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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:前部ぶどう膜炎の評価/鼻副鼻腔炎の治療/慢性尿細管間質性腎炎の原因としてのBalkan腎症/悪性腫瘍患者のDVT治療

MKSAP 診断 眼科 膠原病 感染症 耳鼻 薬剤 腎臓 悪性腫瘍 循環器
MKSAPまとめです。
今年の打ち止めなり〜。我らはまだ1/4にも到達せず(笑)
世界は広いなあ・・・という症例もありました。

前部ぶどう膜炎の評価
Evaluate anterior uveitis

❶症例 
  32歳女性が、右眼の痛みと充血で全身疾患を危惧して来院。最近眼科医から前部ぶどう膜炎と診断されている。その他は健康で、眼科医に処方されたステロイド点眼のみを使用している。
  身体所見では、バイタルは正常、右眼は虹彩周囲に集中して充血を認めた。そのほかには異常所見なし。

 この患者の最も適切な次に行うべき検査はどれか?
A.  抗ds-DNA抗体
B.  抗SS-A抗体
C.  胸部X線
D.  リウマチ因子

 ❷前部ぶどう膜炎の評価
 本患者では胸部X線を行うべき。前部ぶどう膜炎は急性発の眼痛とred eyeが特徴である。典型的には充血が虹彩に隣接して取り囲むように存在する。患者は羞明、流涙、視力低下、頭痛症状を訴えることがある。炎症が虹彩や毛様体を巻き込むために、瞳孔不同が出る可能性がある。ぶどう膜炎は眼科緊急コンサルトが必要である。ぶどう膜炎に関連した膠原病疾患は、脊椎関節炎、サルコイドーシス、Bechet病、若年性炎症性関節炎、多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症)などがある。ある患者では、ぶどう膜炎が初期症状になることもあり得る。原因不明の前部ぶどう膜炎患者では、多くの専門家が胸部X線撮像を診断の第一ステップにしており、これはサルコイドーシスの評価のためである。ある1000人以上の観察研究では、眼の炎症はサルコイドーシス患者の21%で初期症状になり、その76%が前部ぶどう膜炎だったと報告している。他に役立つ検査としては、HLA-B27(脊椎関節炎で見られる)、ANCA(多発血管炎性肉芽腫症やANCA関連血管炎)、RPR検査(梅毒除外)がある。
 後部ぶどう膜炎では、脈絡膜もしくは網膜に炎症が及ぶ。鑑別診断としては、サルコイドーシス、結核、ヒストプラズマがある。梅毒やLyme病も後部ぶどう膜炎の原因になる。

❸その他の選択肢
抗ds-DNA抗体:これはSLEに特異的であり網膜血管炎とは関連する。

抗SS-A抗体:Sjogren症候群で見られることが多く、眼球乾燥から角膜潰瘍を来すことはある。

リウマチ因子:リウマチ因子陽性は関節リウマチと関連することがあり、眼球乾燥や上強膜炎、強膜炎と関連するが、ぶどう膜炎は来さない。

Key Point
✓ 急性の前部ぶどう膜炎で原疾患が不明な場合には、胸部X線を撮像しサルコイドーシスの有無を確認すべき。

Heiligenhaus A, Wefelmeyer D, Wefelmeyer E, Rösel M, Schrenk M. The eye as a common site for the early clinical manifestation of sarcoidosis. Ophthalmic Res. 2010;46(1):9-12. PMID: 21099232

 

 

副鼻腔炎の治療
Treat acute rhinosinusitis

❶症例
 32歳男性が、3日前からの湿性咳嗽、咽頭痛、鼻汁、鼻閉感、全身筋肉痛、倦怠感を主訴に外来受診。喀痰はわずかに黄色。彼の1歳と3歳の二人の子供が1週間前に同様の症状を来していた。タバコは吸わず、喘息既往もなし。
  身体所見では、T 37.5℃、BP 128/76mmHg、Pulse 92bpm、RR 14/minだった。両側の眼球充血あり。鼻粘膜は荒れており、漿液性鼻汁あり。口腔咽頭部は発赤し、扁桃腫大や滲出なし。鼓膜や外耳道は正常。呼吸音は正常で、皮疹やリンパ節腫張は認めず。

