読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM レジデントの鬱症状の頻度/ハイバリューケアが提供できる医者に教育する方法/SPによる介入が無駄な検査を減らすか?/爪にできた扁平上皮癌/疥癬流行集団への疥癬集団治療の効果

■JAMA■

レジデントの鬱症状の頻度 
Prevalence of depression and depressive symptoms among resident physicians*1

 レジデントにはうつが多く、うつ状態にあるレジデントは医療過誤やエラーが多いことが知られています。ただ、実際にどの程度うつ病もしくはうつ症状が起こるのかについてのデータは報告によってまちまち。今回は1963-2015年までに報告されたうつの疫学に関する報告のシステマティックレビューです。今回のシステマティックレビューはPRISMAに基づいて行われています。

 今回は疫学研究であり、54研究が評価対象になっており、うつの診断には構造的インタビューもしくは妥当性が評価されている質問指標で評価されている研究が組み入れられています。54研究のうち31が横断研究、23が縦断研究です。結局インタビューによる評価をアウトカムに用いたのは3研究のみでした。


 平均141人対象、合計17560人が対象。研究のうち39研究はlow risk biasの研究でした。日本の研究は全部で3研究。プライマリアウトカムのうつの頻度は28.8%(25.3-32.5%)。研究によって頻度は大きく異なり、多いものでは63.2%、少ないものでは9.8%という結果です。評価方法も実に様々ですが、日本の研究はCES-Dという簡易自己評価尺度を使用していました。

f:id:tyabu7973:20151225123116j:plain(本文より引用)

 異質性はI2=95.8%と非常に高いので一般化はできませんが、そもそも研修プログラムや環境が全く違うものの比較なのでこんなもんかなという気もします。何にせよ、うつにならないような工夫は必要ですが、ある程度うつになってしまうのも事実であり、その場合の対応もしっかりと学んで整備しておく必要がありますね。

✓ 研修プログラムのうつ病発症頻度は30%弱程度



ハイバリューケアが提供できる医者に教育する方法 
Training physicians to provide high-value, cost-conscious care*2

 医療費の高騰が問題になっている昨今、high value careが提供できる医師を育てていくことは課題の一つです。高価値かつ費用を意識したケアがどのように学ばれているのか、教育的な介入の開発がどのように行われているかが評価されています。

 Pubmed・EMBASE・ERIC・コクランのレビューで79文献を評価。そのうち14研究がRCTでした。高価値およびコストを意識したケアを提供するための教育を推進していくために必要な項目をプライマリアウトカムとしています。研究の大部分がPre-post研究でほとんどが北米の研究、対象は臨床医が36.7%、レジデントが6.3%、研修医が15.2%でした。研究の内容には、知識伝達が12研究、フィードバックが7研究、環境調整が1研究10研究(71%)が効果ありという結果に。

①知識伝達
・high value careについて教育する
・検査の価格が表示される
・定期的に医療経済を教える
ガイドラインをルーチン化する
・患者の好みを取り入れる

②フィードバック
・診療内容のフィードバック
・回診やカンファレンスで「この検査の適応は?」と確認する

③環境調整
・high value careにインセンティブ
・上級医の理解

 と、不要な検査や治療が減るのだそうです。

 何にせよ、まずは何がhigh value careで何がlow value careなのかについてよくよく検証してそれを公表する必要があります。highとlowの基準は単なるコストの問題だけではないでしょう。真に価値のある医療行為はどれかを見極めるのは難しいですね。

 

✓ high value careを提供するために必要なことは何かを理解する



SPによる介入が無駄な検査を減らすか? 
Promoting patient-centered counseling to reduce use of low-value diagnostic tests*3

 これもlow value、high value careについてなのですが、さきほどのテーマで言うとフィードバックになるのかなというところです。low value careについては、近年Choosing wiselyでも取り上げられていますが、実際に患者さんからlow value careを希望されたときになかなかうまく説明できない、断れないという部分は大きいと思います。今回は、6つの患者中心のスキルを中心としたフィードバック方法で、模擬患者さん(SP)によってフィードバックをかけることによって医師の行動が変化するかを検証しています。
 論文のPICOは、

P:総合内科と家庭医療科のレジデント
 SPさんが予告なしにクリニックを受診し①腰背部痛で不適切な脊椎MRIを希望、②DEXAスクリーニングを希望
I:SPさんによる6つの患者中心のスキルを中心としたフィードバックでの介入
C:SPさんの受診のみでフィードバックなし、ただしe-mailでガイドラインを送付
O:介入期間およびfollow upの12ヶ月以内にlow value検査をオーダーした回数
T:RCT
結果:3-12ヶ月の間に3回以内のSP訪問が予定されている。模擬ケースとしては、
①red flag兆候のない男性の亜急性経過の腰背部痛で腰椎MRIを要求するケース
②閉経後女性のリスクの低い倦怠感を訴える女性でDEXAを希望するケース
③30歳女性の最近発症の頭痛でリスクが無い方の頭部画像検査希望のケース
 対象レジデントは平均30歳、女性52%、卒後2-3年目が多く、上記の症例は概ね3割ずつ平均2回程度割り当てられた。
 61人のレジデントが31 vs 30で介入群とコントロール群に割り付けられ、59人のレジデントで155人のSPさんの診療を受け持った。
 プライマリアウトカムの検査オーダー回数は両群で変化なく、介入群 43.9 vs 対照群 43.7で両群差が、-0.2(-2.9 to 2.5)だった。 

