栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:院外CPA患者の絶え間ない心マッサージ

院外CPA患者の絶え間ない心マッサージ
Trial of continuous or interrupted chest compressions during CPR*1

N Engl J Med 2015; 373:2203-2214
【背景】
 院外心停止患者への心肺蘇生(CPR)中に、補助換気を行う為に用手的胸骨圧迫を中断することで、血流が減少し生存率が低下する可能性がある。今回胸骨圧迫を継続しつつ陽圧換気を行う場合と、30:2の胸骨圧迫・換気比を維持しながら、換気のために胸骨圧迫を中断した場合のアウトカムが変わるかどうかを評価した。
【方法】
 クロスオーバーでのクラスターRCTに、114の救急隊が参加。成人の非外傷性心停止に対して、救急隊が継続的な胸骨圧迫を行う介入群と、補助換気の際に胸骨圧迫を中断する対照群を比較した。プライマリアウトカムは、生存退院率とした。セカンダリアウトカムは、modified RS(0-6点で3点以下は良好な神経機能)とした。アドヒアランスを評価するためにCPR過程をモニターした。
【結果】
 23711人が評価対象となり、12653人が介入群、11058人が対照群だった。生存状況のデータが得られた患者のうち生存退院したのは、介入群 1129/12613人(9.0%)、対照群 1072/11035人(9.7%)だった(両群差 -0.7%:-1.5 to 0.1%)。介入群の7.0%、対照群の7.7%が神経機能良好な状態での生存退院だった(両群差 -0.6%:-1.4 to 0.1%。介入群の7.0%)。退院後の生存期間は、介入群のほうが対照群よりも有意に短かった(平均-0.2日:-0.3 to -0.1日)

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(本文より引用)

【結論】
 院外心停止患者に対して、救急隊が胸骨圧迫を中断せずに継続的に行っても、通常の補助換気中に中断される群と比較して、生存率や神経予後良好な生存率は増加しなかった。

【批判的吟味】
・興味深い研究です。今回も論文のPICOから見てみます。
P:成人の院外心停止患者23711人
  窒息・救急隊が関与していないものなどは除外
I:心臓マッサージは100回/分、補助換気は非同期で10回/分(介入群)
C:30:2の同期下CPR(対照群)
O:生存退院率
T:クラスターRCT/ITT解析/クロスオーバー試験
・平均66歳、男 64%、バイスタンダーCPR 43%、初期波形Vf 22%
介入群の心臓マッサージ率は 83%、対照群は77%であり、この6%が今回の介入による差ということになります。また、2秒以上の胸骨圧迫中断は、介入群で3.8回、対照群で7.0回で、有意に減少しています。
・結果ではむしろper protocolで行くと死亡が増える可能性があるという結果でした。
・対照群でも心マ率は77%と十分に高いので差が出なかったのかも知れません。
【個人的な意見】
 絶え間ない心臓マッサージの重要性が叫ばれる中、絶え間ない心臓マッサージそのものが重要では無いかもしれないという検証です。現在はバンドルアプローチなので、推奨されているどの介入が最も重要なのかは見えにくいですね。少なくとも換気による中断そのものはそれほど悪くはないのかもしれませんね。
 
✓ 院外心停止患者に胸骨圧迫と非同期で絶え間ない心臓マッサージを行うのと、通常のCPR法と比較して生存退院率は変わらなかった