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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:肝細胞癌の診断/カルシフィラキシスの診断/急性頚部神経根症状の管理/MEN 1の診断

MKSAPまとめです。
これはまた時間かかりますな。さて寝よう。

肝細胞癌の診断
Diagnose hepatocellular carcinoma

❶症例 
  55歳男性が、代償性肝硬変の定期通院で受診。最近は症状は無く、既往歴では慢性B型肝炎感染と食道静脈瘤があった。内服薬はナドロールのみ。
  身体所見では、T 37.6℃、BP 120/70mmHg、Pulse 68bpm、RR 16/min、BMI 31だった。くも状血管腫が頚部と前胸部にあり、脾臓触知。
 腹部超音波のスクリーニングで、肝臓に結節影と脾腫、門脈圧亢進に矛盾しない腹腔内静脈側副血行路の発達を認めた。肝右葉に径1.6cmの結節を認め、6ヶ月前の超音波検査では認めなかった。 

 この患者の最も適切な次に行うべき検査はどれか?
A.  腹部造影CT
B.  肝生検
C.  6ヶ月後に腹部超音波再検
D.  血清CEA値測定

 肝細胞癌の診断
 本患者で、最も適切な次に行うべき検査は、腹部造影CTである。肝細胞癌は進行期の肝疾患患者に発症するのが一般的だが、B型肝炎では肝疾患の進行が無くても肝細胞癌が発症するかもしれない。肝細胞癌は新生血管から血液供給を受けており、肝動脈の枝から栄養供給されている。特徴的な血管供給であることから、ダイナミックCTやガドリニウム造影MRIなどの検査によって癌の可能性を見極めることが可能である。これらの検査は超音波よりは検出能が優れているが、現在のスクリーニングガイドラインは、6-12ヶ月毎の腹部超音波検査が推奨されている。

❸その他の選択肢
肝生検:肝細胞癌の診断は、肝硬変患者では非侵襲的な画像検査によってなされる。CTとMRIは肝硬変患者の肝細胞癌で2cmよりも大きなものに対する感度・特異度が非常に高い。もし、CTやMRIでの所見が画像の診断基準を満たしていれば肝生検は不要であり、肝細胞癌として治療可能となる。

腹部超音波再検:6ヶ月以内の再検は、腫瘍や結節がなかった患者と同様のスクリーニング期間であり、肝臓病変が1-2cm程度の場合には診断的補助にならない。

血清CEA値:血清CEA値は、肝細胞癌診断時には用いない

Key Point
✓ 慢性B型肝炎もしくは肝硬変患者で、腹部超音波スクリーニングで肝細胞癌が疑われた場合には、ダイナミックCTかガドリニウム造影MRIが次に行うべき検査である。

Forner A, Vilana R, Ayuso C, et al. Diagnosis of hepatic nodules 20 mm or smaller in cirrhosis: prospective validation of the noninvasive diagnostic criteria for hepatocellular carcinoma [erratum in Hepatology. 2008;47(2):769.]. Hepatology. 2008;47(1):97-104. PMID: 18069697

 

 

カルシフィラキシスの診断
Diagnose calciphylaxis(uremic calcific arteriopathy)

❶症例
  74歳女性が、慢性・有痛性の最近潰瘍化した下肢病変のために入院となった。4週間前から有痛性皮下結節を認めた。既往歴は末期腎不全で透析中。今朝透析中に下肢病変の一部が暗赤色になり、自発的に潰瘍化した。下肢は継続的に痛がっており、皮膚の鈍い持続的な痛み。発熱は無く、薬剤アレルギー無く、内服薬は、ESA製剤、リシノプリル、メトプロロール、ニフェジピン、セベラマー、アスピリン
  身体所見では、T 37.3℃、BP 132/72mmHg、Pulse 88bpm、BMI 31。両下腿に網状の紫斑があり、触診で圧痛があり皮下結節も触知。皮膚所見は以下。

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(本文より引用)

採血結果は、Ca  10.1mg/dL、PTH 726pg/ml、IP 7.2mg/dL

本患者の最も疑われる診断はどれか?
A.  カルシフィラキシス
B.  腎性全身性線維症
C.  結節性多発動脈炎
D.  壊疽性膿皮症

 ❷カルシフィラキシス
  本患者で最も疑われるのはカルフィラキシスであり、尿毒症性石灰化動脈症として知られている。カルシフィラキシスは稀な病態でほとんどが末期腎不全で腎代替療法を受けているような患者に発症し、血清CaやPが異常増加する。Ca×IP>55-70mg2/dL2。多くの場合には、血清PTH値も著明に上昇している。カルフィラキシスは通常、角張った紫斑と軟部組織の石灰化による皮下結節や血管石灰化による皮膚や皮下組織の血流障害を引き起こす。皮膚はしばしば虚血になりたいていは非常に痛い。カルフィラキシスは、予後不良で細菌が定着し、2次性菌血症や敗血症を来す。

❸その他の選択肢
腎性全身性線維症:腎性全身性線維症は、通常末期腎不全患者が、MRI造影検査でガドリニウムに暴露された際に、近位四肢遠位部から始まる進行性の皮膚硬化と黄色の肥厚丘疹と結節が特徴的な疾患である。腎性全身性線維症は、今回認められているような血管変化は来さない

結節性多発動脈炎:結節性多発動脈炎は網状の紫斑と皮下結節を来すことはあり、一部の患者では潰瘍化することもある。ただ、末期腎不全との関連は明らかではなく、さらにはPTHホルモン上昇やCa×IP増加は来さず、これらを考慮するとカルフィラキシスが最も疑われる。

