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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & AIM 脳出血患者の原因検索/慢性B型肝炎/認知症患者は非認知症患者と比べて亡くなる5年前に医療費を使う/急性単純性憩室炎ガイドライン

BMJ AIM 論文 脳外 神経 消化器 感染症 高齢者 医学統計 医療政策

BMJ

脳出血患者の原因検索 
Diagnostic yield and accuracy of CT angiography, MR angiography, and digital subtraction angiography for detection of macrovascular causes of intracerebral haemorrhage:prospective, multicentre cohort study*1

 脳出血患者さんを診た時に原因検査をどの程度行うかというテーマ。実はこの精査をどのくらいまで行うかは世界的にも医療機関によってマチマチであることが指摘されています。たとえば皮質下出血では若年者が多く、たいてい血管造影まで行われますが、他はあまりコンセンサスは得られていません。そこで、今回は各種検査の診断価値についてオランダの22医療機関で前向きに調査した観察研究が報告されていました。
 論文のPECOは、

P:18-70歳までの脳出血患者298人
  発症前ADLが自立して検査が可能な患者を組み入れ
  45歳以上、高血圧あり、基底核視床後頭葉の非外傷性出血を全て満たす場合は除外
E/C:アルゴリズムで対応。①CTA施行(48時間以内)、②陰性ならMRA(8週間以内)、③陰性なら血管造影
O:大血管病変(AVMや大動脈瘤)の有無
T:後ろ向き観察研究
結果:
 平均53歳、平均出血量 11ml
 プライマリアウトカムの大血管病変は23%(69人)に見つかった
 69例のうち最も多かったのはAVMで47例(15%)、それ以外では静脈洞血栓症は頚動静脈瘻、動脈瘤など
 CTAで59例原因同定、その後MRAで10例、血管造影で10例見つかった
 多変量解析の結果、原因が見つかる因子として有意だったのは、
 ①後頭蓋窩病変 OR 13.0(3.7-46.5)、②CTでラクナ所見なし OR 8.5(2.9-25.3)、皮質出血 OR 5.5(2.0-15.3)だった

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(本文より引用)

 若干計算が合わないのはCTAで陽性だったがMRAやDSAで陰性だったりすることもあり、結構診断までの過程が複雑だからです。ただ、見つかるとすれば大半はCTAで引っ掛かっており、第一選択はCTAで良いのでは?とコメントされていました。MRAだけではダメだなあと改めて思った次第。

✓ 脳出血患者の原因検索を行うと4人に1人くらい血管異常があり、多くはCTAで発見できる


慢性B型肝炎 
Management of chronic hepatitis B*2

 あらためてHBVのレビューです。ざっくりと要点だけピックアップしていきたいと思います。
・重要なテーマとして、疫学、繊維化の非侵襲的な精査方法、いつ治療を始めるか、治療方法や効果は何か、いつ治療を止めるかなどがテーマ。
HBV感染は2億4000万人が罹患しているといわれる世界的感染症
HBV感染患者の30%は肝硬変であり、5年以内に23%が非代償性になる
・疫学では78万人が毎年HBV関連合併症で亡くなり、米国の2010年のデータでは肝細胞癌全体の50%はHBV関連と言われている。
・アジアが流行地域で米国への持ち込みが多い。主な流行地域としては中国、東南アジア、アフリカ、太平洋諸島や中東の一部、アマゾンなど。
頻度が2%以下と少ない地域に挙げられるのが、米国・西ヨーロッパ・オーストラリア・日本
・ただ、症状がほとんど出ないために真の有病率ははっきりしないという問題点もある
・診断と初期評価に重要なのは、HBs抗原・HBe抗原・HBe抗体・HBc抗体である。特にHBs抗原は感染評価の第一歩。HBs抗原陽性によってHBV感染の診断がつくと、ALTやHBV DNA・HBc抗体・HBe抗原・繊維化マーカーなどの評価を行う
・また、HIVHCVの共感染の有無も評価すべき
HBV感染のステージは主に4つに分ける。①無症候キャリア期、②免疫排除期(肝炎期)、③非活動性キャリア期、④再活性期またはHBe抗原陰性慢性HBV感染

