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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:AIM & Lancet 末梢体温測定の精度/GDM患者が授乳するとDM発症率が低下する/橈骨動脈アプローチの被曝量/難治性高血圧

■AIM■

末梢体温測定の精度 
Accuracy of peripheral thermometers for estimating temperature*1

 体温測定についてのシステマティックレビュー。前から読まなきゃ〜と思いつつ放っておいたらK先生が紹介してくれました。体温測定自体は非常に重要ですが、その精度については検証が少なく特に成人では過去のメタ解析もありません。今回末梢体温(口・耳・腋窩など)と深部体温(直腸・膀胱・肺動脈等)を比較してその精度を検証しています。今回検証された研究は全75研究で成人の研究が57%、小児が43%で、末梢体温は鼓膜と腋窩のstudyが多く、深部体温は肺動脈カテと直腸が多い結果でした。

 まずはPAカテを基準とした場合の膀胱・直腸・食道の深部体温同士の精度比較です。これは素晴らしいことに膀胱との差が-0.002℃(-0.120 to 0.120)、食道との差が-0.003℃(-0.310 to 0.310)、直腸との差が-0.10℃(-0.24 to 0.04)とどれも0.5℃をまたがず、深部体温の正確性は証明された形となっています。さて、それをもとに今度は、鼓膜温・側頭動脈・腋窩・口腔温を全て評価していますが、こちらはいずれも0.5℃を越えた誤差が生じる結果となっています。

 さらに、実際の発熱(38℃以上)への感度・特異度に関してメタ解析を行ったところ、感度 64%(55-72%)、特異度 96%(93-97%)と特異度は高いが感度は低いので、末梢体温が低くても本当に発熱がないとは癒えないが、末梢が高温であれば実際に発熱があると言えるという解釈です。もちろん異質性もあるため、微妙なところではありますが・・・

 もちろん大半の研究がバイアスが多く質も低いので、結果の解釈には十分な注意が必要です。体温測定は重要なバイタルの一つなのにも関わらず、この25年間にほとんど進歩していないのが現状です。少なくとも末梢体温に頼り切ってしまうのは危険であり、正確な体温測定を行う場合には直腸や膀胱温などの深部体温を測定する必要があります。

✓ 深部体温は正確性が高く、直腸・膀胱は肺動脈温とも一致する。末梢体温は感度が低く特異度が高いので除外には使えない


GDM患者が授乳するとDM発症率が低下する 
Lactation and progression to type 2 diabetes mellitus after gestational diabetes mellitus*2

 個人的には妊娠糖尿病は守備範囲内なので色々な側面で追っかけてますが、今回母乳との興味深い関連を検証した前向き観察研究が報告されていましたので紹介したいと思います。授乳すると糖尿病発症が防げるかも知れないという仮説は昔からあった模様ですね。
 論文のPECOは、

P:妊娠糖尿病と診断された35週以降の単胎妊婦さん1035人
E/C:①母乳の頻度、②母乳期間
O:2年後の母の糖尿病発症率
T:前向き観察研究
結果:
 頻度については、母乳かミルクについて4群に分類し、①全て母乳群、②ほとんど母乳群(ミルクは6oz以下/日)、③ほとんどミルク群(ミルクが7-17oz/日)、④全てミルク群(母乳なし)
 期間については、授乳を継続した期間で4群に分類し、①0-2ヶ月、②2-5ヶ月、③5-10ヶ月、④10ヶ月以上
 米国のSWIFTという大規模コホートを用いてデータ収集。
 平均34歳、アジア人 32-37%、BMIはDM発症群で有意に高い
 2年フォローアップして、DMを発症したのは113/959人=11.8%

f:id:tyabu7973:20151208005029j:plain
(本文より引用)

 プライマリアウトカムは、①母乳の頻度でみると、全てミルク群を1とすると全て母乳群のDM発症率はHR 0.43  (0.23-0.82)と有意に低下。②母乳の期間でみても、2ヶ月以下を1とすると10ヶ月を越えて授乳している群のDM発症率はHR 0.38(0.20-0.71)と有意に低下した。この関係は用量相関関係が証明された。

 かなりきちんとしたきれいなデータが出ています。DM発症率が2年で12%前後というのも実臨床っぽいです。過去に言われている50%とかは多すぎる気がしますし。もちろんRCTではないので交絡因子は排除しきれていませんが、やはり母乳育児は大事だというデータの一つです。様々な事情はあるでしょうが、アメリカ小児学会も勧めている様に、6ヶ月間は母乳で育てることが母胎に取っても良い影響が出るということなのでしょうね。

✓ 妊娠糖尿病の母が母乳で子供を育てると用量依存性にDM発症率が減少する

 


