栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 肥満若年1型糖尿病患者へのメトホルミン/予定帝王切開出産時の長期予後/アンモニアの不適切な測定/門脈炎合併の憩室炎の一例/2型糖尿病患者へのGLP-1阻害剤

■JAMA■

肥満若年1型糖尿病患者へのメトホルミン 
Effect of metformin added to insulin on glycemic control among overweight/obese adolescents with type 1 diabetes*1

 これは以前から知りたいと思っていたテーマです。1型糖尿病は昔はみんな痩せてたので、こんな疑問は出なかった様ですが、時代とともに肥満のある1型が増えてきたんだそうです。1型糖尿病患者のうち24%がoverweight、15%がobeseという報告すらあります。今回はこの肥満を伴う1型糖尿病患者に対するメトホルミン効果を検証したランダム化比較試験です。
 論文のPICOは

P:12-20歳の1型糖尿病患者
 10歳以前発症もしくは自己抗体陽性で、ポンプか3回打ちを1年以上。
 1日インスリン 0.8単位/kg以上、HbA1c 7.5-9.9%
I:メトホルミン群(500mgから開始し2000mgまで増量)
C:プラセボ
O:26週間時のHbA1c
T:RCT/ITT解析/盲検化
結果:
 服薬アドヒアランスはメトホルミン 83%、プラセボ 88%
 平均15歳、DM歴 7年、HbA1c 8.8%、インスリン 1.1単位/kg/日
 プライマリアウトカムのHbA1cはメトホルミン群で+0.2(0.0 to 0.4)、プラセボ群で+0.2(-0.1 to 0.4)で両群の差は認めなかった。
 体重はメトホルミン群では変化なかったが、プラセボ群では+2kg、インスリン量もメトホルミン群の方が少ない結果だった。
 副作用は消化器症状が70%に出現したが重症な者は認めなかった

  まあ、サロゲートアウトカムの評価ではあるんですが、インスリンに加えるメトホルミンという意味合いではあまり効果は少ないのかもしれません。まあ、体重が減ってインスリンが減るだけでも十分かもしれませんが・・・
 それにしても、パラメーターが二つ動くRCTはわかりにくいですね。この間のエンパグリフロジンのやつもそうでしたが、介入項目以外のパラメーターも同時に動いているので、単純に介入薬の効果かを見積もりにくくなります。もちろん実臨床なんてそんなもんですが・・・

 

✓ 過体重のある1型糖尿病患者にインスリンに加えてメトホルミンを加えてもHbA1c値は変化しなかった



予定帝王切開出産時の長期予後 
Planned cesarean delivery at term and adverse outcomes in childhood health*2

 最近帝王切開が増えているせいか帝王切開関連のstudyが非常に多くなってきています。ブラジルでは帝王切開率が50%を超えたとも言われています。一方、帝王切開で生まれた児は、1型糖尿病、喘息、炎症性腸疾患のリスクになることが報告されています。ただ、過去の研究では長期follow upのデータは少なく、予定帝王切開と緊急帝王切開を区別していないなどの問題点があり、今回再度観察研究で評価されています。
 論文のPECOは、

P:イギリス・スコットランドで1993-2007年の間に生まれた全ての子供で初産かつ合併症のない正期産
E:予定帝王切開
C:①緊急帝王切開、②経腟分娩
O:子供の喘息入院
T:後ろ向き観察研究/国民レベル
結果:
 帝王切開群は有意に年齢が高く、体重が多く、1型糖尿病の有病率が高かった。
 ①緊急帝王切開と予定帝王切開の比較では、プライマリアウトカムの喘息は、調整HR 1.00(0.90-1.12)と有意差なし。同様にIBD悪性腫瘍有意差を認めなかった。1型糖尿病有意に増加していたが、ベースラインから差がついており、結論は出せない結果だった。
 ②経腟分娩との比較では、プライマリアウトカムの喘息による入院は調整HR 1.22(1.11 to 1.34)と有意に帝王切開群で増加した。同様に子供の死亡率も帝王切開群の方が有意に高かった(HR 1.41:1.05-1.90)。

f:id:tyabu7973:20151216004135j:plain(本文より引用)

 確定的な結論とは言えないものの、過去の先行研究と類似した結果であり、帝王切開そのものは、経腟分娩と比較して児の成長に影響を与える可能性があることが示唆された。

 

✓ 帝王切開そのものは、経腟分娩と比較して児の成長に影響を与える可能性があることが示唆された



アンモニアの不適切な測定 
The importance of clinical context when interpreting serum ammonia levels*3

 恒例になりつつあるJAMA intのteachable moment。まあ、切り口が似ているのであんまり出し過ぎると飽きられるかなあという印象もありますが。

 まずは症例から。40代の男性が、間欠的な不安発作と進行性の倦怠感を主訴にプライマリケアの外来を受診。既往歴で6年前にイラク出兵して以来のパニック発作があった。不安発作の間は倦怠感が強くなる。3ヶ月前に東アジアに出兵先が変更になり、その後症状が強くなっている。新しい任地に移動してから不安発作がひどくなったと自覚している。

