栃木県の総合内科医のブログ

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論文:脳梗塞と脳出血の頻度は季節によって違う

脳梗塞脳出血の頻度は季節によって違う
Higher ratio of ischemic stroke to hemorrhagic stroke in summer

Acta Neurol Scand 2015: 132: 423–429 DOI: 10.1111/ane.12412

【背景】
 本研究の目的は脳出血脳梗塞の季節による比の違いを調査する事である。仮説では季節によって比率が異なるだろう。
【方法】
 1999-2009年の間に合計13788人の京都脳卒中レジストリーに登録された脳卒中患者が季節によって4群に割り付けられた。脳卒中全体・脳梗塞脳出血くも膜下出血発生率を、夏をreferenceとしたときの春・秋・冬オッズ比で算出した。ロジスティック解析を用いて、年齢・性別・他の危険因子を調整して、季節毎の脳出血/脳梗塞比やくも膜下出血/脳梗塞比を算出した。
【結果】
 ・脳梗塞は、夏と比較して秋が有意に少なくOR 0.93(0.87-0.98)だった。
 ・脳出血は、夏と比較して春 OR 1.36(1.23-1.49)、秋 OR 1.16(1.05-1.28)、冬 OR 1.37(1.25-1.51)と有意に多かった
 ・くも膜下出血は、夏と比較して春 OR 1.51(1.28-1.79)、冬 OR 1.44(1.22-1.70)と有意に多かった
 脳出血/脳梗塞比は、夏と比較して春 OR 1.28(1.13-1.45)、秋 OR 1.26(1.11-1.43)、冬 OR 1.35(1.19-1.53)と有意に多かった。
 くも膜下出血/脳梗塞比、夏と比較して春 OR 1.46(1.19-1.79)、秋 OR 1.34(1.09-1.66)、冬 OR 1.50(1.22-1.84)と有意に多かった。

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(本文より引用)

【結論】
 脳卒中のタイプによって季節性の変化が異なった。 脳出血/脳梗塞比やくも膜下出血/脳梗塞比は夏が最も低かった。

【批判的吟味】
・四季のある日本ならではの研究です。
・いつも通り論文のPECOから
P:京都脳卒中レジストリーに登録された脳卒中患者
E/C:春・夏・秋・冬
O:脳卒中全体・脳梗塞脳出血くも膜下出血等の発症頻度
T:後ろ向き観察研究
・診断の根拠はCT/MRIによって行われており、一地域の脳卒中データをかなり包括しているデータです。分類方法はWHO分類に基づいて行われています。・
・ちなみに、春(3-5月)、夏(6-8月)、秋(9-11月)、冬(12-2月)。
・日本人の疫学を語る上で重要なデータです。
・なぜ季節によって違うのかという根本的な問いへの答えが不明。夏は脱水が多いからでは無いか?と仮説が為されていますが、十分検証されていません。
・気温との関連を言うのであれば季節ではなくデータを日にち解析にしてその日の気温と比較するのも興味深いかもしれません。

【個人的な意見】
 なんとなく昔から冬になると脳梗塞が多いという漠然とした感覚はありましたが、意外と脳梗塞は通年変わらずということが分かりました。出血やくも膜下出血は夏は少ないんですねえ。勉強になりました。

✓ 脳卒中はサブタイプによって季節性発症頻度の違いがある