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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJクリスマス大特集② レインボージャージの呪い/議員と一般人との死亡率比較/ロシアの歴代高官は歩行時の腕の振りが左右異なる/リジェクトレターに対するリジェクト/政治家トップの寿命は短いか?

BMJ 論文 おもしろ 神経 精神 医学統計 医療政策

レインボージャージの呪い 
Debunking the curse of the rainbow jersey: historical cohort study

 これツールドフランス的には、フランス語でいう”arc-en-cielの呪い”とも言うみたいで、L’arc-en-cielとだいぶかぶるなあと思うのは、私の世代くらいでしょうか・・・この”arc-en-cielの呪い” は、世界選手権に優勝すると翌年に着ることが出来るジャージらしく、名誉なことなのだそうです。ただ、これを着ていると、翌年大きく成績を落としたり、落車したり、私生活で家庭不和や事故、病気が増えると言われております。で、これについてホンマかいな?と検証したのが今回の研究でございます。
 論文のPECOは、

P:1965-2013年の間に自転車の世界選手権かジロ・ディ・ロンバルディアで優勝したプロの自転車選手
E/C:spotlight効果説、marked man説、平均への回帰説
O:優勝後2年間(year 1,year 2)の勝利数
T:コホート研究
結果:
 世界選手権では、year0が優勝回数 5.04回、year1が3.96、year2が3.47

 ロンバルディアでは、year0が優勝回数 5.08回、year1が4.22、year2が3.83

f:id:tyabu7973:20151229021329j:plain(本文より引用)

 各仮説毎の検証では、一番結果と類似するのは平均への回帰説だった

f:id:tyabu7973:20151229021358j:plain
(本文より引用)

 レインボージャージの呪いはなく、平均への回帰でしょうと何ともつまらない結果となりました。最後は聖書の言葉で、「心の高慢は倒れに先立つ」箴言16章18節が引用されていました。

✓ レインボージャージの呪いは存在せず、そこにはただただ平均値への回帰と人間の高慢があるのみ

 

議員と一般人との死亡率比較 
Parliamentary priviledge- mortality in members of the Houses of Parliament compared with the UK general population: retrospective cohort analysis, 1945-2011

 これはまんまと言えばまんま。議員と一般人口の死亡率を1945-2011年までで比較しています。そもそも議員が人民の代弁者たるには、議員と一般人が似ていなければなりません。それを一番端的に証明する方法が「死亡率が一緒か?」という問いでした。実は過去に先行研究もあり、国会議員の方が一般集団よりも死亡率が低かったと報告されていますが、かなり古いデータでなおかつ、下院のデータでした。やはり上院のデータを考慮する必要があります国会議員の作業環境やライフスタイルは心血管イベントと関連する可能性があるのだそうです。さて、そんな中現在は死亡率はどうなのかを検証しています。
 論文のPECOは、

P:1945-2011年に選ばれた4950人の上院下院議員
E/C:上院・下院の死亡率と死因と一般人を比較
O:標準化死亡率、年齢・性別・
T:後ろ向き観察研究
結果:
 下院の死亡率は 0.72(0.67-0.76)、上院の死亡率は0.63(0.60-0.67)と一般人口よりも有意に標準化死亡率が低かった。

f:id:tyabu7973:20151229021533j:plain
(本文より引用)

 下院の中では、労働党議員が保守党議員と比べて、相対死亡率1.19(1.01-1.40)と有意に死亡率が高かった。
 多変量解析の結果、死亡率と関連したのは、学歴(Oxbridge)・選出時に60歳以上という2点だけでした。

 Oxbridgeって初めて聞いたんですが、OxfordとCambridgeを合わせた造語なんですねえ。上流階級を指す言葉なんだとか。何にせよ、議員は長生きしてるんだなあ。確か学歴とAlzheimerの罹病歴も関係あったような・・・

✓ イギリスの議員は労働党を除いて一般人口より長生きである

 

ロシアの歴代高官は歩行時の腕の振りが左右異なる 
”Gunslinger’s gait”: a cause of unilaterally reduced arm swing

 これはなかなかチャレンジングな。狙撃されないように。ロシアの高官達の歩行が本当に片腕を振らない歩行なのかを検討しています。
 論文のPECOは、

P:ロシアの5人の歴代高官の歩行方法をYoutubeで評価
O:左右差のある歩行方法の頻度
T:観察研究
結果:
 確認したのは、①Vladimir Putin(プーチン大統領)、②Dmitry Medvedev(メドベージェフ首相)、③Anatoly Serdyukov(セルジュコフ国防相)、④Sergei Ivanov(イワノフ大統領府長官)、⑤Anatoly Sidorov(シドロフ軍部司令官)の5人。
 歩行の仕方は右腕はほとんど動かさず、左腕を普通に振って歩く非対称的な歩行形式だった。脳卒中やParkinson病などの神経疾患に起因する症状では無かった。KGBマニュアルには右手に武器を持って胸に引き寄せ、左側を前に受けて前進せよと記載されている。

 ということで、彼らは軍隊上がりということで良いのかしら?

✓ ロシア高官は皆左右非対称な歩行方法で歩いている


リジェクトレターに対するリジェクト 
Rejection of rejection: a novel approach to overcoming barriers to publication

 全ての学者はインパクトファクターの高い雑誌に論文が掲載されることを目指しています。しかし、多くの大手医学雑誌は、その質が高い雑誌ほど出版には高いハードルをもうけており、約80%はリジェクトされてしまいます。我々はこの問題に新たな解決策を提案します。今回ご用意したのは、少し手を加えるだけで様々な研究のレターに対して使用可能なひな形です。

 リジェクトレターをリジェクトすることは、出版率を上げることに繋がり、リジェクトによる出版率の低下を防ぐ効果があります。この手紙の電子コピーはリクエストさえあれば筆者から入手可能です。

f:id:tyabu7973:20151229021723j:plain

(本文より引用)
 ・・・これはまあ白山羊さんからお手紙ついたの世界ですか・・・(笑)?

✓ リジェクトレターに対するリジェクトがある



政治家トップの寿命は短いか? 
Do heads of government age more quickly? Observational study comparing mortality between elected leaders and runners-up in national elections of 17 countries

 まあとてもストレスの多い職業ですから、色々な心理的負担も大きいことでしょう。各国の政治家トップ(いわゆる首相)が、次点候補者と比較して死亡率がどう異なるかについて調査しています。
 論文のPECOは、

P:1722〜2015年までのオーストラリア・オーストリア・カナダ・デンマークフィンランド・フランス・ドイツ・ギリシャアイルランド・イタリア・ニュージーランドノルウェイポーランド・スペイン・スウェーデン・英国・米国の大統領選の選挙候補者
E:当選者(政治家トップ)279人
C:次点の候補者261人
O:死亡率
T:観察研究
結果:
 2015年9月9日の時点で380人の候補者が死亡していた。
 政治家トップの候補者は、次点候補者と比べて選挙後の生存期間が4.4年(2.1-6.6)短かった。実年数としては、政治家トップ 13.4年、次点候補者 17.8年。

f:id:tyabu7973:20151229021825j:plain
(本文より引用)

 Coxハザード解析では、生死を問わず全候補者において、選挙に当選した場合の死亡ハザード比は1.23(1.00-1.52)と有意に高かった。

  残念ながら今回はヨーロッパの国々の結果なので、日本にもそのまま利用できるかは分かりません。また、そもそも選挙後の生存率で良いのか、ベースラインのリスクを調整しないといけないのではないか?と考察されています。


✓ 国のトップになるような政治家は選挙後の寿命が次点候補者より短い