栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

ACPJC:Diagnosis RASSは救急外来でせん妄を予測できるか?

ACPJCです。
救急外来でせん妄を適格に診断できるようになったら、いらんルンバールを回避出来るのに・・・と高齢者の意識障害ばかり診ている医師は思うわけですが・・・

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The diagnostic performance of the Richmond Agitation Sedation Scale for detecting delirium in older emergency department patients.

Han JH, Vasilevskis EE, Schnelle JF, et al.

Acad Emerg Med. 2015;22:878-82.

臨床上の疑問:
 Richmond Agitation Sedation Scale(
RASS)は救急外来で高齢者のせん妄を正確に同定できるか?

方法:
 ①デザイン:RASSと精神科医によるせん妄診断の盲験化比較試験
 ②セッティング:
米国三次教育医療機関の救急外来
 ③患者:65歳以上の患者406人(平均74歳、50%が男性、6%が認知症)で救急外来を受診し、受診12時間以内に組み入れ。平日午前8:00から午後4:00までに来院した患者を組み入れ。英語が話せない患者、全盲聴覚障害、非言語的コミュ二ケーションが必要な患者は除外された。
 ④テストの方法:
研究補助員と救急医が独立して、通常は鎮静度を評価するために用いられるRASSを用いて患者を評価。RASSは10秒以内に施行することが可能である。スコアは-5点(覚醒していない)から+4点(攻撃点である)までの幅があり、0は正常の覚醒状態で、+1点が不安はあるが積極的な動きはない、-1点はわずかにボーっとしていて、声には反応するが、アイコンタクトに10秒以上かかる。
 ⑤診断のゴールドスタンダード:DSM-4の診断基準によるせん妄をリエゾンの精神科医によって評価された。これはRASS評価後3時間以内に認知機能評価と神経診察を元に評価された。
 ⑥アウトカム:
感度・特異度・尤度比が算出された
結果:

 50人(12%)がせん妄だった。RASSスコアが0点以外は、感度 82%、特異度 85%でせん妄を同定可能だった。RASS+1点>または<-1点では、特異度99%だった。κ値は0.63(0.59-0.67)と良好だった。

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(本文より引用)

結論:
 救急外来における高齢者ではRASS 0点以外は感度82%、特異度85%でせん妄を同定する事が可能である

 集中治療中にはRASSはルーチンに用いられていると思いますが、意外な使い道というところでしょうか。RASS +1点〜-1点以外であればせん妄の特異度は上がるのですが、どちらかといえば除外が重要なので、0点以外であれば否定できないという形にするのが良さそうです。
 コメントでは、せん妄は大事だが見過ごされている。一方でせん妄をoverdiagnosisすることによって、あまり負のアウトカムには繋がらないせん妄まで見つけてしまい、パンドラの箱になるのではないか?と危惧されておりました。

ICNR Vol.2 No.1(Intensive Care Nursing Review): せん妄のすべて

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