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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:コントロール不良喘息の治療/IBD患者の大腸サーベイランス/収縮能低下心不全患者の難治性高血圧の治療/高齢者の薬物関連有害事象

MKSAP アレルギー 呼吸器 薬剤 消化器 内視鏡 循環器 高齢者
MKSAPまとめです。
これやっている場合ではないのかもしれないけど・・・。
ポリの問題は若干詰めが甘いなあと思いつつ。

コントロール不良喘息の治療
Treat inadequately controlled asthma

❶症例 
  55歳女性が、咳嗽や呼吸困難などの喘息症状が最近悪化してきたとのことで受診。週に2-3回は喘息発作で夜間起きてしまう。後鼻漏や鼻汁、発熱、胸焼け症状なし。現在の常用薬は中等量の吸入ステロイドと発作時のアルブテロール。吸入薬は適切に使用出来ている。
  身体所見では、彼女は元気そうで呼吸疲労は無い様子。Pulse 76bpm、RR 18/min。胸部聴診では、両肺に1wheezingを聴取。その他には異常所見なし。

 

 この患者の最も適切な治療はどれか?
A.  長時間作用型β2刺激薬吸入を追加
B.  イプラトロピウム吸入を追加
C.  吸入ステロイドを倍量とする
D.  10日間のマクロライド系抗菌薬を開始

 気管支喘息の治療
 本患者で、最も適切な治療は、長時間作用型β2刺激薬吸入を追加する事である。今回の増悪までは患者は安定していたが、現時点ではEPRガイドラインに照らし合わせると、中等症持続型に分類される。現時点では中等量吸入ステロイド薬では症状がコントロール出来ていない。EPRガイドラインは、本患者の様な患者には長時間作用型β2刺激薬を推奨しており、吸入ステロイドを倍量にするよりも、喘息症状の改善に大きく寄与するとしている。吸入ステロイドの副作用は通常あまりおこりにくが、高用量かつ長期におよぶ場合には考慮すべきである。副作用として言われているのは、副腎抑制、緑内障白内障骨粗鬆症、皮膚菲薄化などが含まれる。そのため、吸入ステロイド量は症状がコントロール出来ていれば可能な限り減量すべきである。また、吸入器の種類は様々であり、適切な使用方法について説明を受けるべきである、コントロール不良患者では適切な吸入手技が行えているかを確認すべきである。

❸その他の選択肢
吸入抗コリン薬:イプラトロピウム(アトロベントⓇ)は、喘息発作時に使用することでβ2刺激薬の気管支拡張効果を高める。しかし、喘息の長期管理のための使用は一般的には推奨されていない。喘息の臨床研究ネットワークによる最近の研究では、長時間作用型抗コリン薬吸入(チオトロピウム等)の追加は、吸入ステロイドのみで症状コントロールが不十分な場合に、長時間作用型β2刺激薬吸入と同等の効果だったことが報告されている。

マクロライド系抗菌薬:マクロライド系抗菌薬は、非定型呼吸器感染症の治療に用いられる。非定型呼吸器感染症は、喘息様症状を来したり、喘息発作に関連する。しかし、喘息コントロールを改善する効果は証明されておらず、喘息発作時にルーチンに使用することは推奨されていない

Key Point
✓ 診療ガイドラインは、中等度持続型喘息患者で中等量吸入ステロイドを使用中の患者さんに対しては、吸入ステロイド増量よりは長時間作用型β2刺激薬を追加することで著明に呼吸状態が改善するため推奨されている。

National Asthma Education and Prevention Program. Expert Panel Report 3. Guidelines for the Diagnosis and Management of Asthma. Available at: www.nhlbi.nih.gov/guidelines/asthma/asthsumm.pdf. Accessed July 27, 2012.

 

 

IBD患者の大腸サーベイランス
Manage dysplasia surveilance in a patient with inflammatory bowel disease

❶症例
  52歳女性が、9年前から間欠的に排便時に出血するとの主訴で受診。彼女は1日に4回ほどの排便があり、最近数週間は、直腸出血に関連した便意切迫感とテネスムスを認めている。その他は健康で、炎症性腸疾患や大腸癌の家族歴は無い。
  身体所見では、バイタルは正常。軽度の下腹部痛があり、大腸内視鏡では、粘膜所見はほぼ正常だった。ランダム生検では、炎症や異形成は認めなかった。直腸粘膜では、血管透見の低下、紅斑などを認め、生検では陰窩の歪みや萎縮を認め、潰瘍性大腸炎に合致する炎症性変化を認めた。異形成は認めなかった。

