読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 食品サイズを小さくしよう/検査について患者に説明すべき事/股関節XpのOAへの診断精度/GBD2013での各リスク因子の死亡への影響/原発性胆汁性肝硬変レビュー

BMJ Lancet 論文 肥満 栄養 検査 医師患者関係 患者教育 放射線 整形 医学統計 医療政策 消化器

BMJ

食品サイズを小さくしよう 
How smaller portion sizes might help tackle obesity*1

 これもまあBMJらしい切り口ですが。この50年の間に食物・ジュースのサイズはだんだん大きくなっていると言われています。言われてみれば、ジュースの大きさも200ml缶から350ml→500mlと時代とともに大きくなっています。最近のコクランレビューでも、「人は大きいサイズで提供される方がよく食べる」と結論されており、提供するサイズを小さくすることで英国民の全体のカロリーの12-16%を減らせるのではないか?という試算があります。一方、我々国民はbig sizeに暴露されることによって徐々に感覚が麻痺してきています。

f:id:tyabu7973:20151213214816j:plain

(本文より引用)

 1993〜2015年までを比較した図が出ていますが、とりあえず食べ物サイズはどんどん大きくなり、それに伴って人間も大きく(太く)なっていきます。サイズを小さくするのに、学校などの公共機関は比較的簡単ですが、商業施設への介入は非常に困難と言われています。一度New Yorkでも介入失敗しています。大衆の理解も得つつ、「多いことは良いことだ」の文化は変わっていく必要があるかもしれません

✓ 食品の大きさへの介入は、行政や企業も巻き込んだ食文化の再生が必要

 

検査について患者に説明すべき事 
Explanining laboratory test results to patients: what the clinician needs to know*2

 様々な医療機関で検査が行われていますが、その検査について患者にどのように説明をすべきかといった極々当たり前のことを考察しています。

 患者が「検査をする理由」や「検査結果の解釈」を理解していると患者満足度が上がるという報告があります。近年、カルテ開示などが進むと患者が直に検査結果を見ることができるようになり、人間ドックなどでは検査項目を独自に選択して、患者選択で検査を行うという状況が増えつつあります。でも、本来は検査の意義・結果の解釈・検査前確率については、検査を行う前に医師が説明する義務があります。検査を行う目的には主に以下の4つがあり、①診断、②モニター、③リスク層別化、④スクリーニングです。これは医師もきちんと意識しておく必要があります。


 そもそも正常範囲(reference interval)とは、健常者の95%が含まれる範囲を指しており、5%の患者は健常者であっても正常値から外れるとも言い換えられます。たとえば、検診として20項目検査を行えば、正常範囲を超える割合は64%にもなるわけです。そして、これが余計な検査につながることになります。このような正常値の意味は、検査を行う前に患者に説明すべきであり、不安の軽減に努める必要があります。

 検査の精度についても、理解が必要であり、健常と病気は常にoverlapする概念であり、検査がそれを全て正しく弁別できるわけではないわけです。感度・特異度ともに100%なんてことはないですよね。更には患者背景によって陽性予測値や陰性予測値は容易に変化します。

 モニター中の検査結果の解釈についても、以下が重要です。たとえばモニタリングを行っていると、本人には全く自覚症状はないのに、検査異常が検出されることがあります。検査異常が出た場合に、考えるべきは以下の3つです。すなわち、①解析前の問題(これは検査の仕方やタイミング)、②検査そのものの問題(機械のランダムエラー)、③生物学的問題(生物学的にある程度の誤差がでる。例:Choは6%は変動する)となります

 スクリーニングについても慎重な解釈が必要であり、一般的には感度が高い検査は見逃しが低いためにスクリーニングとして用いられますが、その分特異度が低いと偽陽性が多くなり、余計な検査が増えてしまいます。スクリーニングだからと特異度があまり低い検査を用いることはあまりお勧めできません。

 

✓ 検査を行う前や結果説明の際に患者に説明すべき内容について整理しておく



股関節XpのOAへの診断精度 
Association og hip pain with radiographic evidence of hip osteoarthritis: diagnostic test study*3