本患者で最も適切な治療はどれか?
A.  アルブテロール
B.  アモキシシリン
C.  クロルフェニラミン
D.  コデイン

 ❷鼻副鼻腔炎の治療
  本患者ではクロルフェニラミンが使用可能である。感冒もしくは鼻副鼻腔炎では、急性の咳嗽、鼻閉、鼻漏、時折微熱を来す。治療は基本的には対症療法である。クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン薬やうっ血除去薬と抗ヒスタミン薬の組み合わせは、鼻汁や鼻閉を改善し、咳嗽を押さえる効果が示されている。第二世代の非鎮静抗ヒスタミン薬は一般的には鼻副鼻腔炎の症状に効果が乏しい。

❸その他の選択肢
アルブテロール:喘鳴が存在しない状況では、アルブテロールは鼻副鼻腔炎の症状改善には繋がらない。本患者は喘鳴や息切れの自覚は無く、診察上も喘鳴は聴取されない。

アモキシシリン:副鼻腔炎はウイルスが原因であり、免疫正常者に対するルーチンの抗菌薬投与は推奨されない。抗菌薬は症状や病悩期間、患者満足度を改善しない。一般的な信念に反して、膿性痰は細菌感染や重複感染を示唆しない。痰の性状を抗菌薬開始の基準に用いるべきではない。IDSAのエビデンスに基づいたガイドラインによれば、細菌性副鼻腔炎が強く疑われる状況とは、①症状が改善することなく10日以上持続する場合、②39℃以上の高熱で発症するような重症例、③症状や徴候の悪化(新規の発熱、頭痛、2峰性の経過)などである。初期治療の選択はAMPC/CVAである。

コデインいくつかの研究で、急性上部呼吸器感染に伴う急性咳嗽に対するコデイン、デキストロメトルファン、モギステインなどの鎮咳薬の効果がほとんどないことが分かっている。ACCPはこれらの薬剤の使用を推奨していないコデインは慢性咳嗽患者には効果があるかもしれないが、急性の鼻副鼻腔炎患者の適応はない。

そのほかの薬剤:経鼻イトラトロピウムが鼻汁やくしゃみ、経鼻クロモリンが鼻汁、咳嗽、咽頭痛、短期間の鼻うっ血除去薬使用が鼻閉に効果があるかもしれないと言われている。亜鉛エキナセア・ビタミンCなどの使用に関するエビデンスレベルの高いデータは存在せず、これらのOTCも積極的には推奨されない。

Key Point
✓ 急性の鼻副鼻腔炎の治療に抗菌薬は推奨されない

Siamasek M, Blandino DA. Treatment of the common cold. Am Fam Physician. 2007;75(4):515-520. PMID: 17323712

 

 

慢性尿細管間質性腎炎の原因としてのBalkan腎症
Identify Balkan nephropathy as a cause of chronic tubulointestinal nephritis

❶症例

 45歳女性が新患として来院。最近ルーマニアから移住してきた。CKDがあり、CKDと診断された時点で高血圧とも診断されていた。いとこにCKDがあり、尿路症状なし。内服薬はカプトプリルのみだった。

 身体所見では、T 37.7℃、BP 138/67mmHg、Pulse 72bpm、RR 12/min、BMI 22だった。皮疹は無く、心臓聴診では心音整で心雑音なし。腹部診察では圧痛も腫瘤も認めなかった。足首付近に軽度の浮腫あり。

f:id:tyabu7973:20151226122428p:plain(本文より引用)

腎臓超音波では両腎は小さく、水腎症や水尿管は認めなかった。

 この患者で最も考えられる診断はどれか?
A.  鎮痛薬関連腎症
B.  Balkan腎症
C.  高血圧性腎症
D.  IgA腎症

 ❷Balkan腎症
 本患者で最も可能性が高いのはBalkan腎症である。Balkan腎症は南東ヨーロッパ(バルカン地域)出身の患者に見られる原因不明の慢性尿細管間質性腎炎である。これはアルストロキン酸と呼ばれる植物アルカロイドが沈着することが原因だと考えられている。診断基準には、疫学的な基準、eGFR低下、尿蛋白が1g/日未満、他の腎疾患の除外が含まれている。本疾患では尿路上皮癌のリスク増加が言われており、癌リスクを考慮して対応する必要がある。本患者はCKDがあり、蛋白尿が少なく、慢性尿細管間質性疾患と一致し、尿沈渣も比較的問題ない結果だった。本患者はルーマニア出身で、ルーマニアはBalkan腎症の高発生地域である。また、彼女には同地域にいるであろう親族にCKDを発症している患者がいる。