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(本文より引用)
HBe抗原陰性慢性HB感染とは、HBe抗原は検出されないが肝炎が進行している病態であり、これはHBe抗原の変異が関連していると言われ、HBe抗原陽性症例よりも肝硬変伸展が早いとも言われる
オカルトHBV感染については、定義としてはHBVウイルスが肝内には残存しているが、血中のHBs抗原が認めない病態。血中のHBV-DNAの有無は関係なし(多くの場合誤解されている)
・血中HBV-DNAは検出されたとしても200IU/ml以下と少量。ただ、これってHBs抗原陰性でHBV-DNAも陰性だとそもそもHBV感染を疑うか?というレベル。肝生検するしか無い。
・繊維化の評価が重要なのはgrade 2以上の繊維化は治療対象だから。ALTが正常であっても繊維化が起こっていることがあり評価が難しい
・9つの研究のメタ解析ではALT正常患者の27.8%にStage2-4の繊維化があったと報告
・肝生検はゴールドスタンダードだがサンプルエラーの問題はある。繊維化のstageの違いは33%程度であると言われ、更には出血の合併症や疼痛は起こるため、非侵襲的な手法が求められている
・血清学的繊維化評価方法として、APRI(アミノトランスフェラーゼ/血小板比)やFIB-4などが最も用いられている。
APRIとFIB-4は多くの研究で検証されているが、APRIはカットオフ0.5で感度73%、特異度 54.5%。カットオフ1で感度 50%、特異度83.0%。カットオフ1.5で感度33.0%、特異度 91.0%、FIB-4は進行期の繊維化に対して1.45以下、3.25以上で感度 78.6%、特異度 98.0%だった。
・最近注目されているのはエラストグラフィー。エコーで評価出来る低侵襲方法として注目されており、研究も蓄積されている
・治療を開始するかどうかはHBV DNA値とALT値、HBe抗原のセロコンバージョンの有無、肝硬変の有無などの患者背景を基に判断する。
・治療適応については、各国ガイドラインによって多少異なるのが現状。ヨーロッパではEASL、米国ではAASLD、アジアではAPASLがある。

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(本文より引用)
・基本的には肝硬変患者は治療適応だが、代償性患者については意見が分かれている。また、慢性肝炎では多くのガイドラインHBV DNA量とALTの正常上限2倍以上を条件にしている
HBe抗原陽性でALT正常患者では核酸アナログ製剤での治療を行ってもHBeセロコン率5%と悲惨な状況で積極的な治療適応とはしにくい
・現行できる治療は核酸アナログとPEGインターフェロンインターフェロンは4週。今回この部分の詳細は割愛。興味のある人は本文をご参照下さい。
・治療の中止は以下の条件で考慮。
・PEG-IFNであれば、HBV-DNA 20000IU/ml以下、②HBs抗原<1500ml/IUが12-24週時点で達成できるか、もしくは48週の治療完遂時
・核酸アナログ製剤では、HBeのセロコンバージョン後6-12ヶ月経過して中止を検討するが再発リスクは非常に高い

✓ 慢性B型肝炎ウイルス感染症について知識をよく整理しておく

 


■AIM■

認知症患者は非認知症患者と比べて亡くなる5年前に医療費を使う 
The burden of health care costs for patients with dementia in the last 5 years of life*3

 医療費の問題は医療経済学的に論じられますが、現場の医師に取ってこのマクロの視点は重要です。抗菌薬適正使用などもそうですが、このマクロの視点なく個々の症例のみに焦点を絞った診療を行うことがしばしば見られます。個別化は重要ですが、このバランス感覚をいかに鍛えていくかが臨床医としてのスキルアップに繋がると思っています。余計な前置きをしましたが、今回亡くなる5年前に使う医療費が疾患によってどの程度異なるかを検証した観察研究が発表されていました。
 論文のPECOは、