■Lancet■

橈骨動脈アプローチの被曝量 
Radiation exposure in relation to the arterial access site used for diagnostic coronary angiography and percutaneous coronary intervention: a systematic review and meta-analysis*3

 PCI・CAGについては最近ではほとんど橈骨動脈アプローチが推奨されており、スタンダードになりつつあると思います。ただ、一つ課題が残されており、それが今回話題になっている放射線被曝の問題です。過去の観察研究などでは橈骨動脈アプローチの方が術者も患者も放射線被曝量が多いことがしられており、今回それについて検証したメタ解析が行われました。
 論文のPICOは、

P:CAGもしくはPCIを受けた患者が含まれるRCT
I:橈骨動脈アプローチ
C:大腿動脈アプローチ
O:①透視時間、②kerma-area product
T:メタ解析/fixed effect modelとrandom effect model
結果:
 24RCT、11ヵ国、19328人が対象
 大半の研究が小規模、1000人以上の大規模研究は4つのみ、CAG施行者の経験数もまちまち 
 平均63歳、男性 73%、PCI研究は大半がACS/AMI
 プライマリアウトカムの透視時間は、診断カテでは橈骨動脈の方が1分長く(mean difference 1.14:0.67-1.62)、PCIでも1分長かった(mean difference 1.09:0.46-1.71)
 kerma-area product(患者被曝/Gy cm2)は、診断カテで1.72Gy cm2(-0.10 to 3.55)、PCIで0.55 Gy cm2(0.08 to 1.02)だった
 生涯癌リスクはNNH 9万~36万

 ちなみに術者被曝もセカンダリーで診ていますが、橈骨で107μSv、大腿で74μSvでした。結果として橈骨アクセスの方が透視時間が長く放射線被曝が多くなるという結果でしたが、実際の健康被害につながるほどの量ではないことも明らかになり、その他の橈骨アクセスのメリットが上回るのではないか?と考察されていました。

✓ 橈骨動脈アプローチは心臓カテーテル検査ではスタンダードだが、放射線被曝量は増える


難治性高血圧 
The double challenge of resistant hypertension and chronic kidney disease*4

 難治性高血圧についてのレビューをまとめてもらったものをちょっと遅れですがアップしておきます。いつもの通り箇条書きでざっくりいきます。

・難治性高血圧は、利尿剤を含む3剤以上の降圧薬で管理できない高血圧を指す。
・治療抵抗性の患者要因で最も多いのはCKDで、CKD進行に伴い治療抵抗性高血圧も増える
高血圧患者全体の0.5-14%程度が治療抵抗性という報告があるが、真の治療抵抗性高血圧は半分以下とも言われる
・そもそも治療抵抗性とされている高血圧患者のうち50%は治療が不適切で、40%は白衣高血圧か服薬アドヒアランス不良があるという
・治療抵抗性高血圧の予後としては通常高血圧よりも心血管イベントが1.47倍
・ESRDや死亡リスクが2.66バイトも報告されている
・治療抵抗性高血圧では二次性高血圧検索は必要であり、2013年のESH/ESCガイドラインでは全例に推奨
・CKDの高血圧患者の5.5%に腎動脈硬化があると言う報告もある
降圧効果を低下させるようなESA製剤やNSAIDsなどにも注意が必要
・血圧管理が不適切な最も多い理由は服薬アドヒアランス不良
・尿検査による調査で内服の有無を評価した研究では、治療抵抗性高血圧患者の53%にアドヒアランス不良があった。
・ポリファーマシーや副作用・薬剤費用・教育不足などの多因子が関連
・病態生理として関連するのは、加齢、Volume overloadなどがある
・治療の目標はCVDイベントおよびESRDを減らす事こと。多くの場合には多剤が必要になる
・治療抵抗性と診断する前に、各種降圧剤は最大量を使用することが必須であり、NICEでは、降圧薬3剤(CCB・RAS系薬剤・サイアザイド系利尿剤)を推奨している
・治療として、まずは塩分制限が重要で、現在は6g未満の遵守を徹底すると血圧は9.7/3.9下がり、降圧薬剤数も減少することが知られている。
eGFR<30ではループ利尿剤が勧められている。フロセミドは1日2回、トラセミドは1日1回、Stage 4-5のCKDではRAS系阻害剤は変更を考慮。ただし、これには異論もある
・Dual RAS blockadeは推奨されていない
第4の薬剤として提案されているのは、スピロノラクトン 12.5-25mg/日、エプレノン 25-50mg/日。ただし高カリウム血症には十分な注意が必要。
・デバイス治療の効果は十分証明されていない。

✓ 難治性高血圧に対するアプローチをおさらいしておこう