腹痛は腹部蠕動によって改善する。夜間の腹部蠕動は無く、血便や黒色便は認めない。発熱、寝汗、体重減少はなく、橋本病の既往があり、レボチロキシンを内服している。
 身体所見では、体温 36.8℃、BP 128/84mmHg、Pulse 64bpm、RR 16/min、BMI 23だった。皮疹なし。軽度の腹部全般の圧痛はあるが、腹膜刺激症状なく、腹部腫瘤無し。直腸診は正常で、血算・TSH値は正常だった。

 この患者の次に行うべき最も適切な管理は?
A. 細菌異常増殖の確認のための呼気テスト
B. 大腸内視鏡とランダム生検
C. 便培養
D. 抗tTG抗体

 ❷セリアック病
 本患者は、抗tTG抗体を測定すべきである。アメリカ消化器学会は下痢型IBSや混合型IBS患者に対してルーチンでの抗tTG抗体検査を推奨している。更に、セリアック病と他の自己免疫疾患の合併はよく知られており、1型糖尿病や自己免疫性甲状腺疾患が有名である。

❸その他の疾患
small bowel bacterial overgrowth:IBSの原因としてsmall bowel bacterial overgrowthを関連しているというエビデンスがあるが、呼気テストでこの病態があるかを調べることが適切かはエビデンスが不十分である

顕微鏡的腸炎下痢型IBS患者の約2%が、顕微鏡的腸炎だったと言われている。夜間の下痢、大量の下痢、浸透圧Gapが50mOsm/kg以下の便では、顕微鏡的腸炎を考慮する。これらの特徴がある場合には、大腸内視鏡検査やランダム生検が適応になるが、可能性は低い。

検査の適応:IBS患者で警告症状が無い場合には、ルーチンの便培養は不要である。同様に、赤沈やTSHも検査価値は低い。採血、尿検査、大腸内視鏡検査を受けるべき適応は、50歳以上、症状経過が短い、体重減少あり、夜間の症状あり、大腸癌の家族歴、直腸出血、直近の抗菌薬使用などである。

Key Point
✓ アメリカ消化器学会は、下痢型IBS・混合型IBS患者にセリアック病の抗体検査をルーチンで勧めている

Ford AC, Chey WD, Talley NJ, Malhotra A, Spiegel BM, Moayyedi P. Yield of diagnostic tests for celiac disease in individuals with symptoms suggestive of irritable bowel syndrome: systematic review and meta-analysis. Arch Intern Med. 2009;169(7):651-658. PMID: 19364994

 

 

高齢者の抗けいれん薬治療
Treat a patient older than 60 years with the appropriate antiepileptic drug

❶症例
  65歳男性が、新患として外来受診。彼は左頭頂葉脳卒中の既往があり、右上腕の焼けるような感覚と注意障害、自動症などが症状として出現する複雑部分発作の既往がある。患者は右利きで、内服薬はアスピリンのみ。
  身体所見では、バイタルサインは正常。右下4分の1半盲と右顔面と腕の感覚低下を認めている。
 検査結果では、血算・一般的な生化学検査は正常だった。CT検査では左頭頂葉に陳旧性梗塞巣を認めた。

本患者で投与すべき最も適切な薬剤はどれか?
A. カルバマゼピンテグレトールⓇ)
B. ラモトリギン(ラミクタールⓇ)
C. オキシカルバゼピン(本邦未発売)
D. フェニトイン(アレビアチンⓇ)

 ❷高齢者の複雑部分発作
  本患者では高齢でもあり、ラモトリギンで治療すべきである。痙攣描写、身体所見、頭部画像検査の結果からは複雑部分発作が最も疑われる。抗痙攣薬(AEDs)は、患者群によっては十分効果が出ずに、副作用が前面に出てしまうことがあり、その場合には処方しにくい。初回AEDs処方された患者の約5%が重篤な有害反応を理由に使用を中止しており、更に15%は致死的では無い副作用(鎮静・気分障害・体重増加)などを理由に使用を中止している。ラモトリギンは、高齢者の部分・全般化てんかんの第一選択であり、忍容性も良好な薬剤である。有効血中濃度を保って、最大の効力が発揮できるのが特徴である。