本患者で大腸内視鏡検査サーベイランスの適切な時期はいつか?
A.  1年後大腸内視鏡
B.  3年後大腸内視鏡
C.  5年後大腸内視鏡
D.  10年後大腸内視鏡

 ❷直腸型潰瘍性大腸炎
  本患者で最も適切なサーベイランスは10年後に大腸内視鏡検査を行うことである。潰瘍性大腸炎やCrohn病を含む炎症性腸疾患の患者では、大腸癌リスクがあがることが知られている。確立された大腸癌リスクは、炎症性腸疾患の罹病期間が長期であること、病変範囲が広いこと、PSCの合併、大腸癌の家族歴である。PSCの合併が無く、家族歴もない患者では、大腸内視鏡検査は大腸癌や異形成を除外する目的でIBD発症8-10年後に行うべきである。スクリーニングの大腸内視鏡検査の間、IBDの範囲は生検による病理学的評価で確認をしておく必要がある。直腸型など範囲が狭い潰瘍性大腸炎では、大腸癌発症リスクは一般人口とほとんど変わらない。大腸がんの予防ガイドラインによれば平均的な大腸癌リスクの患者では、10年毎の大腸内視鏡サーベイランスが推奨されている。

 脾彎曲より近位部まで病変が及ぶ全結腸型の潰瘍性大腸炎や、下行結腸の病変で脾彎曲の手前までの左側結腸型潰瘍性大腸炎では、大腸内視鏡サーベイランスは、1-2年毎に行うべきである。
 
 大腸癌リスクの高い患者では、3-5年毎のサーベイランスが推奨される。

Key Point
✓ 直腸型潰瘍性大腸炎では、大腸癌リスクは一般人口と比較してほとんど変わらないため、大腸癌サーベイランスは10年毎。

Farraye FA, Odze RD, Eaden J, Itzkowitz SH. AGA technical review on the diagnosis and management of colorectal neoplasia in inflammatory bowel disease. Gastroenterology. 2010;138(2):746-774. PMID: 20141809

 

 

収縮能低下心不全患者の難治性高血圧の治療
Treat resistant hypertension in a patient with systolic heart failure

❶症例

  55歳男性が、健康診断で受診。2年前に非虚血性心筋症の既往があり、その際の心臓超音波検査では左室収縮能(EF)が35%だった。受診時は元気で、呼吸困難感なく、症状なしで2マイルは歩けるとのこと。既往歴は高血圧のみで、内服薬はリシノプリル、カルベジロール、クロルサリドンだった。
 身体所見では、BP 150/90mmHg、Pulse 50bpm。頚静脈怒張は認めず、心臓聴診では心音整で雑音やギャロップは聞こえなかった。肺野は正常で、下腿浮腫なし
 採血結果では、1Cr 1.5mg/dL、Na 138mEq/L、K 4.0mEq/L。
 心電図は正常洞調律で左室肥大が疑われた。

 この患者で追加すべきカルシウム拮抗薬は以下のうちどれが良いか?
A.  アムロジピン
B.  ジルチアゼム
C.  ニフェジピン
D.  ベラパミル

 ❷カルシウム拮抗薬
 本患者は治療抵抗性高血圧(利尿剤を含む3種類以上の降圧薬を最大量使用してもコントロール出来ない高血圧)の状態で、収縮能低下心不全を合併していることから、血圧コントロール改善のためにアムロジピンの様なカルシウム受容体拮抗薬を開始すべきである。治療抵抗性高血圧に対する降圧薬の組み合わせとして特定のものは十分検証されていないが、多くの専門家がACE阻害薬と利尿剤にカルシウム受容体拮抗薬を併用することを推奨している。クロルサリドン(ハイグロトンⓇ※日本では販売中止)などの利尿薬は、長時間作用型であり、ヒドロクロロチアジド(ニュートライドⓇ)よりも効果的かもしれない。

 収縮能低下を伴う心不全患者では心機能低下による心不全増悪を来す可能性があり、多くのカルシウム受容体拮抗薬が相対的禁忌になる。アムロジピンとフェロジピン(ムノバールⓇ)は新世代のカルシウム受容体拮抗薬で、合併症や死亡率に対して影響は与えないことが大規模臨床試験で証明された。合併症にも死亡率にも影響を与えないため、収縮能低下を伴う心不全の第一選択薬剤にはならない。一般的には、ACE阻害薬やβ遮断薬などの科学的根拠に基づいた薬剤の最大容量を投与しても管理できない高血圧や狭心症症状の治療のために用いるべきである。

❸その他の選択肢
ジルチアゼム・ニフェジピン・ベラパミル:旧世代のカルシウム受容体拮抗薬は、陰性変力作用があり、心不全を増悪させる可能性がある。本患者の症状はNYHA分類Ⅰ程度と十分コントロールされているが、薬剤による心不全増悪リスクを抱えることになる。

