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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:AIM & NEJM  2型糖尿病へのメトホルミンへの追加治療の効果/心血管リスクの高い2型糖尿病患者にワイン/市中肺炎/人工膝関節置換術の効果/強皮症と巨大十二指腸

■AIM■

2型糖尿病へのメトホルミンへの追加治療の効果 DPP-4阻害剤 vs SU剤
Effects on clinical outcomes of adding dipeptidyl peptidase-4 inhibitors versus sulfonylureas to metformin therapy in patients with type 2 diabetes mellitus*1

 2型糖尿病に対する第一選択は今のところメトホルミンであることは揺るぎないとは思いますが、第2選択を何にするか?という話題に1つのエビデンスです。今回は、台湾の国民レベルのデータから、メトホルミン治療中の2型糖尿病患者にDPP-4阻害剤とSU剤どちらを加えるのが臨床アウトカムが改善したかを検証した大規模観察研究です。
 論文のPECOは、

P:メトホルミンで治療中の2型糖尿病患者10089人
E:DPP-4阻害剤追加
C:SU剤追加
O:プライマリ:全死亡、心血管イベント(脳卒中心筋梗塞)、副作用アウトカム:心不全入院・低血糖
T:後ろ向き観察研究
結果
 平均57際、男性 54%、平均3.3年follow up
 DPP-4追加群とSU追加群をプロペンシティーマッチスコアでリスク調整して比較
 プライマリアウトカム:
 ①全死亡はDPP-4阻害薬追加群で366件、SU剤追加群で488件で有意にDPP-4阻害薬追加群が少なかった。HR 0.63(0.55-0.72)
 ②心血管イベント(脳卒中心筋梗塞)はDPP-4阻害薬追加群で209件、SU剤追加群で282件で有意にDPP-4阻害薬追加群が少なかった。HR 0.68(0.55-0.83)

f:id:tyabu7973:20151101002706j:plain
(本文より引用)


 副作用アウトカム: 
 ①心不全入院はDPP-4阻害薬追加群で100件、SU剤追加群で100件で有意差なし。HR 0.78(0.57-1.06)
 ②低血糖はDPP-4阻害薬追加群で89件、SU剤追加群で170件で有意にDPP-4阻害薬追加群が少なかった。HR 0.43(0.33-0.56)

 同じアジア人の国民レベルの後ろ向き観察研究でプロペンシティマッチスコアを用いた10000人規模の大規模研究で、DPP-4阻害薬のSU剤に対する優越性が示された形です。もちろん、後ろ向きですから処方バイアスは入っており、比較的軽症の方にDPP-4が入っている可能性があります。その他様々な交絡因子がありそうです。また、follow up期間も3年程度ですからまだまだ長期データが必要です。どちらにしても、そろそろこのテーマは大規模RCTが待たれる所ですが、ここにSGLT-2が割り込んでくるのでしょうか・・・
 
✓ メトホルミン単剤治療中の2型糖尿病患者さんに対してDPP-4阻害剤がSU剤と比較して臨床アウトカムを改善するという観察研究がある


心血管リスクの高い2型糖尿病患者にワイン 
Effects of initiating moderate alcohol intake on cardiometabolic risk in adults with type 2 diabetes*2

 ワインあまり飲まないのですが・・・(笑)。とりあえずこういったネタ好きですよね。ただ、実は過去の観察研究の結果では、健常人ではワインを飲んでいる人の方が心血管イベントや死亡が少なく、HDL高くなる事が分かっているんだそうです。で、今回は心血管イベントのリスクの高い2型糖尿病患者さんにワインを飲んでもらったらどうなるかを検証したRCTです。
 論文のPICOは、

