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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 無痛性後腹膜腫瘍による水腎・胆管閉塞/ミネルバ/2型糖尿病の許可システム再考を/人工心臓移植/透析患者のHCVに対するインターフェロンフリー

BMJ Lancet 論文 消化器 整形 EBM 内分泌 薬剤 心臓血管外科 感染症

BMJ

無痛性後腹膜腫瘍による水腎・胆管閉塞 
A case of a large, painless retroperitoneal mass causing hydronehrosis and bilary obstruction*1

 厳密にはBMJではないのですが、一年発起して定期的に自分も症例報告を読んでいこう!ということでBMJ case reportをざっと眺めてみることにしました。

 症例は56歳男性、主訴腹部膨満、数ヶ月前から緩徐に症状を自覚。一般採血では異常所見なく、腹部診察では腹部は全般的に硬く腫脹していた。精査目的に腹部CTが施行され、右側腹部に造影されない嚢胞状の巨大腫瘤あり。右腸腰筋から派生した様にみえ、右尿管圧排による水腎症を認めていた。MRIでは、T2高信号の後腹膜腫瘍を認め、T1脂肪抑制で低信号。内部の隔壁は軽度造影効果を認めた。また総胆管も圧排されていた。最終的に外科的切除が為され、内部にゼラチン状の物質を認め、病理診断は粘液型脂肪肉腫だった。

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(本文より引用)

 粘液型脂肪肉腫は、軟部組織肉腫としては、高分化脂肪肉腫の次に頻度が高い。通常のMRIでは脂肪の信号強度が小さく、造影なしでは嚢胞性病変との鑑別が困難ガドリニウム造影MRIが重要。粘液型脂肪肉腫は局所再発50%、遠隔転移20%と予後が悪い。

✓ 後腹膜の囊胞性腫瘤を認めたら粘液型脂肪肉腫も鑑別に造影MRI


ミネルバ 
MINERVA*2

 久々のおもしろ論文コーナーミネルバ。見開き一頁に10個弱の論文のショートサマリーが載っています。皆様も興味があれば是非少し読んでみて下さい。

 そんな中で今回は台湾の保険医療制度の話が取り上げられていました。台湾では約20年前の1997年頃から、保険データと診療録の内容が完全にリンクできるようなシステムを作り上げたのだそうです。このおかげで台湾では国民全体の実に99%をカバーする保険データと電子カルテデータがデータベースとして構築されています。確かに、去年紹介した末期腎不全に対するACE/ARBの効果

tyabu7973.hatenablog.com

も、最近報告されたニューキノロンと大動脈解離(JAMA Internal Medicine 2015,5389)アミオダロンと視神経萎縮(Ophthalmology 2015,08.022)もその賜物です。やはりきちんとしたデータベース構築が鍵で、最近の観察研究はほぼこの形式で北欧を中心に論文が量産されています。これは国策として重要な事ですよね。

 米国は1776年、アメリカ独立宣言で幸福の追求を掲げています。今回Social Science and Medicineには、この幸福の追求に成功した人ほど長生きだったという報告が出ています。この観察研究では、very happy、happy、not happyと答えたそれぞれの群同士で比較すると、very happyの人が最も長生きで、happy群よりも6%、not happy群よりも14%長生きだったのだとか。幸せとは本人の自覚なので、幸せに暮らす(色々な意味で)のは健康に良い模様ですね。

✓ 台湾の今後の論文ラッシュに注目!幸せに暮らすと長生きする


2型糖尿病薬の許可システム再考を 
Rethinking the appraisal and approval of drugs for type 2 diabetes*3

 糖尿病薬に対するBMJらしい意見です。現在の新薬認可システムは十分機能していないと筆者は指摘しています。というのもリアルワールドできちんと効果のある薬が十分選択されていないためです。例えば・・・ということで糖尿病薬が例に挙げられています。糖尿病に対する薬剤は現在30種類以上が認可されているのですが、実際には長期の効果や害が十分検証されないまま処方認可されています。また、昨今の「早く認可して使えるようにしろ」というプレッシャーも多そうです。

