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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:スタチンチョイス/血性心嚢液の鑑別/脾膿瘍

カンファ 循環器 診断 薬剤 医師患者関係 EBM 感染症 消化器

今週のカンファまとめです。
忙しさの波は少し越えたので良い感じ。
来週夏休みの方々いってらっさーい。

スタチンチョイス Statin Choice

 Mayo Clinicから面白い試みが。これは患者さんとスタチンを新規に始めるか否かを相談するときに使用することが可能なサイトです。題して"Statin Choice"。非常に簡単に利用出来るので、是非利用してみて下さい。視覚的に訴えることの重要性を示しています。

Statin Choice Decision Aid - Site


 簡単に解説しますが、まずはCurrent riskのところで、現在の患者さんの状態を入力していきます。心血管リスクの見積もり方法として、ACC/AHA ASCVDとFramingham、Raynoldsが選べます。日本人のデータではないのが外挿難しい部分ではありますが、日本人よりも圧倒的にリスクの高い人と理解すれば、使用可能だと思います。
 
 例えば、Framinghamも用いて、65歳女性の脂質が少し高い(T-Cho 240)の方を見てみましょう。

f:id:tyabu7973:20151021224127j:plain(Statin Choiceより)

 こんな感じで視覚的に10年後リスクとスタチンの効果を見ることが出来ます。10年後に6人心筋梗塞になるところを、1人減らせるのがスタチンの効果ということになりますね。患者さんと眺めていますが、概ね好評です。

 ✓ Statin Choiceはスタチンを投与するかを患者さんと相談するときに視覚的に利用出来る

 

 

血性心嚢液の鑑別 DDx of hemorrhagic pericardial effusion

 血性心嚢液は忘れた頃にやってきますが、通常はかなり重篤な病態が隠れていることが多いですよね。鑑別の王様はとにかく悪性腫瘍で、個人的には肺癌からの浸潤と悪性リンパ腫の経験があります。

 鑑別何があるかな?というところで米国の96症例の血性心嚢液でタンポ合併、心嚢穿刺必要症例での検討では、原疾患は以下の様でした。

悪性腫瘍 26%
②経皮的手技合併症 18%
③心膜切開後症候群 13%

心筋梗塞合併症(心破裂・血栓溶解) 11%
⑤特発性 10%
⑥尿毒症 7%
⑦大動脈解離 4%
⑧外傷 3%
⑨その他 8%

 Chest. 1999;116(6):1564.

 ただ、この疫学データにはウイルス性のものや結核が全く含まれておらず、実際には感染症の鑑別を挙げておく必要があります。感染症で他に考慮するとすればトキソプラズマでしょうか。

 また、急性心膜炎の治療として用いられるNSAIDsやアスピリンなどの抗血小板薬が血性心嚢液を来す事は理論的にあり得ます。同様の機序は血友病などの血液疾患もあり得ます。更には膠原病や外傷なども考慮が必要です。

 悪性腫瘍の場合、心転移が多いものとしては、肺癌以外に、乳癌・胃癌・悪性黒色腫悪性リンパ腫白血病の報告があります。また、胸膜(心膜)中皮腫も忘れてはいけない鑑別です。

 ✓ 血性心嚢液を見た場合の鑑別は、悪性腫瘍感染症・手技合併症

 

 

脾膿瘍 Spleen abscess

 脾膿瘍は稀な感染症でごく稀にしか遭遇しません。通常は感染性心内膜炎に合併することが多い様ですが、感染性心内膜炎側から見ると27/564人(4.8%)だったという報告があるみたいです。他には、大腸疾患・左腎・膵などの感染症からの炎症波及外傷、悪性腫瘍に伴う合併症などが報告されています。中には脾梗塞から膿瘍かする場合も報告されています。

 起因菌はブドウ球菌や連鎖球菌、グラム陰性桿菌などが多いと言われ、嫌気性菌や真菌の報告もありますが、起因菌不明も全体の20%程度あると言われています。また、稀なモノで言うと結核性も報告されていますし、鑑別としてT細胞性リンパ腫も考えるべきです。

 治療は抗菌薬単独で治療出来たというものもありますが、経皮的ドレナージや外科的手術が必要になる事が多いです。
 

 ✓ 脾膿瘍について押さえておこう