f:id:tyabu7973:20151225123839j:plain


 検査毎にみるとDEXAは最もオーダーされやすく、頭部画像検査が少ない。その他セカンダリーで有意差が出たのはSPさんによる医師評価が介入群で有意に高かった

  ちなみに提供された6つの患者中心のスキルとは
①検査前に患者の心配や期待を理解する
②共感や正当化することで患者の不安や感情を評価する
③病歴や身体所見から安心できる状態であることを情報提供する
④検査のリスクがベネフィットを上回るため検査を推奨しないことを説明する
⑤検査を受けない場合の代替方法について柔軟に交渉する
⑥何か他に心配が無いかどうかを確認する。
という方法で、Thames Valley Family Practice Research Unit and Centre for Studies in Family Medicine; 2001.が参考文献にあげられていました。

 確かに検査回数は変わらないのだけど、患者中心スキルのフィードバックをすると患者満足度が高いってのはまあうなずけますね。やはりフィードバック大事。あとはコントロール群もガイドラインでフィードバックされているからねえ。あとはSPさんのbiasもかかっている気もします。
 なににせよ、日本の専門医のQIとかで是非やって欲しいなあ。抜き打ち試験ですから、学会が派遣したSPさんが一年間に2-3回診療所や病院を受診して評価するってやつ。怖いけど、質の担保って観点からは重要な気もします・・・ 

✓ SPさんによるレジデントに対する患者中心ケアを元にした介入は、low valueな検査を減らせなかった



 

■NEJM■

爪にできた扁平上皮癌 
Squamous-cell carcinoma of the nail bed*4

 NEJMの画像症例報告。61歳女性が3年前からの左手拇指の無痛性潰瘍を伴う変形で診療所を受診しました。外傷や疣贅の既往はなし。初療医は爪周囲炎と診断し切開・抗菌薬投与で数回治療を受けたが改善しませんでした。身体検査では、左拇指爪床に、不整型で色素沈着を伴った潰瘍性病変を認めます。真菌検査も陰性。生検が施行され、中等度分化型の扁平上皮癌を認めた。胸部X線と全身99mTc骨シンチでは明らかな転移所見なし。病変は外科的に切除されました。

f:id:tyabu7973:20151225124050j:plain
(本文より引用)

 扁平上皮癌は、爪床に発生するのは非常に稀であり、多くの場合には乾癬、尋常性疣贅、爪周囲炎、爪真菌症などの良性疾患と間違われます。診断が不十分な場合に、治療の遅れに繋がるため注意が必要です。

✓ 爪に扁平上皮癌が発生することがある

 

 

疥癬流行集団への疥癬集団治療の効果 
Mass drug administration for scabies control in a population with endemic disease*5

 疥癬が問題になるのはしばしば施設など集団行動が行われる場所ではありますが、集団発生になってしまう前に、集団投与を考慮するかどうかは悩ましいところです。今回、そんな疑問に少しヒントをくれる?研究が発表されていました。
 論文のPICOは、

P:フィジーの疥癬流行している3つの島
I/C:①通常治療群(患者・接触者へのペルメトリン)、②ペルメトリン集団投与群、③イベルメクチン集団投与群
ペルメトリンは本邦未承認
O:12ヶ月後の疥癬および疥癬関連膿痂疹頻度の変化
T:島毎のcluster RCT/3島をそれぞれランダム化

f:id:tyabu7973:20151225124412j:plain

(本文より引用)
結果:
 平均年齢 24歳(8-45歳)、最も多い世代は35歳以上、男性 51.9%
 ベースラインの疥癬頻度は32-40%前後、疥癬膿痂疹頻度は21-24%前後
 プライマリアウトカムでは
 ①疥癬通常治療群 36.6→18.8%ペルメトリン集団群 41.7→15.8%イベルメクチン集団群 32.1→1.9%
 ②膿痂疹:通常治療群 21.4→14.6%、ペルメトリン集団群 24.6→11.4%、イベルメクチン集団群 24.6→8.0%

f:id:tyabu7973:20151225124446j:plain(本文より引用)

 副作用はイベルメクチン群でやや多く、頭痛や掻痒感があったが7日以上続くものは無かった。

 

 疥癬流行地域では疥癬に対する集団治療は効果があるんですねえ。ペルメトリンで半減、イベルメクチンの効果は更に高いです。そしてペルメトリンは軟膏だから、より使いやすいかもしれません。それにしてもフィジーの島国の感染流行状況が30%越えで、平均年齢25歳とは・・・ちょっと日本に外挿して良いデータとは言えませんね。結構深刻。あとは長期的な効果の証明でしょうか。


✓ 疥癬流行地域では疥癬治療は集団的治療の方が有効