栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 2型糖尿病での過剰検査/鼓膜にセメント!/ゲスト著者問題/治療抵抗性高齢者うつ病へのアリピプラゾール/プラーク型のグロムス血管腫

BMJ

2型糖尿病での過剰検査 
HbA1c overtesting and overtreatment among US adults with controlled type 2 diabetes, 2001-13:observational popuation based cohort*1

 ADAの推奨などを見ても、糖尿病患者のHbA1c測定間隔は3ヶ月毎、年4回程度といわれており、日本では自分たちも含めてとかくHbA1cを測定しすぎる傾向があります。もちろん、ここの事情によって、測定間隔が短い方が良い理由があるかもしれませんが、とかく数字だけを見て判断する”HbA1c外来”になってしますいのも事実でしょうか。今回英国の国民レベルのデータを用いた観察研究で、ある程度落ち着いた糖尿病患者でのHbA1c測定がどの程度過剰に行われているかを検証しています。
 論文のPECOは、

P:24ヶ月以内に連続してHbA1c<7.0%を達成している2型糖尿病患者
 ※4ヶ月以内にインスリン使用なし、1年以内に糖尿病関連の合併症なし
E/C:年齢、性別、居住地、合併症、Charlson comorbidity index、治療内容、治療変化、専門医
O:24ヶ月以内のHbA1c検査測定頻度
T:後ろ向き観察研究
結果:
 31545人が解析対象、平均年齢58歳、平均HbA1c 6.2%、内服薬なしが33%
 プライマリアウトカムであるHbA1c測定頻度は、年2回以内が39.7%、年3-4回が54.5%、年5回以上が5.8%だった。
 年2回以内と比較して検査が多くなる要因としては、①年齢があがる、②合併症(CKDや心不全心筋梗塞等)、③ベースラインの投与薬剤数が3種類以上が関連していた。
 専門医別で言うと、内分泌科医と腎臓内科医が有意に検査頻度が多かった。また、診療にあたっている医師が1人増える毎に14%ずつ検査回数が増える計算。

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(本文より引用)

 ちなみにこのレベルの安定した糖尿病患者では、ガイドライン推奨のHbA1c測定間隔は年2回程度になるのだそうで。年2回だともう外来に来る必要はないでしょうか。一方で安定していた糖尿病の方が、来院しなくなってから2年後にHbA1c 10%台まで悪化して再入院になったり、中断後の血管障害で入院になったりするcaseを経験すると、間隔を延ばせば良いという単純な話ではなく、測定しない方でどのようなfollow upをすべきかを検討する必要がありますね。生活習慣のサポートは継続する必要があり、それはチームベースドな対応でも良いのかもしれません。

 

✓ HbA1c測定頻度は概ね過剰。HbA1cを測定する以外にできることはたくさんあるのでは。



鼓膜にセメント! 
A case of cement in the ear*2

 BMJの症例報告。鼓膜にセメント!という結構衝撃的なニュースです。23歳の男性で、煉瓦屋さんとして働いている際にセメントが飛散して耳の中に入ってしまったとのことで救急外来を受診。現場で耳を水で洗浄してから来院したが、残念ながらセメントが鼓膜表面に残存してしまっていた。アルカリ外傷も聴力低下も軽度だったため、保存的加療の方針となった。4週間後にはセメント付着物は外耳道の外側へ移動。同時に聴力も回復傾向でした。

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(本文より引用)

 外耳道だけでなく、鼻やのどには上皮運動があり、異物も自然に排出される可能性があるため、いたずらに外科的除去を試みて鼓膜損傷を来すことは避けるべき。

✓ 鼓膜異物は、状況によっては保存的に対処可能であろう

 

ゲスト著者問題 
How I was nearly duped into “authoring” a fake paper*3

 医学論文の様々な問題を取り上げているBMJですが、今回はゲストライターについてです。以前はゴーストライターが問題になっていましたが、最近はゲストライターの問題が多くなっているのだそうです。ICMJE(International Committee of Medical Journal Editors)では、論文作成に有意に貢献した者のみをauthorにして、各authorの役割をきちんと明記するように推奨しています。