 過去のフラミンガムコホートなどの結果によると、X線における股関節OAの年齢調整罹患率は19.6%と報告されています。そのうち症候性は4.2%で、多くは股関節痛を主訴に精査されてみつかります。一方、膝などでは変形性関節症があってもXp正常だったり、Xpの所見の程度と症状の重症度が相関しないことも言われており、今回股関節Xpの変化と変形性股関節症との関連をシステマティックレビューで評価しています。
 論文のPECOは、

P:①フラミンガムコホート(50歳以上の歩行可能な成人)、②OA initiativeコホート(45-79歳までの膝変形性関節症リスク高い成人)の2つのコホート

E/C:Xpによる変形性関節症変化の有無

O:臨床的股関節変形性関節症

T:ステマティック・レビュー、観察研究

結果:

 平均60歳、股関節痛が頻回にある患者 13-16%、股関節症状のある患者の15-23%に実際に変形性股関節症あり。
 プライマリアウトカムは、
①フラミンガムコホートでは、股関節Xp変化は変形性股関節症の症状に対する感度 36.7%、特異度 90.5%だった。
②OA initiativeコホートでも関節Xp変化は変形性股関節症の症状に対する感度 16.5%、特異度 94.0%だった。

  というわけで、股関節Xpのみの評価では不十分であり、X線異常が出ているという時点で感度はかなり低いため見逃しがかなり多いと。レントゲン変化ではなく、臨床症状で判断しましょうと。ただ、そもそも変形股関節症診断のgold standardがないのが問題であり、今後はそもそも予後に関連したOAの定義をどうすべきかの議論が必要になりそう。

 

✓ 変形性股関節症の診断においては、股関節Xpは感度が低く除外にはつかえない



 

 

■Lancet■

GBD2013での各リスク因子の死亡への影響 
Global, regional, and nationla comparative risk assessment of 79 behavioural, environmental and occupational, and metabolic risks or clusters of risks in 188 countries, 1990-2013: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2013*4

 8月にGBD2013の結果をご紹介しましたが、

tyabu7973.hatenablog.com

今回は疾患ではなくリスク因子毎の死亡への影響を評価した追加調査が報告されていました。今回は、全79の危険因子について、死亡・DALYなどへの影響ランキングが出ていました。

 DALYsは2000年から2013年にかけて、小児や栄養などの発展途上国の問題から、食生活の問題が主問題に変化しています。2013年の第1位は高血圧、第2位が喫煙、第3位がBMI高値と生活習慣関連のリスク因子がトップ3を占める結果となりました。

f:id:tyabu7973:20151213215721j:plain

(本文より引用)
国毎の評価があったため、日本の結果を抜粋してみますが、第1位は高血圧、第2位が喫煙、第3位が空腹時血糖高値、第4位が塩分摂取、第5位がBMI高値でした。何となくわかる気がしますね。

f:id:tyabu7973:20151213215753j:plain
(本文より引用)

 時間があるときにさらっと眺めると興味深いですし、暇つぶしになりますよ(笑)

