栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

ACPJC:Clinical Prediction guide ORBIT出血スコアは心房細動患者の2年以内の主要な出血を予測する

ACPJCで出血リスク見積もりスコアの検証。
ORBITスコアは初めて知りました。

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The ORBIT bleeding score: a simple bedside score to assess bleeding risk in atrial fibrillation. 

O’Brien EC, Simon DN, Thomas LE, et al.
Eur Heart J. 2015;36:3258-64.


臨床上の疑問:
 一般人口において心房細動患者の出血リスクをORBIT出血スコアが予測するか?ORBITスコアはHAS-BLEDやATRIAスコアと比較してどうか?


方法:
①デザイン:2つの観察研究(ORBIT-AF研究とROCKET-AF研究)のデータを抽出。ORBIT-AFは、2年間のフォローアップ期間をderivationとして利用。ROCKET-AFは、心房細動患者の脳卒中血栓症予防にリバロキサバンとVitK拮抗薬を比較したRCTで平均1.9年のフォローでvalidationとして利用した。
②セッティング:176の米国の医療機関をderivation。国際多施設医療機関をvalidationとして利用。
③患者:Derivation cohortは、心房細動患者で経口抗凝固薬を使用している7411人。平均75際、58%男性。Validation cohortは、14264人の心房細動患者でランダムにリバロキサバンかワーファリンに割り付け。
④Prediction guide:ORBIT モデルでは12個の変数を評価。具体的には、抗血小板薬使用・過去に出血歴・年齢・eGFR・ヘマトクリット心不全既往・癌既往・COPD・貧血既往・股関節骨折もしくは骨粗鬆症の既往・喫煙状態・過去の喫煙歴の12を評価した。
 この中から有用な5因子を抽出してORBIT 出血スコアとした。
 ・75歳以上         1点
 ・貧血(Ht低値)      2点
 ・出血既往         2点
 ・慢性腎臓病(eGFR低下)  1点
 ・抗血小板薬使用        1点
上記点数でリスクを層別化して、0-2点をlow risk、3点とmedium risk、4点以上をhigh riskとした。
※参考)
 HAS-BLEDスコア:高血圧・慢性腎臓病・肝疾患・脳卒中既往・過去の主要な出血既往・INR上昇・65歳以上・出血リスクのある薬剤・アルコールや薬物使用
 ATRIAスコア:貧血・重症腎障害・75歳以上・過去の出血・高血圧

⑤アウトカム:2年時点での主要な出血

結果:
 主要な出血はderivation cohortでは4.0/100人年、validation cohortでは3.5/100人年だった。下記はORBITとHAS-BLED・ATRIAスコアの比較

f:id:tyabu7973:20160127210058j:plain(本文より引用)

結論:
 人口レベルの心房細動研究において、5項目ORBITスコアは、C-staticsが0.62で2年後の出血イベントを予測した。

  なかなか興味深い結果です。communitiy based studyからのデータ抽出なのが味噌でしょうか。あとはワーファリン以外にリバロキサバンのデータを用いて検証しているのが売りだとコメントされていました。
 それにしてもHAS-BLEDのc-staticsってこんなもんなんですね。出血予測には限界があるなあと改めて実感。そしてORBITやATRIAの方がシンプルです。項目も洗練してきた印象があり、そのうちHAS-BLED卒業が近いかもしれませんね。
 と思ったら、post hoc解析では妥当な出血を対象に評価するとHAS-BLEDの方が良かったとも。HAS-BLEDスコアの注意点は、高血圧や薬剤・アルコール使用・INRなど修正可能な因子が含まれており、”点数高いから抗凝固やらない”ではなく、これらの修正可能な因子を修正するところからスタートすべきというところですね。

プライマリ・ケア医のための心房細動入門

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