Key Point
✓ 多剤による降圧コントロールを受けているが、コントロール不十分な心不全患者では、アムロジピンなどのカルシウム受容体拮抗薬が適切な追加薬である

Tsuyuki RT, McKelvie RS, Arnold JM, et al. Acute precipitants of congestive heart failure exacerbations. Arch Intern Med. 2001;161(19):2337-2342. PMID: 11606149

 

 

高齢者の薬物関連有害事象
Recognixe a medication-related adverse effect in an elderly patient

❶症例

  94歳女性が、5日前からの進行性の筋力低下、食欲低下、めまい、軽度の混乱を主訴に、娘に連れられて救急外来を受診した。2週間前に慢性心不全の急性増悪で入院しており、経静脈的利尿剤投与が開始され、通常の内服利尿薬も増量となっていた。彼女の症状は良くなり退院、次の外来は来週の予定だった。慢性心房細動と、18ヶ月前に十二指腸潰瘍による消化管出血、COPD、高血圧、帯状疱疹後神経痛、慢性腎臓病、うつ病、不安神経症、季節性アレルギー性鼻炎の既往があった。内服薬はフロセミド、塩化カリウムアスピリン、オメプラゾール、イプラトロピウム、アルブテロール吸入、メトプロロール、ガバペンチン、ロラタジン、必要時ロラゼパムだった。
 身体所見では、穏やかだが虚弱に見え、覚醒しているが軽度混乱している様子だった。体温 37.3℃、BP 108/56mmHg、Pulse 95bpm 整、RR 16/min、SpO2 94%(RA)。粘膜乾燥があり、瞳孔左右差なく、対光反射は正常。心臓聴診所見では、irregularly irregularで、胸骨迂右縁に3/6の収縮期雑音を聴取した。呼吸音は正常で、腹部診察では肝脾腫なし。下腿浮腫もなく、神経学的所見では認知機能低下以外には神経巣症状を認めなかった。
 採血検査では、電解質は正常で、血糖 110mg/dL、Cr 1.4mg/dLで退院時の1.2mg/dLよりは上昇していた。血算では白血球 7500/μLで分画正常、Ht 35%、血小板値は正常だった。尿検査ではわずかにケトン体があるが円柱はなし。胸部X線では重度の亀肺と肺気腫に合致する所見を認めたが、肺炎や心不全を示唆する所見は認めなかった。

 本患者での症状の最も考えられる原因はどれか?
A.  急性腎障害
B.  薬物効果
C.  潜在的感染症
D.  脳卒中

 ❷ポリファーマシー
 本患者の臨床症状は、複数の合併症があり複数の薬剤を内服している患者における過剰投薬の結果が考えられる。彼女は最近入院して、薬剤調整を行っており、利尿剤が増量していることは、体液量減少を来たし腎機能を軽度に悪化させたために、薬剤の腎排泄が変化した可能性が考えられる

 ポリファーマシーは、人口の高齢化に伴いコモンな問題になっており、米国65歳以上の高齢者のうち10種類以上内服している患者は12%といわれ、薬剤関連有害事象は救急外来受診の10%、急性期入院患者の17%を占めると言われている。本患者で内服されている多数の薬剤は、薬剤有害事象を起こしうる。例えば、ガバペンチンはめまいや筋力低下を起こすため、腎機能障害がある患者では用量調節が必要になる。全ての患者(特に高齢者)の内服薬剤を確認することは、通常診療の一部であり、ポリファーマシーと潜在的な不適切処方による薬物有害事象を回避すべきである。

 ❸その他の治療
 急性腎障害本患者では、eGFR値で確認しても腎機能は悪化しているが、急性腎障害が意識障害を来すとは考えにくい。
 潜在的な感染症
高齢者の意識変容や活気が無い状態では、原因として感染症は考慮すべきである。本患者では感染症を示唆する所見を認めない。
 脳卒中本患者は心房細動があり、抗凝固療法を受けていない。血栓塞栓症のリスクは高いが、彼女の神経症状では巣症状は認めず、彼女の症状の原因が脳卒中とは考えにくい。

Key Point
✓ 特に高齢者で合併症が複数ある患者では、ポリファーマシーはしばしば薬物有害事象の原因になる。通常診療の中で、現時点での薬剤必要性と適切な用量調節を行うべきである

Hayes BD, Klein-Schwartz W, Barrueto F Jr. Polypharmacy and the geriatric patient. Clin Geriatr Med. 2007;23(2):371-390. PMID: 17462523

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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