 これに関しては500以上のjournal editorが賛同しているもののそれを確認するような方法がないのも事実です。過去には、このfirst authorを巡る争い?みたいなものもたくさんあったとElizabeth Wagerさんは言います。ロンドンの熱帯医学&公衆衛生学の教授であるMartin Mckeeさんによれば、発展途上国からやってきた若者が研究に大きく貢献したのに論文のauthor名から排除されたりすることがあると指摘しています。無理矢理にねじ込んだauthor名を功績とするのはいかがなものかと。


 最終的には映画のエンドロールみたいにすべきではないよねと。貢献度合いをきちんと明記して、患者も含めた”author”から”participant”みたいにするべき時期なのかもしれませんねと結ばれていました。


✓ ゲストライターの問題は世界的にも根深く存在している



 

■Lancet■

治療抵抗性高齢者うつ病へのアリピプラゾール 
Efficacy, safety, and tolerability og augmentation pharmacotherapy with wripiprazole for treatment-resistant depression in late life: a randomised,double-blind,placebo-controlled trial*4

 高齢者うつは比較的コモンな疾患であり、機能障害や自殺に関連し死亡率を増やすことが知られているが、軽く見られている。プライマリケアが果たす役割は大きく、現在大きな問題は第一選択の抗うつ薬であるSSRISNRIに抵抗性の患者が55-81%もいることである。今回の研究は、その治療抵抗性高齢者うつ病に対するアリピラゾール(エビリファイⓇ)の効果を検証したRCTである。
 論文のPICOは、

P:60歳以上でMADRSスコア≧15点以上のうつ病患者
 ※最低12週間のベンラファキシン(本邦未発売)で無効
 ※認知症や薬物・アルコール依存などを除外
I:アリピラゾール2mgから漸増し10mg/日まで群
C:プラセボ
O:最終の2回受診ともにMADRS≦10
T:RCT/ITT解析
結果:
 平均66歳、70歳以上 27%、女性 57%、糖尿病 15%、内服薬 5種類、ベンゾジアゼピン 40%、うつエピソード罹病期間 104週、MADRS 23点
 プライマリアウトカムは、アリピラゾール群 40/91人(44%)、プラセボ 26/90人(29%)で、OR 2.0(1.1-3.7)で有意にアリピラゾール群の方が良く、NNT 6(3-81)だった。

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(本文より引用)

 副作用はアリピラゾール投与で有意に増え、アカシジアやパーキンソン症状が出現した。

 高齢者の治療抵抗性うつ病に対してエビリファイⓇが良いという結果でした。ただ、高齢者でうつ病だと思って治療して改善しなかったら、他に原因が無いかどうかを必死で調べるだろうなあ。

✓ 高齢者の治療抵抗性うつ病に対してアリピラゾール(エビリファイⓇ)は効果あるが、副作用は増える



プラーク型のグロムス血管腫 
Plaque-type glomuvenous malformations in a child*5

 2014年7月に、生下時から背部に認める病変の評価のために1ヶ月児が外来を受診。家族歴はなく、身体所見では、背部にピンク色のプラークを認め、周辺をhaloで囲まれて中央部は青みがかっていた

 プラークは圧縮性は不十分だったが柔らかく、痛みは無く、啼泣で目立った。筋骨格系検査は正常で、血算・肝機能・腎機能・凝固能も正常だった。プラークは血管奇形と一致した。幼少期においては、このようなびまん性の皮膚病変は血管奇形から生じることが多い。一般的な静脈奇形では、通常下肢や頭頚部に出現する。青色ゴムまり様母斑症候群は上肢や体幹に出現し消化管病変と関連。グロムス奇形は四肢や背部に出現し、皮膚外病変は認めない。
 
 グロムス血管腫の診断は、生検検体で平滑筋αアクチンが陽性に染まることによってグロムス細胞の層が血管を裏打ちして、不規則に拡張している像が得られ、確定診断となった。生後6ヶ月時点でレーザー治療を受け、サイズや色の縮小が著明に見られている。2015年の最終受診時には元気で新規病変を認めなかった。

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(本文より引用)

 プラーク型グロムス奇形は家族性に集積することも孤発性のこともある。プラークはたいてい生後1ヶ月以内に認められ、徐々に増大する。

✓ 新生児のグロムス血管腫は多発し背部や四肢に多い