 プライマリケアのクリニックでは資源が少なかったが、アンモニア献体を冷凍凍結してカリフォルニアの検査機関まで郵送。結果が戻ってくるとなんとアンモニア値 643μg/dLと異常高値だった。肝機能も軽度上昇し、GOT 89、γGTP 81、腹部超音波検査では脂肪肝の所見を認める程度だった。

 高アンモニア血症を来す肝疾患は明らかではなく、尿素サイクル異常症の可能性を疑い、さらなる精査が必要との判断からアメリカに輸送され、三次医療機関を受診した。遺伝専門医を受診し、タンパク負荷後の尿中アミノ酸や血清アミノ酸などを評価したが全ての結果は正常だった。また、アンモニアの再検査では正常であり、初期の検査結果は偽陽性だったことが明らかになった。

 そもそも”慢性的な倦怠感”は非常にチャレンジングな主訴ですね。一般的な検査として、血算・甲状腺・肝腎機能を確認するのは、基本的な検査ですが、特別疑う条件がないのに、全ての原因となる疾患の検査を行うことは、現実的でない上に有害な可能性があります。検査前確率が十分高くない患者にやたらと検査だけを行うと偽陽性に悩まされることになるでしょう。この患者はパニック障害で十分説明がつく症状だったのにもかかわらず、low yieldなアンモニア測定を行うことで、アメリカ往復と30日間を検査に費やすことになってしまいました・・・検査を出すことが有害なこともあることは認識すべきですよね。このあたりは日本の検診腫瘍マーカーにも同じことを感じています。

 

✓ 検査の偽陽性は思った以上に害が出る可能性があり、検査前に必要性を十分吟味すべき。医師の不安軽減のために検査を行わない



 

■NEJM■

門脈炎合併の憩室炎の一例 
Pylephlebitis as a complication of diverticulitis*4

 NEJMのimageから。45歳の男性で、4日前からの黄疸・発熱で救急外来を受診。採血検査では白血球増多、アミノトランスフェラーゼ上昇から、化膿性胆管炎を考慮して、広域抗菌薬を開始したが、症状の改善は今ひとつだった。

 腹部CTでは、S状結腸憩室が穿孔し、腸間膜にガスを認めた。更には下腸間膜静脈から皮静脈、門脈にかけてガスが多数認められた。この所見は門脈炎に矛盾しない所見だった。下腸間膜静脈周囲の脂肪織濃度上昇は炎症を示唆し、肝臓内にも線形のガス像を伴っていた。

f:id:tyabu7973:20151216004459j:plain(本文より引用)

 緊急ハルトマン手術が施行され、培養で検出された大腸菌をカバーすべく抗菌薬投与が開始された。術後回復は良好で、18日には軽快退院された。
 門脈炎は、門脈の感染性化膿性血栓症であり、憩室炎や虫垂炎、壊死性膵炎、炎症性腸疾患などの腹腔内感染に合併することがよく知られている。起因微生物では、Bacteroides fragilis大腸菌が最も多い。

 

✓ 憩室炎などの腹腔内感染に門脈炎・門脈内ガスを合併することがある

 

 

2型糖尿病患者へのGLP-1阻害剤 
Lixisenatide in patients with type 2 diabetes and Acute coronary syndrome*5

 最近やたらと糖尿病患者へのRCTが出てきていますが、今回はついにGLP-1製剤の真のアウトカムへの影響を検証したRCTです。
 論文のPICOは、

P:180日以内にACSに罹患した2型糖尿病患者6068人
 ※30日以内のPCI除外、eGFR<30・HbA1c<5.5%、>11.0%も除外
I:GLP-1製剤週1回注射
C:プラセボ
O:心血管死亡・心筋梗塞脳卒中狭心症入院の複合アウトカム
T:RCT/非劣性Δ=1.3/その後superior試験へ
結果:
 平均60歳、DM歴9年、HbA1c 7.7、MI 22%、インスリン40%、メトホルミン 65%
 アドヒアランスは75%
 プライマリアウトカムは、プラセボ群で399/3034人(13.2%)、GLP-1群 406/3034人(13.4%)で、プラセボと非劣性が証明された(調整HR 1.02:0.89-1.17)

f:id:tyabu7973:20151216004905j:plain
(本文より引用)

 superiorは証明されず。
 HbA1c値はGLP-1群の方が0.27%有意に低かった。

 結局GLP-1製剤もプラセボには劣らない薬剤であることが証明されたわけですね・・・しかもまあ、HbA1cが下がっても真のアウトカムには影響出ませんねえ。フォローアップ期間が少ないという反論もありそうですが、どちらにしてもかなり厳しそうです。


✓ 週1回のGLP-1製剤はHbA1c値は有意に低下させたが、心血管関連のイベントに対する効果はプラセボに非劣性だった