栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:上肢の血栓塞栓症/成人ASDの手術適応/高K血症の原因

今週カンファアップします。
忘年会シーズンですねえ。 

上肢の血栓塞栓症 Upper extremity embolism

 上肢の塞栓症は普段あまり経験する機会が少ないので、ちょっと確認。急性の四肢動脈塞栓症のほとんどは心臓由来。で、もちろん下肢の方が上肢よりも頻度が高いです。塞栓源は精査の結果でもはっきりしないこともある様ですが、
①心房細動患者の左房血栓
心筋梗塞による左室収縮能低下患者の左室血栓
③機械弁のデブリ
④感染性心内膜炎の敗血症性塞栓
などがあります。そのほかには奇異性塞栓、A to Aも起こりうる模様です。

 動脈塞栓の頻度として、最も多いのが大腿動脈(28%)、上腕動脈(20%)、腸骨動脈(18%)、膝窩(17%)などという報告があります。動脈硬化性の閉塞よりも塞栓症の方が急性虚血症状を来しやすいのは了解可能です。

 治療は、2012年のACCPガイドラインによれば速やかなヘパリンによる抗凝固療法の開始と必要時の血管内治療および外科的治療になります。多くの場合4-6時間で不可逆的な変化が起こる可能性があり、状況によっては切断術が必要になります。

 ✓ 上肢塞栓症の治療開始は速やかに。golden timeは4-6時間。

 

 

成人ASDの手術適応 Indication for ASD closure

 ASDの手術適応を考える上では、経胸壁心臓超音波検査は必須です。また、状況によっては経食道心臓超音波や心臓MRIが用いられることがあります。重要なのはASDの確実な診断および他に合併する心疾患の有無を確認すること。


 ASDの手術適応の最もメインは右室の容量増加であり、右室拡張を確認すべきです。運動制限や倦怠感、呼吸困難感、心不全、奇異性塞栓、不整脈などが症状として出る可能性があります。奇異性塞栓やorthodeoxia-platypnea(座位や立位での低酸素血症)が手術適応になります。

 逆に重度の肺高血圧の合併やEisenmenger化してしまった場合には手術は禁忌になります。これは国家試験的な知識ではありますが、右心系圧が非常に高まった状態で穴を塞ぐと肺高血圧が悪化して死亡するリスクが高まります。どの程度の肺高血圧まで許容されるかは議論の分かれているところ。

 ✓ ASD患者の手術適応と禁忌は覚えておく

 

 

高K血症の原因 Cause of hyperkalemia

 高K血症で思い出すのは、すごく優秀だった後輩研修医が、「カリウムが7です!」って青ざめて報告してきたことです。色々やりながら、結局手最終的には溶血で再検査をしたら正常値だった・・・というオチ。まあ、でも最初からそこ狙いだと怖いので、青ざめて対応するのは大事なのですが。


 高カリウム血症の原因としては、主に細胞からのカリウム放出が亢進している場合と、尿中のカリウム排泄が低下している場合に分けられます。

①細胞からのカリウム放出の亢進
 ・偽性高カリウム血症
 ・代謝性アシドーシス
 ・インスリン欠乏、高血糖、高浸透圧
 ・異化亢進
 ・β遮断薬
 ・運動
 ・高カリウム性周期性四肢麻痺
 ・ジギタリス過量服用
 ・赤血球輸血
 ・サクシニルコリン
 ・塩酸アルギニン
 ・ATP依存性カリウム受容体agonist(カルシウム拮抗薬・ミノキシジル等)
②尿中カリウム排泄の低下
 ・アルドステロン分泌の低下
 ・アルドステロンへの反応性低下
 ・循環血液量減少
 ・急性・慢性腎不全
 ・Gordon症候群
 ・空腸導管

 意外と知らない病態もたくさん。例えばβ遮断薬使用するとNa+-K+-ATP ase活性が低下して、細胞外Kの細胞内への移行が抑制され高K血症が出現するとか、空腸導管術後に高カリウム血症を来す理由として、空腸粘膜は細胞間孔が大きく電解質の透過性に優れているため、K含有が多い尿が空腸粘膜に接することでKが再吸収されてしまう病態があるのだそう。昨今はほとんどが回腸導管だが、回腸導管でも同様の空腸導管症候群を来したという症例報告もあり、覚えておいて損はない。

 ✓ 高K血症の原因検索の幅を広げておこう