P:もともと飲酒習慣の無いコントロール良好な2型糖尿病患者
I/C:夕食に①ミネラルウォーター、②白ワイン 150ml、③赤ワイン 150ml +全群地中海食
O:脂質・血糖評価
T:RCT
結果:
 平均60歳、BMI 30、男性 70%、血圧137mmHg、腹囲 104cm、HbA1c 6.9%
プライマリアウトカム:ベースラインとの比較
 ①HDL値   ミネラルウォーター  1.70mg/dL、白ワイン 0.66mg/dL、赤ワイン 3.6mg/dL
 ②アポリポ蛋白(a) ミネラルウォーター 0.03、白ワイン 0.02、赤ワイン 0.06
 ③空腹時血糖 ミネラルウォーター 10.30mg/dL、白ワイン -7.1mg/dL、赤ワイン 4.0mg/dL

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(本文より引用)

 結果として、赤ワインはHDL値を上昇させ、白ワインが血糖値を低下させています。まあ、この結果がどの程度実臨床や実際のアウトカムに影響を与えるか?ときかれるとかなり微妙なところです。同時にADHというアルコール分解酵素酵素活性も調べています。
 まあ、でもこんなデータでワインを飲むか飲まないかなんて決めないかもしれませんね。実際にはかなり太った方々のデータなので目の前の患者さんに応用出来るかといわれると結構微妙な感じです

✓ 赤ワインを定期的に毎日飲酒することでHDL値が上昇した


市中肺炎 in the clinic 
Community-acquired pneumonia*3

 in the clinicは、AIMの特集である疾患のレビュー的なものになります。日本語でも竹本先生が翻訳されたものがあります。AIMを読み始めたので時折紹介していこうかと思います。他のレビューとちょっと違うのは患者説明が入っていることでしょうか。今月のテーマは市中肺炎でした。

■はじめに■
 市中肺炎(CAP)は、軽症の外来治療可能な患者さんから集中治療が必要な入院患者さんまで非常に重症度が多岐に渡る疾患群。米国では65歳以上の高齢者の感染症死因の第1位。重要なのは適切な認知と治療、効果的な予防方法である。医療関連肺炎(HCAP)の位置付けは難しく市中肺炎とも院内肺炎とも言い難い。
 
■予防:Prevention■
 ①CAPリスクが高いのは?
 ・合併症の多い患者や高齢者は肺炎リスクが高い。
 ・米国の調査では肺炎の入院患者は57%が65歳以上。
 ・合併症としては、COPD・心疾患・糖尿病・慢性肝疾患・HIV感染などのリスクが高い。
 ・喫煙・飲酒は重症化し侵襲性肺炎球菌感染のリスク
 ②誰がいつ肺炎球菌ワクチンを打つべきか?
 ・65歳以上の高齢者では肺炎球菌ワクチンを受けるべき
 ・他のリスクの高い合併症がある場合には65歳未満でも接種を
 ・通常高齢者ではPCV-13を先に接種し、その後PPS-23を接種する事が望ましい。期間は6-12ヶ月

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(本文より引用)

 ・PPS-23は5年毎に再接種が推奨される。過去に最低3回以上肺炎球菌ワクチンを接種した患者の副反応は1%未満だったという報告がある
 ③CAPに対するインフルエンザワクチンの役割
 ・インフルエンザワクチンが肺炎を53%に、入院を50%、死亡を68%に減らしたというメタ解析結果がある。
 ・また、インフルエンザシーズンの全死亡や心不全入院・肺炎入院を減らし費用対効果も良かったとしている
 ・ただし、最近の報告ではインフルエンザワクチンの効果検証にはバイアスがあるため解釈に注意が必要とされている

f:id:tyabu7973:20151101003550j:plain

(本文より引用)