壊疽性膿皮症:壊疽性膿皮症は通常皮下結節は伴わない潰瘍性病変として現れる。病変辺縁に炎症を来すことはあるが、角張った紫斑にはならない。網状だったり角張ったりしている場合には血管由来を考慮する。壊疽性膿皮症は通常腎疾患との関連はない。

Key Point
✓ カルシフィラキシス病変は、非常に痛みが強く、角張った網状紫斑で、水疱・潰瘍・硬い痂皮を伴う黒色壊死を認める

Weenig RH, Sewell LD, Davis MDP, et al. Calciphylaxis: natural history, risk factor analysis, and outcome. J Am Acad Dermatol. 2007;56:569-579. PMID: 17141359

 

 

急性頚部神経根症状の管理
Manage acute cervical radiculopathy

❶症例

  58歳女性が、家の天井塗装を数時間行った後から、2日前続く、後頚部の焼けるようなかつ刺すような痛みと、左腕の放散痛とのことで来院された。外傷既往は無く、他に自覚症状なし。軽度のしびれと感覚異常が左手背にあり。

 身体所見では、バイタルサインは正常。頚部の可動域は疼痛のために制限されているが特に伸展によって疼痛が誘発される。軸方向の加重によって痛みが増悪し、左手背の感覚がわずかに低下している。運動麻痺はなく腱反射は左右差なし。

 この患者で最も適切な管理はどれか?
A.  鎮痛薬を使用し積極的な運動は避ける
B.  頚部牽引
C.  筋電図+神経伝導速度
D.  頚椎MRI

 ❷急性頚部神経根症状
 本患者は鎮痛剤と積極的な運動回避が重要である。典型的には神経根圧迫に代表されるような神経根症状に対しての初期治療は、筋力低下と脊髄症状の有無を確認することである。神経根圧迫による筋力低下は罹患神経の支配域に及び、脊髄症は傷害されている神経およびそれ以下の神経支配域に症状を来す。急性の頚部神経根症状の患者で運動麻痺が無い場合には、軽度の神経巣症状を伴ったとしても画像検査や神経伝導速度は不要である。管理としては、症状の緩和につとめることであり、多くの患者では特に介入なしで症状が完全に回復する。

❸その他の選択肢
頚部牽引:非外科的治療法としては、様々なものがあるが、鎮痛薬に加えて用いられるのが、短期間の全身性ステロイド、頸椎コルセット、頸椎枕などであるが、十分な検証がなされていない。頸椎牽引についても有効であることは十分実証されておらず、初期治療としては推奨されていない。

頸椎画像検査:画像検査は原則病歴・身体所見から検査前確率が高いと判断した症例に行うべき。急性外傷を除いて、頸椎の物理的な痛みで画像検査を要することはほとんどない。筋力低下や腱反射低下、脊髄に由来する症状が或場合には、MRIやCTの脊髄検査を行うべきである。

筋電図・神経伝導速度:筋電図と神経伝導速度は外科的手術が考慮されているような局所的な症状の場合に有用かもしれない。ただ、急性神経根症状の初期評価としては不要である。

Key Point
✓ 非外傷性で筋力低下や脊髄症の所見が無い急性頚部神経根症状の患者では、画像診断は不要で保存的治療が可能である

Carette S, Fehlings MG. Clinical practice. Cervical radiculopathy. N Engl J Med. 2005;353:392-399. PMID: 16049211

 

 

MEN1の診断
Diagnose multiple endocrine neoplasia type1

❶症例

  23歳女性が、3ヶ月前からの無月経と乳汁分泌を主訴に来院。彼女の父は再発性の腎結石があり、兄弟は消化性潰瘍の既往がある。
 身体所見では、バイタルは正常でBMI 23。両側乳頭から乳汁分泌あり。他の身体所見は正常で視野異常も認めなかった。

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(本文より引用)
頭部MRIで7mmの微小腺腫が下垂体に認められた。

 本患者の最も考えられる診断はどれか?
A.  自己免疫性多腺性内分泌不全症候群1型
B.  橋本病
C.  MEN1型
D.  MEN2型

 ❷MEN1型
 本患者で最も考えられるのはMEN1型であり、下垂体、副甲状腺膵臓の3つのPが特徴的である。高プロラクチン血症と1cm以下の下垂体腺腫からは、微小プロラクチノーマが疑われる。更に、原発副甲状腺機能亢進症があり、家族歴もあることから、彼女の家系にMEN1型があると思われる。父は腎結石を繰り返しており、MEN1型を合併して高PTH血症があると考えられた。また、兄弟の消化性潰瘍は、ガストリン分泌性膵内分泌腫瘍(PNET)が疑われる。MEN1型では、原発副甲状腺機能亢進症は、腺腫というよりは過形成を合併している。メニン遺伝子の変異は、常染色体優性遺伝である。

 ❸その他の疾患
 自己免疫性多腺性内分泌不全症候群1型自己免疫性多腺性内分泌不全症候群1型は、慢性粘膜皮膚カンジダ症、自己免疫性副甲状腺機能低下症、副腎不全を特徴とする常染色体劣性遺伝の疾患である。本患者では、副甲状腺機能亢進症はあるが、副甲状腺機能低下症ではなく、本疾患は考えにくい。
 橋本病
甲状腺ホルモンは正常であり考えにくい。
 MEN2型MEN2型は原発副甲状腺過形成、褐色細胞腫、甲状腺髄様癌が特徴的である。本患者では副甲状腺機能亢進はあったが、本疾患を示唆するような家族歴や臨床症状を来していない。

Key Point
✓ MEN1は下垂体腫瘍・副甲状腺腫瘍・膵腫瘍の3つのPが特徴的である

Brandi ML, Gagel RF, Angeli A, et al. Guidelines for diagnosis and therapy of MEN type 1 and type 2. J Clin Endocrinol Metab. 2001;86(12):5658-5671. PMID: 11739416

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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