 2008年以降FDAは、糖尿病約では心血管リスクを全て評価するように義務づけています。ただこの基準が微妙で、95%信頼区間で上限が心血管リスク1.3倍までは許容しましょうとのこと。これってむしろ心血管リスクが増えるものまで許容になってますけど??ということで、微妙なところです。FDAはそれ以外にも市販後調査を十分勧められていないのも問題となっています。
 
 まあ、基本的にはその通り!という感じ。ただ、そこまで厳密に定義すると、糖尿病薬の多くは販売中心になっちゃいますよね。まあ、認可は百歩譲って仕方ないとして、薬を処方する側の医師は最低限、その効果が心血管イベントにどの程度あるのかをよく知って、薬剤選択することが必要です。

✓ 洋の東西問わず、薬剤の認可根拠は検証不十分である

 



■Lancet■

人工心臓移植 
First clinical use of a bioprosthetic total artificial heart: report of two cases*4

 人工臓器の技術は革新していますが、今回はついに心臓の人工臓器です。1969年にCooleyさんたちが機械的心臓をブリッジに用いて39時間生命時間を延長した症例を報告しました。さらに1986年にはCopelandさん達が別の人工心臓をブリッジとして使用しています。これまでの人工心臓技術の大きな問題点は、血栓ができてしまうという問題でした。今回はそれを改善すべく、bioprostheticな人工心臓を人工弁知識を利用して作成しました。

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(本文より引用)


 今回は、その人工心臓を心臓移植が必要だが、不可能な2症例に植え込んだ症例報告になります。症例1は76歳男性でEF 20%の両心不全でした。最終診断は拡張型心不全。心房細動や脂質異常、2型糖尿病、CKD、慢性気管支炎などを合併。2011年にはICD植え込みが為されています。2013年12月に紹介となり上記人工デバイスを移植。手術は成功しましたが、day23に心タンポ、day74にデバイス機能不全で亡くなっています。血栓はありません。

 症例2は、68歳男性で両心不全の終末期で、やはり拡張型心不全。EF 15%と高度の左室収縮能の低下を認めました。心臓再同期療法+内服治療で症状コントロールできず。2014年7月に心原性ショックで入院。デバイス移植。day 45に心嚢液が出現し、day150に自宅退院。day 276に低心拍出性ショックで再手術・多臓器不全で亡くなっています。血栓なし。

 というわけで、人工心臓の技術は進歩しています。現在は症例3が経過進行中でday104でリハビリ中とのこと。今後、こういった技術革新が臨床現場で応用される可能性が出てくるかもしれませんね。

✓ 心臓そのものの人工デバイスが臨床応用段階になっている


透析患者のHCVに対するインターフェロンフリー 
Grazoprevir plus elbasvir in treatment-naive and treatment-experienced patients with hepatitis C virus genotype 1 infection and stage 4-5 chronic kidney disease(the C-SURFER study): a combination phase 3 study*5

 HCV若干お腹いっぱい感はありますが、通常のHCV感染症の効果は十分なので、合併症有りの患者さんへの臨床応用を検討した研究が報告されつつあります。今回は透析患者に対する治療を検討したRCTが報告されています。
 論文のPICOは、

P:eGFR<30もしくは透析中のCKD Stage 4-5のtype 1HCV患者
I:Grazoprevir + elbasvir1日1回 12週投与群
C:プラセボ 12週投与群
→16週経過時点でプラセボ群も投与可能として観察研究を追加している
O:①12週時点での安全性、②SVR 12週(過去の観察研究と比較:IFNではSVR 12 45%)
T:RCT/ITT解析→その後観察研究
結果:
 平均56歳、アジア6%(韓国含む)、type 1a 52%、LC 6%、初回治療 80%、透析患者 76%
 224人がランダムに介入群111人、プラセボ群113人に割り付け。更に11例で血中濃度モニタリング
 介入群では副作用による中止はいなかった。副作用は頭痛、嘔気、倦怠感、不眠、めまい、下痢など
 SVR12は、介入群で115/116例で99.1%だった。

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(本文より引用)

透析患者でも問題は無いわけですね。すごいんですよね、確かに、凄いんですけどね・・・これまたもの凄いお金でしょうし。薬名もまた違うし。新規開発されたのかあ・・・と思うわけです。

✓ 透析患者でもインターフェロンフリー療法の効果は絶大です・・・