■診断:Diagnosis■
 ①どの症状が診断につながるか?
 ・呼吸器症状と全身症状がある。咳や膿性痰、呼吸困難、悪寒、圧熱、寝汗、体重減少
 ・発熱と悪寒の感度は50-85%だが高齢者では診られにくい
 ・呼吸困難感の感度も70%程度、膿性痰は50%しかない。
 ・血痰は膿胸や肺化膿症、結核、グラム陰性桿菌による壊死性感染で多い
 ②どの病原体が多いか?
 ・最も多いのは肺炎球菌。
 ・過去3ヶ月以内のβラクタム使用・高齢者・アルコール多飲・免疫抑制・併存疾患多数の場合には耐性肺炎球菌も考慮する。
 ・ウイルス感染も多く最近の報告では全肺炎の18%程度とも報告あり、また重症化するウイルスもある
 ・誤嚥で最も多いのはGNRという報告もある
 ③CAP診断に対する病歴・身体所見の有用性
 ・病歴で重要なのは患者のリスクを評価する事である
 ・例えば鳥との接触はChlamydia psittaciやCryptococcus neoformans、コウモリはHistoplasma capsulatum、米国南西部の旅行ではCoccidioidomycosisなどの真菌感染を考慮する。
 ・肺炎の予後不良に関連する身体所見としては、呼吸数30回以上、拡張期血圧60mmHg以下、収縮期血圧 90mmHg以下、心拍>125/min、T 35度以下または40℃以上である
 ④いつX線をとるか?
 ・CAP疑いの患者ではとるべし
 ・ただし胸部X線の感度は70-90%、特異度は40-70%程度と言われている。
 ・浸潤影は遅れて出てくることもある
 ⑤他の検査の役割は?
 ・外来患者では、酸素飽和度の確認のみで他は不要
 ・入院患者では、重症度や原因検索のために血液ガスでCO2貯留評価を行う。
 ・喀痰塗抹・培養は重要だが良質な検体が得られた時のみで。
 ・重症患者では、血液培養2セットと尿中抗原でレジオネラと肺炎球菌✓。
 ・血液培養陽性率は10-20%程度と言われる。
 ・プロカルシトニンベースで治療すると抗菌薬使用を減らせる
 ⑥CAP疑いで考慮すべき鑑別診断は?
 ・初期治療で48-72時間に改善しなければ、ウイルスや非定型微生物を考慮。肺結核も鑑別。
 ・empiricalなキノロン使用は結核をマスクするので要注意
 ・非感染性のものとしては器質化肺炎や肺の血管炎、過敏性肺臓炎、間質性肺炎、肺癌、リンパ腫、うっ血性心不全などを鑑別すべし。
 ⑦専門科に相談すべきは?
 ・初期治療に反応せず、診断に迷っているとき
 ・特殊な起因菌による特殊な肺炎が疑われたとき
 ・気管支鏡的検査や肺外科的検査が必要なとき
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(本文より引用)



■治療:Treatment■
 ①外来・入院・集中治療をどう分けるか?
 ・PSIやBTS ruleが用いられる。これらのスコアは死亡率を予測
 ・ハイリスクは病院で、最もリスクが高ければ集中治療室で。
 ・CURB-65も有用
 ②非薬物療法の役割は?
 ・外来患者では、非薬物療法の中心は経口補水。
 ・入院患者では、点滴と酸素投与
 ・呼吸理学療法は十分検証されていないが、メタ解析で死亡は減らさないが入院期間を短縮した
 ・他には人工呼吸器管理やNIVなど
 ③外来患者ではどの抗菌薬が良いか?
 ・心血管合併症が無く、耐性菌リスクが少ないならマクロライドかドキシサイクリン
 ・心血管リスクがある場合には、レスピラトリーキノロン(LVFX or MFLX)
 ・3ヶ月以内に抗菌薬使用がある場合に同じクラスは避ける
 ④外来患者ではどのくらい抗菌薬を使用するか?
 ・期間は患者の経過、重症度、起因微生物によって異なる
 ・外来の軽症〜中等症のCAPで、臨床経過が良ければ5日で十分
 ⑤外来ではどの程度フォローすべきか?
 ・外来で治療開始したCAPの10%は治療効果が得られず入院することが分かっている
 ・48時間以内に37.2度以下にならなければ。
 ・初期治療に反応した場合には、10-14日後に受診を指示する
 ・その際には予防接種を打ってしまう
 ・胸部X線画像は一ヶ月以内には撮るな
 ⑥入院する場合には、どのくらい直ぐに抗菌薬を行くべきか?
 ・4時間以内に抗菌薬投与を開始すると死亡率が減る
 ・ガイドラインでは初期治療として経静脈的AZMが推奨されている。ただし心血管合併症がない
 ・マクロライドとβラクタム系薬剤の併用が死亡率を下げ入院期間を短縮する