 ❸他の治療選択肢
カルバマゼピン・オキシカルバゼピン・フェニトイン:それぞれ部分発作の第一選択だが、高齢者での忍容性は不十分である。よくある有害事象は、めまい、無気力、歩行障害などである。これら3薬剤は肝代謝であり、元々患者が内服している薬剤との相互作用にも注意が必要である。カルバマゼピンとオキシカルバゼピンは、高齢者では特に低ナトリウムを来しやすいので注意が必要。

Key Point
✓ ラモトリギンは、部分・全般化痙攣の第一選択薬として、忍容性良好で有効性も最も良い抗けいれん薬である。

Arif H, Buchsbaum R, Pierro J, et al. Comparative effectiveness of 10 antiepileptic drugs in older adults with epilepsy. Arch Neurol. 2010;67(4):408-415. PMID: 20385905

 

AIDs患者でのクリプトコッカス髄膜炎の治療
Treat cryptococcal meningitis in a patient with AIDS

❶症例

  42歳男性が、2週間前からの頭痛と発熱、1週間前からの皮膚症状を主訴に病院を受診された。5年前にAIDSと診断されたが、抗ウイルス治療を受けていなかった。内服薬はST合剤のみだった。

 身体所見では、体温 38.0℃で、皮膚所見は以下だった。その他の身体所見は正常だった。

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(MKSAPより引用)
 血清クリプトコッカス抗原は陽性で1:1024だった。血液培養からは出芽酵母が検出されている。脳脊髄液の初圧は 220mmHgと高値で、CSFクリプトコッカス抗原と培養結果は現在結果待ちである。CSFのグラム染色は正常。

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(MKSAPより引用)
 血清糖は100mg/dL、CT検査は正常だった。

 本患者の最も適切な初期治療はどれか?
A. アンホテリシンB+フルシトシン
B. カスポファンギン
C. フルコナゾール
D. イトラコナゾール

 ❷クリプトコッカス髄膜炎
 本患者では、アンホテリシンBとフルシトシンで治療すべきである。患者はAIDSを合併しており、髄膜炎を合併した播種性クリプトコッカス症であろう。頭痛と意識障害が最も多い症状であり、皮膚所見は軟属腫に似ており、播種性クリプトコッカス症に特徴的な所見である。CSF結果では、白血球増多なしはAIDSに伴うクリプトコッカス髄膜炎として矛盾しない所見である。
 髄液圧をコントロールすることは、クリプトコッカス髄膜脳炎の治療が成功するために非常に重要である。髄液圧が250mmHg以上で頭蓋内圧亢進症状がある場合には、髄液は積極的にドレナージすべきである。
 HIV感染者の髄膜脳炎治療は、寛解導入、②統合、③維持療法の3つの時期が重要である。寛解導入治療には、正常腎機能であればアンホテリシンBとフルシトシンの併用を少なくとも2週間は継続すべきである。その後、経口フルコナゾールを最低8週間使用する。アンホテリシンBのリボソーマル製剤は、腎機能障害患者の場合に仕様を検討する。

 ❸その他の選択肢
 エキノキャンディンカスポファンギン(カンサイダスⓇ)などのエキノキャンディン系は、クリプトコッカスに対する抗菌活性がないこと、脳脊髄液への移行性が悪いため、クリプトコッカス髄膜脳炎では役に立たない。

患者では典型的にはエストロゲン値は十分あるが無排卵周期であることが無月経の原因であり、プロゲステロン試験で消退出血を来す。
 フルコナゾール・イトラコナゾール
寛解導入には、アンホテリシンB+フルコナゾール以外では、高用量フルコナゾール+フルシトシン、高用量フルシトシンのみ、イトラコナゾールのみがあるが、イトラコナゾールは髄液移行性が乏しいため推奨されない。

Key Point
✓ アンホテリシンBとフルシトシンはAIDS患者のクリプトコッカス髄膜炎治療ではよく用いられる

Perfect JR, Dismukes WE, Dromer F, et al. Clinical practice guidelines for the management of cryptococcal diseases: 2010 update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2010;50(3):291-322. PMID: 20047480

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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