✓ 全世界的にも死亡やDALYへの影響は飢餓・栄養問題から生活習慣問題へとシフトしつつある



原発性胆汁性肝硬変レビュー 
Primary biliary cirrhosis*5

 PBCのレビューです。いつも通りざっくり箇条書きで。

PBCの世界初の症例報告は、1851年AddisonとGullによる。1950年にはAhrensらが慢性肝内胆管閉塞と定義した。
・1959年にSherlockが42症例を15年間追跡することで徹底的に臨床像を明確化した。
・この時点で、「慢性炎症が肝内症胆管を破壊し繊維化を引き起こす」ことが判明した。
・多くの患者は肝硬変に至らないこともあり、患者団体は病名の変更を訴えている。
PBCでは95%の患者がAMA陽性。健常人でのAMA陽性率は1%未満であり、自己免疫性疾患と考えられている由縁。
・多くの患者は、ALP高値の精査の中で診断されるが、原則診断確定に生検は不要。
PBCは女性に多く(10:1)、発症年齢の多くは50-60歳代。
唯一の治療薬はUDCAだが、40%の患者でしか生化学的反応がない=治療効果がないことがわかっている。
・近年増加傾向だが、増えているのかスクリーニングが進んだのかは不明。
PBCの環境要因では、低所得層に多かったり、髪の染色液などに関連する可能性が報告されている。遺伝性も考えられている。
PBCではnatural killerT細胞が活性化しており、今後の治療標的の一つと考えられている。
ALP高値でAMA陽性で他疾患除外ができていれば診断確定
・T-bilは正常、IgM高値が多い、ALTは正常で、95%でAMA陽性(40倍以上)。AMA抗体価と重症度に相関なし
・AMA陰性の場合にはSp100抗体、gp210抗体も測定を
・生検が必須ではないのは、PBCの典型画像であるCNSDCは10%程度でしか認められないからである

f:id:tyabu7973:20151213215946j:plain(本文より引用)

・画像検査での胆管閉塞の除外は重要
・治療はUDCAが推奨。胆汁吸収を抑制して胆汁性肝障害を減らす。
・証明されている効果として、①生化学的改善、②組織学的進行抑制、③移植フリー期間延長
・全PBC患者に対するUDCAは13-15mg/kg/日の投与が推奨されている。
・UDCAの副作用は軟便(2-9%)・頭痛・体重増加
・自然歴:スクリーニングやUDCAがない時代には診断後5-10年程度で亡くなる病気だった。
・診断時無症候の患者では約5年後に症状が出現。
・UDCA使用で自然歴改善
PBC患者に対するUDCA使用による観察研究のメタ解析では、5年生存 90%、10年生存 78%、15年生存 66%。一方UDCAなしだと5年生存 79%、10年生存 59%、15年生存 32%。
・UDCA投与による生化学的改善は予後良好因子。ただし、40%は投薬によっても治療反応しない
PBCの症状として最も多いのは、疲労感と掻痒感。QOLに関連する。
疲労感はPBC全体の80%にあり。重症度との関連はなく、wax & waneの経過をたどる
掻痒感はPBC全体の20-70%に存在し、UDCAは無効でコレスチラミンが効果があると言われている。リファンピンやオピオイド拮抗薬も有効だが、安全性からコレスチラミンが推奨。抗ヒスタミン薬は効かず。
PBC全体の55%に他の自己免疫性疾患合併があるとされている。

f:id:tyabu7973:20151213220234j:plain
(本文より引用)


PBCの合併症としては、Sjogren症候群が多い。脂質異常症は75-95%に合併するが、非PBC患者ほどは心血管リスクにならない
PBC患者の20-44%に骨粗鬆症を合併する。禁煙・禁酒・運動療法が基本。
・ビタミン欠乏症は様々合併することも。
PBCで肝硬変まで進展することは少ないが、肝硬変に進展すると門脈圧亢進や肝細胞癌を合併する。
PBCの特徴として、肝硬変進展前の静脈瘤出現がある。早期PBCの約6%に静脈瘤あり
・Stage 3-4のPBC患者の33%に6年の経過で食道静脈瘤あり
・静脈瘤のスクリーニングは肝硬変が明らかになってからでOK
・肝癌発症率は、肝硬変進展例では1-6%/年程度。肝細胞癌リスクは、高齢・男性・門脈圧亢進・UDCA反応不良・進行期PBC
非代償性肝硬変に至った場合には肝移植が標準治療①非代償性、②T-Bil≧6mg/dL、③MELD≧12を満たしたら移植センターへ紹介。
・肝移植後PBC再発率は25%
PBC患者の5%でAMA陰性となることがある。陽性・陰性で臨床徴候に差はない。
・自己免疫性肝炎のoverlap症例はあり、非胆汁うっ滞性肝障害を来す。ヒスパニックに多く、診断基準としてはParis基準が用いられる。
overlap症例ではPBC単独よりも疾患の進行が早い
・AMAのみ陽性で肝障害がない患者も、原則PBC前駆段階と考えられ、5年の経過で19%がPBCを発症すると言われている。


✓ PBCの全体像を押さえておこう