❸その他の選択肢
鎮痛薬関連腎症:鎮痛薬関連腎症は、長期間に渡って特定の鎮痛薬に大量暴露されることが原因である。本患者には鎮痛薬関連腎症を来すほどの鎮痛薬暴露はない。

高血圧腎症:コントロール不良の高血圧を長期間罹患している場合に高血圧腎症が発生する。本患者はCKD判明時に高血圧を指摘されており、CKDを発症するほどの長期間の高血圧罹患があったとは考えにくい。

IgA腎症:IgA腎症で腎機能が悪化しているような進行期で血尿なし、蛋白尿軽度は考えにくい。

Key Point
✓ Balkan腎症は南東ヨーロッパのバルカン地方で流行している慢性尿細管性間質性腎炎で、アリストロキア酸のによって引き起こるとされている。

Carette S, Fehlings MG. Clinical practice. Cervical radiculopathy. N Engl J Med. 2005;353:392-399. PMID: 16049211

 

 

悪性腫瘍患者のDVT治療
Treat a patient with a deep venous thrombosis and cancer

❶症例

  49歳女性が、右下腿の深部静脈血栓症の評価のために受診された。既往歴は乳癌と多発転移があり、過去にDVT既往なし。最近の内服としては、間欠的に化学療法を乳癌に対して行っている。

 本患者の長期のDVT治療で最も適切なのはどれか?
A.  IVCフィルター+未分化ヘパリン+ワーファリン
B.  低分子ヘパリン
C.  未分化ヘパリン
D.  ワーファリン

 悪性腫瘍患者のDVT
 癌関連の深部静脈血栓症は再発リスクが高い。低分子もしくは未分化ヘパリンによるヘパリン療法は、悪性腫瘍患者のDVTの初期治療に推奨される。活動性のある悪性腫瘍では、3ヶ月以上かつ悪性腫瘍の活動性があるうちは、通常のDVT患者に使用されるビタミンK拮抗薬ではなく低分子ヘパリン治療を延長すべきである。低分子ヘパリンに変わる治療法は無くはないが、新規抗凝固薬であるダビガトラン・リバロキサバンはまた効果は明確には証明されていない。

 ❸その他の疾患
 下大静脈フィルター下大静脈フィルターは抗凝固療法が出来ない患者(出血リスクが高すぎる)や、抗凝固療法に失敗した場合が古典的な適応である。本患者はそのどちらの条件も満たさず、IVCフィルターは不要である。
 未分化ヘパリン
未分化ヘパリンは、一般的にはVTEの急性期治療に用いられるが、採血でのモニターが必要なこと、皮下注射製剤よりも大量の投与が必要なことから、長期管理時には用いられない。モニターをしない皮下注射の未分化ヘパリンと皮下注射の低分子ヘパリンの効果は同等だったというRCTがあるが、慢性期にどうかという研究はされていない。長期間の未分化ヘパリンは、低分子ヘパリンと比較して、骨粗鬆症リスクが上がり、慢性期治療には好ましくない。

Key Point
✓ 悪性腫瘍関連の深部静脈血栓症は再発率が高く、悪性腫瘍が活動性がある場合には低分子ヘパリンの延長を考慮する。

Guyatt GH, Akl EA, Crowther M, Schünemann HJ, Gutterman DD, Zelman Lewis S. Introduction to the Ninth Edition: Antithrombotic Therapy and Prevention of Thrombosis, 9th ed: American College of Chest Physicians Evidence-Based Clinical Practice Guidelines. Chest. 2012;141(2 Suppl):48S-52S. PMID: 22315255

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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