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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:片側の感音性難聴/有痛性糖尿病性神経障害の治療/職業性肺疾患の診断/不整脈原性右室心筋症患者の失神

MKSAPまとめです。 
今週から、ゲストライターも交えてお送りすることに。
当院のC先生にお願いしています〜。よろしゅう。

片側の感音性難聴
Manage unilateral sensorineural hearing loss

❶症例 
  29歳女性。右側の聴力低下が徐々に進行するため受診。3-4ヶ月前から高調音が聞こえていた。
 バイタル正常、512Hz音叉を頭頂部に置くと左で聞こえる。右耳では耳の穴近くよりも乳様突起に接触した方が聞こえやすかった。耳鏡所見は正常。その他の神経所見は正常。 

 この患者の適切な対応はどれか?
A.  バイオフィードバック治療
B.  直ちに内服ステロイドで治療
C.  MRIで後頭蓋窩や内耳道の検索
D.  耳石の再配置(dix-hallpike)手技

 ❷片側の感音性難聴の評価
 本患者は、MRIで後頭蓋窩や内耳道の検索をすべきである。Weber試験で左耳への偏奇があり、Rinne試験で気導より骨導の方が聞こえが良いため、感音性難聴となる。Rinne試験は感音性難聴の感度80%メニエール病以外の対称性の感音性難聴は聴神経腫瘍や髄膜腫を考慮し造影MRIで後頭蓋窩や内耳道の検索を行う。持続性の耳鳴りは聴覚系の問題であり大抵は感音性難聴で高い音の耳鳴りが多い。低い音はメニエール病が多い。
 他には騒音性難聴、聴力毒性薬剤、老人性難聴、耳硬化症、聴神経腫瘍、外傷がある。基礎疾患治療が原則である。

❸その他の選択肢
バイオフィードバック法:行動療法はバイオフィードバック、ストレス減少、行動療法認知行動療法などの行動療法で耳鳴りに対処するというもの。治療可能な原因を除外してから行うのが原則。

内服ステロイド突発性難聴聴は3日以内に起こるものと定義される。90%は両側性で耳鳴りや耳閉感、眩暈などを伴う。耳鼻科的エマージェンシーであり内服ステロイドが慣習的に投与されているがこれを指示するRCTはない。本症例は緩徐進行であり適応ではない。

耳石再配置:BPPVは内耳性眩暈の最多の原因で、半器官の耳石沈殿によると考えられている。耳石の位置を治す事で症状が緩和される。本症例はBPPVに特徴的な経過ではなく、耳石の再配置手技の適応ではない。

Key Point
✓ メニエール病以外の非対称性の感音性難聴は聴神経腫瘍や髄膜腫を考慮し造影MRIで後頭蓋窩や内耳道の検索を行う。

McDonald R. Acoustic neuroma: what the evidence says about evaluation and treatment. J Fam Pract. 2011;60(6):E1-4. PMID: 21647465 

 

 

有痛性糖尿病性神経障害の治療
Treat Painful diabetic neuropathy

❶症例
 42歳男性。6日前からの焼けるような、刺されるような両下肢の痛みで爪先が強い。夜に増悪しシーツが皮膚に触れるだけで痛い。歩いたり足を揉んだりすると改善する。8年前に1型糖尿病に罹患し、2年前から高血圧。2週間前に肺炎と糖尿病性ケトアシドーシスで入院し、退院後は血糖が150−200だった。飲酒や喫煙はしない。内服はインスリングラルギン、グルリシン、リシノプリルのみ。
 身体所見では、BMI 22、足と踵に触圧覚と温痛覚の過敏があり、爪先部で強い。動脈触知は良好。線維束れん縮・筋力低下・潰瘍・足の変形なし。モノフィラメントでは両足の感覚低下あり。アキレス腱反射は両側とも消失している。

 本患者で血糖管理に加えて必要な次の治療はどれか?
A.  デシプラミン
B.  フルオキセチン
C.  神経伝導速度検査
D.  オキシコドン
E.  腓骨神経生検

 ❷有痛性糖尿病性神経障害の治療
  本患者ではデシプラミンで治療すべき。血糖コントロールが不良だった時期の直後に、急性の有痛性糖尿病ニューロパチーを発症している。この疾患は末梢の感覚神経で神経の脱髄が起こっており、血糖が数ヶ月間厳格に調節されれば(HbA1c<7)再髄鞘化と回復に向かっていく。症状の緩和の為にはデシプラミンのような低容量の三環系抗鬱薬と局所のカプサイシン貼付が有効。

❸その他の選択肢
フルオキセチンSSRIであり疼痛性糖尿病性ニューロパチーには効果不十分のため控える

神経伝導速度・腓骨神経生検:神経伝導速度検査を行えば伝導の遅い神経を証明出来るし腓骨神経生検で脱髄の証明も出来るかもしれないが、既に診断がはっきりしている患者に診断確定の検査をする必要はなく、病歴と身体診察で十分である。

オキシコドンオキシコドンのような副作用の多い薬はADLも良い患者に長期間使用するのは控えるべき。

Key Point
✓ 対称性有痛性糖尿病神経障害の治療は三環系抗鬱薬と局所カプサイシンクリームである

Hovaguimian A, Gibbons CH. Clinical approach to the treatment of painful diabetic neuropathy. Ther Adv Endocrinol Metab. 2011;2(1):27-38. PMID: 21709806 

