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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

デスカンファ:看取り文化の継承

 デスカンファエントリー。デスカンファを毎月行っています。今回は、病院も診療所も関わって最終的には自宅で看取った患者さんでした。

 80代の認知症のある女性の方でした。夫と死別し長年独居で生活していましたが、認知症が進行してきたため、息子さん家族と同居するようになりました。介護・医療系のスタッフが関わりだしたのもこの頃から。本人は多くを語らず、静かに頷いていることが多い方で、本人の意向の確認はできないまま時間だけが過ぎて行っています。

 病状が悪化する中で、入退院を繰り返すようになりますが、経口摂取困難な際の栄養投与についてや延命措置に対する意向は最期まで本人には確認することが出来ませんでした。
 
 ご家族と相談する中で、一度は急性期病院での治療を選択され、それによって病状が回復するというプロセスを経て、最終的には自宅に戻られ、自宅で最期を迎えました。

(一部プライバシーの観点から内容を変更しています。)

  多くの関わりを持ったスタッフが意見を出し合う中で、「本人の意向はどうだったんだろうか?」という意見が出てきました。本人にとって、本当に自宅が良かったのか?病院でも良かったのではないか?結局のところ答えは分かりませんでした。デスカンファを通して分かったのは、もともと薬も病院も嫌いだったこと、脳梗塞後遺症の夫を10年介護したことでした。こういった過去の思いはなかなか急性期病院のケア中には気付きにくいものです。ご家族を通して積極的に患者さんの歴史を聞き取る努力が必要だなと改めて感じました。

 ご家族は自宅に帰ることを不安に思っていました。家族は、病院の主治医からの病状説明の前に、何度かケアマネ・訪問診療の主治医に相談に出かけています。相談する相手がいたのは良かったですが、本人の希望もはっきりとは分からない中で、経験もない在宅での看取りを選択したのは、本当に不安だったろうにと思います。自宅で主に診てくれた方は孫娘さんでした。

 看取りが終わった後にご家族から、「家に帰って来れて良かった」「孫達にとってとても良い経験が出来ました」とのお言葉が。看取りの文化が次世代へと受け継がれたという意味で、ご本人が残したモノは大きかったなと感じました。

 私達医療者の自己満足のための在宅であってはならないですよね。でも、自宅で過ごしたからこそ見える景色がそこにはあるのだと思います。無理強いはしないけど、次世代への看取り文化の継承。大事な最期の仕事を果たした患者さんに心から拍手を送りたいと思います。

恋ちゃんはじめての看取り―おおばあちゃんの死と向きあう (いのちつぐ「みとりびと」)