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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:気管軟化症/壊死性肺炎/ASVモード

カンファ 呼吸器 感染症 耳鼻 集中治療 循環器

今週のカンファまとめです。
夏休み者多い中ようがんばりました、我ら。
来週はもう少し楽かなあ、きっと・・・

気管軟化症 Tracheobronchomalacia

 気管軟化症は主に小児の疾患と思われがちですが、成人でも見られることが分かってきています。病変の部位によって喉頭軟化症・気管軟化症・気管支軟化症と分類されます。

 私達が診ることが多いのは後天性で、中年〜高齢者で発症する続発性があります。原因となる病態は多数あり、列挙してみると

①外傷後
 挿管後、気管切開後、胸部外傷後、肺移植後
肺気腫
 慢性炎症/気管支炎
③慢性炎症性疾患
 再発性多発軟骨炎
④慢性胸腔外圧迫
 悪性腫瘍良性腫瘍、囊胞、膿瘍、大動脈瘤
⑤小児期に未診断

と様々ですねえ。Uptodateには自然歴についての観察研究結果が掲載されていて、94人の気管気管支軟化症患者を気管支鏡で5.2年間follow upした研究では、多くの患者では狭窄が進行し、数人はそのまま、改善した患者はいなかった様です。

 診断は気管支鏡で狭窄気管を確認するのがゴールドスタンダードですが、胸部CTでも診断精度は97%と高い事が知られていて、吸気・呼気でのCTで50%以上の虚脱がある場合に診断するとされています。

http://i.ytimg.com/vi/vunD1nyDhT4/maxresdefault.jpg

http://i.ytimg.com/vi/vunD1nyDhT4/maxresdefault.jpgより引用)

 治療は無症候性患者には通常不要。選択肢としてはステント・外科的修復・気管切除・陽圧換気などがあります。陽圧換気は、急性期の病態の場合には用いられることも多く、当初は持続的CPAPで開始して、夜間のみなどの間欠的CPAPに移行していく模様です。まあ、まだまだ確立された治療とは言えませんが・・・

 ✓ 高齢者での気管・気管支軟化症は呼吸不全の鑑別のpitfall

 

 

壊死性肺炎 Necrotizing pneumonia

 壊死性肺炎を引き起こす起因微生物として有名なのは、黄色ブドウ球菌や肺炎球菌、肺炎桿菌などですよね。やっかいな空洞形成を来す重症肺炎がこの部類に入ってくると思います。

 この中で黄色ブドウ球菌が肺炎の起因菌になる事は稀で、通常喀痰培養から検出されても治療対象とすることは少ないです。ただ、一度発症すると非常に死亡率が高いことが知られており、特にPanton-Valentine-Leukocidin(PVL)産生の場合には死亡率が75%を越えるとも言われています。

 黄色ブドウ球菌性肺炎のリスクとしてインフルエンザなどのウイルス感染後右心系心内膜炎などによる敗血症性塞栓などが鑑別に挙げられます。

http://chestatlas.com/gallery/d/3244-2/necrotizing_pneumonia.jpg

http://chestatlas.com/gallery/d/3244-2/necrotizing_pneumonia.jpgより引用)

 ✓ 黄色ブドウ球菌による壊死性肺炎に要注意!

 

 

ASVモード ASV mode

 以前、論文まとめでも紹介したASVAdaptive Servo Ventilationの略で、心不全領域で使用されつつありますが、先日のNEJMでは心不全の中枢性睡眠時無呼吸へは効果がないと報告されていました。

tyabu7973.hatenablog.com


 ASVモードは、通常のBiPAPと異なり、自発呼吸の減衰に対して自動的に目標換気量を設定して、1呼吸毎に適正補助圧を設定して供給してくれるモードです。また、CPAPは自発呼吸が無ければトリガーが係らないのに対して、ASVは全く呼吸が無くてもバックアップ換気が働いて強制的に呼吸を送り出してくれますASV専用機を用いると自宅で継続使用することも可能です。実臨床ではCheyne-Stokes呼吸の際に使用されることが多い様です。
 
 何だか凄そうですが、問題は実際の効果と費用でしょうか。サロゲートマーカーの改善報告は多いのですが、今回のNEJMの報告も含めて真のアウトカムを改善した報告はまだまだ不十分です。また、ASV専用機械は、帝人/フィリップス・レスピロニクス/フクダライフテックの3者から提供されているのだそうで。人工呼吸器扱いなので、医療保険上の自己負担が3割負担で28000円です。呼吸器の値段だけでこれですから、安易に導入は出来ないですね。色々考えさせられるデバイスです。

 ✓ ASVモードは心不全患者に用いられる換気モードでCPAPに替わって期待されつつある