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(本文より引用)

■患者説明:Patient information■
 もうこれだけみれば十分という感じも。

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(本文より引用)

✓ 市中肺炎のいろはをもう一度おさらいのこと。

 


■NEJM■

人工膝関節置換術の効果
A randomized, controlled trial of total knee replacement*4

 膝関節の人工骨頭置換は比較的よくある整形外科手術の1つです。アメリカでは年間67万件の手術が行われているといわれていますが、実際に保存的治療と比べて本当に有効なのかということは実は分かっていない様です。というわけで、この当たり前のテーマについてランダム化比較試験が行われています。
 論文のPICOは、

P:中等症〜重症の変形性膝関節症で手術適応あり
I:人工骨頭置換術(TKR)を施行し、その後12週間の保存的治療
C:12週間の保存的治療のみ
※保存的治療は、運動・教育・食事指導・足底板使用・鎮痛剤使用
O:12ヶ月時点での変形性関節症転帰スコア(KOOS)のうち疼痛・症状・日常生活動作QOLの4つのスコア
T:RCT/ITT解析
結果:
 平均67歳、女性30%前後、BMI 32
 保存療法群 50人、TKR群 50人で比較
 保存的治療群も13人(26%)が最終的にTKRを受けていた。また、TKR群で1人はTKRを受けなかった
 プライマリアウトカムのKOOS4は、保存的治療群 16点、TKR群 32.5点で有意に外科的手術群が良い結果だった。
 重篤な有害事象は、TKR群の方が保存的治療群より多い(24件 vs 6件)

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(本文より引用)

  12ヶ月後の疼痛や機能改善スコアがTKR群で有意に高い結果でした。結構患者さんの相互乗り入れがあるのが気になります。ITT解析なので、保存的療法群にTKRを受けた患者さんが26%もいるということは、効果を過小評価してしまう可能性があるかもしれませんね。まあ、このスコアの妥当性や長期予後などまだ検証しなくてはいけない点も多いですが、ひとまずスコアは2倍良いということにはなります。100点満点中の16点差が果たして実臨床的にどこまで違いがあるかですねえ。

✓ 膝関節人工骨頭置換術は、変形性膝関節症患者さんの12ヶ月後の症状・機能・QOLスコアを改善する


強皮症と巨大十二指腸 
Megaduodenum in systemic sclerosis*5

 NEJMの症例報告です。個人的には結構興味深いテーマです。

 症例は46歳女性で7年前から全身性強皮症と診断されMTX内服中の患者が、腹痛、持続的な嘔気、未消化食物の嘔吐が3ヶ月前からあるとのことで救急外来を受診された。腹部身体所見は正常で、上腹部内視鏡検査では閉塞機転や食道の異常所見を認めなかった。バリウム検査では十二指腸が8cm以上と拡張しており、明らかな閉塞機転はなかった。小腸には異常なし。

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(本文より引用)

アミロイドーシスやChagas病、Whipple病などの除外診断が為され、全身性強皮症に伴う十二指腸拡張と診断された。十二指腸遠位の生検やTrypanosoma cruziやTrypanosoma whippleiの抗体検査が施行された。空腸瘻チューブが留置され、巣状が改善し体重は8ヶ月で4kgほど増加した。全身性強皮症の消化器症状は食道や胃が多く、十二指腸に症状が出ることは稀である。

 興味深いです。鑑別診断にChagas病とWhipple病があがるところがおしゃれですね。Chagas病は人畜共通感染症でサシガメの吸血による感染なのですが、厄介なのはその潜伏期間の長さで30年程あると言われています。発症したときに病歴をきいても厳しいでしょうね。症状として、リンパ節腫脹・肝脾腫・心筋炎・食道拡張・脳脊髄炎などが言われています。

✓ 全身性強皮症の経過中に十二指腸拡張による消化器症状を来す症例がある