栃木県の総合内科医のブログ

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論文:RCT 重症患者でリフィーディング症候群発症後にカロリーを減らすか継続するか

重症患者でリフィーディング症候群発症後にカロリーを減らすか継続するか
Restricted versus continued standard caloric intake during the management of referring syndrome in critically ill adults: a randomized, parallel-group, multicentre,single-blind controlled trial*1

Lancet Respire Med 2015;3:943-52

【背景】
 健常人のリン濃度は経口摂取や糖入り補液によって低下するため、refeeding症候群を発症し電解質補正をしている間、カロリーを制限するか、通常カロリーを継続するかについてはcontroversy。栄養学の専門家は、refeeding症候群のリンや電解質補正時には栄養補給を中止するように推奨。一方、十分な臨床試験や適切なアウトカム設定の研究が無いため、電解質補正中も栄養補給を継続することを勧める専門家も。
 オーストラリア・ニュージーランドの33ICUに確認した調査では約半数の52%は栄養補給制限をしていると解答し、残りは継続していると解答。

【方法】
・試験デザイン:ランダム化比較試験/単盲検
・対象:オーストラリア(11施設)・ニュージーランド(2施設)の三次医療機関もしくは市中病院
・組み入れ対象:18歳以上の成人重症患者で、ICUケア開始後72時間以内に血清リン 0.65mmol/l(2mg/dL)以下に減少した患者
 ※これのみでrefeedingとした
 ※リンは生理的変動を考慮し、以前の計測値より0.16mmol/L(0.5mg/dL)以上の減少を有意とした
・除外基準:低リン血症を来す他の疾患を除外。透析・最近の副甲状腺切除・高リン血症の治療中
・事前に同意説明文書で説明し、事後承諾もOKにしている
・介入群は少なくとも2日は20kcal/hr(480kcal/日)にカロリーコントロールするプロトコール
・2日後にリンの値が正常化していれば、プロトコールに基づいて栄養摂取量を徐々に増量していく
プロトコールは、最初24時間は40kcal/h、2日目60kcal/h、3日目全カロリーの80%、4日目に通常量まで戻す。ただし、0.71mmol/L(2.1mg/dL)以下になったら20kcal/hに戻す
・通常群は、継続的に決まった栄養量を投与
・両群ともにリン測定・補充・ビタミンB1投与は継続。
・follow upは60・90日後

【アウトカム】
 プライマリアウトカム:60日後時点でのICU退院後生存日数
 ※結果的に呼吸器フリー日数・ICU滞在日数・生存期間・死亡率のcomposite outcomeでもある
 セカンダリアウトカム:感染合併症・全身抗菌薬投与・インスリン必要・血糖測定・リンの補正量・最低K・P値・臓器不全・多臓器不全の日数・ICUで行われた治療内容
 Run in phaseを設定して、この方法に慣れるように準備を行った

【結果】
 ・339人の重症患者が組み入れ、4人(各2人ずつ脱落)、170人が通常栄養群、169人がカロリー制限群に割り付け
 ・プライマリアウトカムの60日後ICU退院後生存日数は、通常栄養群 39.9日(36.4-43.7)、栄養制限群 44.8日(40.9-49.1)、両群差は4.9日(-2.3 to 13.6日)、RR 1.12:0.93-1.35で有意差つかず
 ・60日後の生存率を評価すると有意差あり、通常栄養群 128/163=78%、栄養制限群 149/164=91%

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・平均生存日数も、通常栄養群 48.9日、栄養制限群 53.65日と栄養制限群で有意に長かった
 ・主要な副作用はなし

【結論】
 プロトコール化された栄養制限は重症患者のrefeeding syndrome発症者への適応は良好。プロトコール化された栄養制限は安全面での心配は無いことが判明。

 

【批判的吟味】
 ・年齢60歳前後、男性56-63%、平均BMI 28、組み入れ時 1180kcal、人工呼吸器患者 91%
 論文のPICOは、
P:オーストラリア・ニュージーランドICU入室する人工呼吸器管理をするような重症患者で低リン血症が出現
I:栄養制限
(20kcal/hrを3日以上後漸増)
C:通常の栄養投与
O:60日後のICU退室後生存日数
T:RCT/単盲検/modified ITT解析
 ・ランダム化は中央割り付け。Concealmentも良好。
 ・Baselineもほぼ同等
 ・ITT解析は初期の割り付け患者から数人削って解析しているmodified ITT解析なので、結果を過大評価する可能性。
 ・追跡率は、327/339=96.5%で良好
 ・Refeeding syndromeの定義が低リン血症のみであり、これで良いかどうか?世界的に妥当性が検証されている診断基準はない
 ・NICE guidelineなどでは10kcal/kg/日は、今回の20kcal/hとほぼ同カロリー
 ・プライマリアウトカムでは有意差つかなかったのに、60日後生存率や平均生存日数は差がついている。アウトカム設定がそもそも微妙かもしれません。

【個人的な意見】
 refeeding症候群とはいえ、普段私達が見ている患者群である虚弱高齢者や神経性食思不振症の患者とは異なる群であるという気がします。どちらかと言えば、太った重症患者で重症管理中にリンが低下した人と言えるかもしれません。重症患者でのリン管理は重要というメッセージでもありますか。(T.Y.)

 

✓ 重症管理中にリフィーディング症候群を発症した場合、カロリーを制限した方が60日後の生存率は高い