P:メディケアのデータベースを基に70歳以上で2005-2012年に死亡した1702人を解析対象
E/C:データベースの保険病名を基に、認知症・心疾患・悪性腫瘍・その他に分類
O:亡くなる前5年間の社会的費用
T:後ろ向き観察研究
結果:
 ベースライン
  死亡時年齢:認知症 88.4歳、悪性腫瘍 81.7歳 、心疾患 84.8歳、その他 83.3歳
 認知症グループの定義はHRSレジストリによる認知症診断と認知症スコアによるアルゴリズムで診断されている
 プライマリアウトカムは、認知症群で28万7038$、非認知症群で18万3001$だった
 サブ解析では黒人、教育レベルとが医療費を増やすリスクとして有意だった

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(本文より引用)

  認知症患者さんの方が亡くなる前5年間にたくさん医療費を使うという結果で、実に他疾患の57%増しという結果でした。通常のメディケアによる補填以外に、自己負担金や非正規の費用も増えるという結果で、サブ解析の結果では社会的弱者により多くのお金がかかる可能性があると言う皮肉な結果でした。カルテベースの後ろ向き観察研究なので、データ収集精度の問題はあるでしょうが、理屈から考えても晩年5年によりお金がかかるのは認知症を持っている方ということになりそうです・・・

✓ 亡くなる前5年間に医療費をたくさん使用するのは認知症を抱えている患者さんである


急性単純性憩室炎ガイドライン 
Acute uncomplicated diverticulitis: what to do until we have better data*4

 憩室炎ってかなりコモンな疾患の割に実はあんまりクオリティの高いエビデンスがないのが現状です。今回アメリカ消化器病学会(AGA)が1999年以降久々に憩室炎診療ガイドラインを改訂したため、その内容も踏まえて現状の憩室炎診療についての情報提供が為されていました。

 憩室を持っている患者の4%に憩室炎を発症することが知られていますが、重症度は様々で外来患者から入院が必要な患者まであります。今回ガイドラインに目を通す前に、知っておくべきことがあり、それは実は憩室炎の治療に関するエビデンスは質の高いものがほとんどないということです。今回の対象である、単純性憩室炎の単純性の定義は、CTで膿瘍や穿孔がないもの、重症感染や敗血症合併がないもの、免疫抑制剤使用がないものなどと定義されています。

 単純性憩室炎の場合に、よくあるプラクティスとして抗菌薬の処方があります。内科医はほぼ反射的に憩室炎に抗菌薬を処方しますが、実はこれは正しいプラクティスかどうかはよく分かっていません。そもそも単純性憩室炎は炎症>感染の可能性があり、過去に行われた研究では、155例の急性単純性憩室炎患者で抗菌薬なしで治療を行ったところ、入院した患者はたった4人(2.6%)で、その4人も外科的手術を必要としなかったという結果でした。また、2012年には633人の単純性憩室炎患者対象のRCTが行われ、抗菌薬群314人、非抗菌薬群 309人で比較していますが、入院期間・穿孔膿瘍発生率・1年後再発率も両群で有意な差は認めなかったという結果でした。ただ、現時点ではエビデンスの質が高いとは言えず、推奨度は高くはありません。多くの臨床医が抗菌薬を使用している現状で、プラクティスを変えるにはもっと強いエビデンスが必要だとしています。

 同様に、抗炎症作用のあるメサラミンや整腸剤、食事内容やアスピリン・NSAIDsなどについても十分なエビデンスがなく、CFも有効だとはされているもののいつ施行したら良いかは良く分かっていません。ガイドラインに目を通すにあたり、この分野の何がわかっていなくてどんな研究が今後求められているのかを把握しておく必要があります。

 今後の課題としてAIMでは以下の4項目を挙げていました。

 ①抗菌薬をどんな患者に使用して、どんな患者では使用しなくても安全かを明らかにする。
②抗炎症薬、整腸剤、食事介入の効果を、症状の改善・合併症や再発率の低下などに分けて検討する。
③再発性憩室炎のリスクを明らかにし、再発予防についての適切な介入法を明らかにする。
④急性憩室炎完全後にいつCFを行うべきかをリスクも含めて明らかにする

 
✓ 単純性憩室炎のエビデンスはまだまだ不十分だがルーチンの抗菌薬は不要かもしれない