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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 単純性膀胱炎へのイブプロフェン/気腫性腎盂腎炎

BMJ

単純性膀胱炎へのイブプロフェン 
Ibuprofen versus fosftomycin for uncomplicated urinary tract infection in women: randomized controlled trial*1

 単純性膀胱炎に対しては、抗菌薬なしでNSAIDsでも対処出来るのではないか?というのが今回のテーマです。以前もこのテーマは見たことがあり、79人の単純性膀胱炎に対するイブプロフェンとシプロフロキサシンのRCTが組まれていましたが、この結果は残念ながらパワー不足ではありましたが、症状回復においてはイブプロフェンも非劣性で24/36人が抗菌薬なしで症状が回復していました。今回は、これを受けてもう少し大規模に、単純性膀胱炎に対するイブプロフェンの効果を確認しようとして行われたRCTです。
 論文のPICOは、

P:18-65歳の典型的な単純性膀胱炎
 ※組み入れ基準:排尿障害または頻尿/尿意切迫感
 ※除外基準:発熱・CVA叩打痛・2週間以内に尿路感染症尿道カテ
I:イブプロフェン 400mg 3錠/分3
C:ホスホマイシン 3g/1回
O:①0-29日間の抗菌薬使用コース回数(優越性)
  ②0-7日の症状負担度スコアの合計点(非劣性)
 ※症状負担度スコアは、①排尿障害、②頻尿/尿意切迫感、③下腹部痛を各4点/計12点満点で評価
T:RCT/盲検/ITT解析
結果:
 平均37歳、症状負担度スコアの組み入れ時平均は6/12点、尿中白血球陽性 84%、尿培養陽性 76%でうち80%が大腸菌
 プライマリアウトカム①の抗菌薬使用コース回数ですが、イブプロフェン群が85/241人(35%)、ホスホマイシン群が243/243人(100%)で有意に抗菌薬使用は少ない結果でした。イブプロフェン群では241人中156人が抗菌薬不要だったという結果。

f:id:tyabu7973:20160117233526j:plain(本文より引用)

 プライマリアウトカム②の症状負担度スコアは、イブプロフェン群で17.3、ホスホマイシン群12.1と有意にホスホマイシン群が良好で、非劣性は証明されなかった。

  ビミョーなところですねえ。症状負担は劣性で抗菌薬使用はそもそもアドバンテージがあるstudy designだしなあ・・・サブグループ解析で見ると、尿培養陰性症例のみでみると症状負担度スコアは非劣性なんだそうです。とすると、イブプロフェンでも問題ない単純性膀胱炎(そもそもそれが膀胱炎なのか?という疑問もありますが)をいかに抽出できるかが鍵になるのかもしれませんね。第一選択ではないにせよ、ちょっと考えても良いかもなと思いました。(J.K.)

 

✓ 単純性膀胱炎に対するイブプロフェンの効果は抗菌薬使用を減らすが症状負担度は減らさない

 

 

■Lancet■

気腫性腎盂腎炎 
Pneumoperitoneum, a urological source*2

 Lancetの症例報告です。

  2014年1月に25歳の女性で特に既往の無い方が、3日前からの嘔吐を伴う腹痛を主訴に外来受診。診察では、脱水所見があり、発熱、右側腹部に限局した腹部膨満感を伴っていました。HR 130bpmの洞性頻脈と呼吸数28回の頻呼吸を認めましたが、血圧・酸素飽和度は正常範囲。血液ガスでは、pH 7.16、pCO2 3.1kPa、pO2 14.2kPa、HCO3 8.8mmol/L、血糖 32mmol/L、乳酸 3.6mmol/Lでした。尿検査ではケトンと糖が陽性で、亜硝酸や白血球は陰性。妊娠確認のβ-HCGは陰性でした。検査結果では、白血球23200、ESR 122mm/h、CRP 5.9mg/dL、BUN 17.5mmmol/L、Cr 179μmol/L。

 新規発症の糖尿病性ケトアシドーシスと診断され、おそらく敗血症が原因だろうと考えられたが、敗血症の原因が不明でした。プロトコール通りにDKAの治療を開始し、胸部X線では、横隔膜下のスペースに遊離気腫を認めるものの明らかな浸潤影は認めませんでした。腹部X線では、右上腹部にまだら状のガス像を認め、腹部CTでは、右腎および上部尿管周囲に著明な異常とガス産生がありました。

f:id:tyabu7973:20160117233802j:plain

(本文より引用)

 気腫性腎盂炎と診断し、入院の上経静脈的MEPMを開始し、その後正中ライン確保のまま外来でエルタペネムを投与しました。5週間後に、右腎臓周囲の液体貯溜が目立ってきたので、経皮的ドレナージを行い、膿培養の結果ではESBL産生の大腸菌でした。外来で抗菌薬点滴を継続し、ドレーンはしばらく留置されました。繰り返した膿培養でも感受性は保たれていました。診断5ヶ月後にドレーンからの膿排出が続いたため、根治的腎臓摘出術を行う方針となりました。エルタペネムは術後2週間は継続し、正中カテーテルは抜去されました。

  気腫性腎盂炎は、腎実質の壊死性破壊を引き起こす重症感染症です。致死的な経過をたどることもあり、死亡率は18-69%で、感染の重症度と介入のタイミングによって異なります。(T.Y.)

 

✓ 気腫性腎盂腎炎は重篤な感染症で重症度と介入タイミングが重要