 

 

職業性肺疾患の診断
Diagnose occupational lung disease

❶症例

 48歳女性、3ヶ月前からの咳、息切れ、微熱がある。6週間前に医療機関を受診し、下気道感染と判断されフルオロキノロンを処方されたが改善なし。旅行や動物への接触はしていない。自動車工場で板金工として雇われている。既往歴で特記事項はなく喫煙歴、常用薬もなし。
 体温 37.0℃、BP 120/82mmHg、HR 65/分、RR 14/分、BMI 24。肺音清、心雑音なし。 胸部レントゲンでは両側の不明瞭な透過性低下領域を認め、結節影、胸水、心拡大はない。CTではび漫性に小葉中心性のすりガラス様陰影を認める以外に特記所見なし。

 この患者でに対して次に行うべきことは?
A.  曝露歴の詳細な病歴聴取
B.  アレルギー検査
C.  吸入誘発試験
D.  CT検査を造影で再検

 ❷職業性肺疾患
 本患者では、職業関連疾患を念頭におき職業に関する詳細な聴取が必要である。症状は生来健康な28歳に誘因無く起こっており、職場の工場で扱う物質が症状に関連している可能性を考慮する。金属関係の工場の従業員は金属の破片を取り除いたり冷却や潤滑などに使う金属加工油剤に曝露するため、リポイド肺炎、過敏性肺臓炎、職業喘息等のリスクになる。液体自身や添加剤、混入している細菌などが原因になる。同じ場所で働く労働者に同様の呼吸器症状が出たりする。曝露歴の有無と同時に職場の同僚の同症状が無いかを、症状と特定の環境との関係(職場から離れると症候が改善する等)を聞くべきである。Material Safety Data Sheets (MSDS)はどの物質がどの職員に曝露去れたかが分かるため職場の物質曝露を発見するのに有用である。

❸その他の選択肢
アレルギー検査・吸入誘発試験:アレルギー検査、吸入誘発試験は職業喘息を疑った時に有効だが、追加検査を行う前に症状と環境要因を因果づけたり除外したりする必要がある。

造影CT:造影CTは縦隔や肺門部病変の検出には有効で、肺動脈相造影は肺動脈塞栓症の検出に有効。既に施行されているHRCTの所見は過敏性肺臓炎の所見であり造影検査を追加する必要は無い。

Key Point
✓ 職業性肺疾患は、①職場によって症状が出現・消退するとき、②一般的内科治療に抵抗性のとき、④職場内で同様の症状がある時に疑う。

Zacharisen MC, Kadambi AR, Schlueter DP, et al. The spectrum of respiratory disease associated with exposure to metal working fluids. J Occup Environ Med. 1998;40(7):640-647. PMID: 9675723 

 

 

不整脈原性右室心筋症患者の失神
Manage syncope in a patient with arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy/dysplasia

❶症例

  31歳男性。バスケットボールをしている最中に失神したため救急を受診。一緒にプレイしていた友人が言うには、15秒ほどの失神で痙攣様の動きは無かったとのこと。既往歴で不整脈原性室心筋症と心拡大がある内服薬はアテノロールのみ。
 血圧 125/76mmHg、HR 64bpm。心電図では洞調律でV1−3でT波が陰転化。エコーでは中等度の右室収縮低下と拡大があった。心血管MRIでは右室流出路の拡張と無収縮を認めた。

 本患者で次に行うべきマネージメントで最も適切なのはどれか?
A.  電気生理学的検査
B.  24時間持続ABPM
C.  植え込み型除細動器留置
D.  ループレコーダー植え込み
E.  ソタロール投与

 不整脈原性右室心筋症

 本症例は、失神があった不整脈原性右室心筋症(ARVC/D)でありICDの適応である。本疾患は心筋組織に線維脂肪組織が浸潤し、右室由来の単形正VTを起こし失神する事がある。失神した場合はICDの適応となる。時間が経つと右室機能、更には左室機能も低下していく。機械的負荷、交感神経緊張のため、ポーツ中に突然死する可能性が健常者の5倍に上がるため、競争的スポーツは行わないようにする。身体活動のため右室が拡張すると進行と機能低下が早まる。

 ❸その他の選択肢
 電気生理学的検査VT精査のために電気生理学的検査をしても有用ではないため、ルーチン使用は勧められない。ICD植え込み後、除細動を何度か経験した患者では、マッピングと一緒に焼灼術を行う場合もある。
 24時間持続ABPM・ループレコーダー
不整脈原性右室心筋症の診断基準の一つとしてABPMで500回以上のPVCがある事となっている。本症例は既に不整脈原性右室心筋症の診断がついており持続モニタリングの有用性は低いと言える。同様にループレコーダーも既に診断が下っている場合には不要である。
 ソタロール投与β遮断薬、Ⅲ群の抗不整脈(ソタロールなど)の投与は、VTの頻度やICDによるショックを減らす目的で使用されるが、ICDの代替手段としてはならない。

Key Point
✓ 失神があった不整脈源右室心筋症は植え込み除細動器の適応である。

Basso C, Corrado D, Marcus FL, Nava A, Thiene G. Arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy. Lancet. 2009;373(9671):1289-1300. PMID: 19362677 

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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