栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:妊娠中のざ瘡の安全な治療/下垂体機能低下症の治療/三叉神経痛の治療/閉経後腟症状の治療

MKSAPまとめです。 
ゲストライターC先生今週もばりばりです。

妊娠中のざ瘡の安全な治療
Treat acne safely during pregnancy

❶症例 
  22歳女性が10歳代から指摘されているざ瘡の評価のために受診。彼女は妊娠2ヶ月で最近徐々にざ瘡が悪化している。市販の過酸化ベンゾイル製剤を使用していたが症状が改善せず。既往歴には特記事項なく、内服薬は産前のビタミン剤のみ。
 身体所見では、掻爬された炎症性丘疹と、膿疱が数個、開放・非開放の角栓が頬や顎部分に認められた。

 以下の外用剤で本患者に禁忌なのはどれか?
A.  アゼライン酸
B.  クリンダマイシン
C.  タザロテン
D.  トレチノイン

 ❷妊娠中のざ瘡治療
 タザロテン(局所アセチレンレチノイド)はざ瘡や乾癬の治療だが、妊婦にはカテゴリーXで絶対禁忌である。レチノイドは増殖抑制効果により角化を正常化させるが抗炎症効果もある事が近年分かって来た。その結果として、ざ瘡の治療薬として有効である。特に妊婦が全身投与されるとレチノイドが受容体と結合し、器官の形態や数異常を来しうる。レチノイド胎芽病は認知度の高い症候群である。局所薬の曝露による催奇形性のリスクは不明だがタザロンテンは妊婦でカテゴリーXになる数少ない薬剤の一つで、梱包ラベルには使用前に妊娠検査を行い否定する事と記載してある。

❸その他の選択肢
トレチノイン:トレチノインは局所レチノイドの別の種類で、妊婦に対する使用はカテゴリーCで原則禁忌。有益性が害を上回ると思われる時に使用は可能である。レチノイドには催奇形性があるため通常皮膚科医は妊婦には使用を避けている。内服トレチノインはAPLの治療にも適応があるが妊婦カテゴリーはD。

アゼライン酸・クリンダマイシン:外用のクリンダマイシン、アゼライン酸(自然に存在するカルボン酸の一種)は、妊婦カテゴリーBであり、妊娠中も安全に使用可能とされている。

Key Point
✓ タザロテンは妊婦に対する推奨はcategory Xで禁忌である。

Thiboutot DM. Overview of acne and its treatments. Cutis. 2008;81(1 suppl):3-7. PMID: 18338651  

 

 

下垂体機能低下症の治療
Treat hypopituitarism

❶症例
 38歳男性が、4ヶ月前から悪化する倦怠感、寒がり、体重増加(+5.5Kg)、間欠的な頭痛、性欲低下を主訴に受診された。多飲や多尿はない。
 身体所見では、顔色が悪く疲れた様に見える。BP 102/78mmHg、HR 58bpm、RR 12/min。深部腱反射では弛緩相の遅延がある。その他の身体所見に特記すべき所見を認めない。。

f:id:tyabu7973:20160130094200p:plain(MKSAPより引用)

 頭部MRIでは1.1cmのトルコ鞍の腫瘤を認め、鞍上部や周囲には拡大していない。レボチロキシンが開始された。

 本患者でレボチロキシンと同時に開始すべきホルモンはどれか?
A.  グルココルチコイド
B.  成長ホルモン
C.  テストステロン
D.  バソプレシン

 ❷下垂体機能低下症の治療
  本患者では、副腎不全が進行するのを防ぐ為にステロイド補充が必須である。本症例はテストステロン欠損と中枢性甲状腺機能低下(fT3低下かつTSHが不適切に正常)があるため、下垂体機能低下症があると判断する。また、頭部MRIで鞍上部の腫瘍がある。下垂体腺腫等の腫瘍性病変では、正常下垂体を圧迫したり下垂体茎を途絶したりすることで下垂体機能低下を起こす。介入を要する場合は手術が第一選択となる。本症例では血清コルチゾルが正常下限であり、副腎機能はごくわずかしか残っていないと考えられる。甲状腺ホルモン補充をすると内因性コルチゾルの代謝が亢進し中枢性副腎機能低下が起こる。このため中枢性の甲状腺機能低下の時は副腎機能を確認し、正常下限ないし低下の場合はステロイドを補充する。

❸その他の選択肢
成長ホルモン・テストステロン:本症例では成長ホルモンの欠損(IGF−1低下)があり、男性性腺機能低下(テストステロン低下)もあるが、それほど重度ではないためこれらの補充は後日でも良い。

バソプレシン尿崩症の徴候も無い為バソプレシン補充の必要は無い。

Key Point
✓ 中枢性甲状腺機能低下症で甲状腺ホルモン補充を開始する時にはステロイド補充も同時に行う

Grossman AB. Clinical review: The diagnosis and management of central hypoadrenalism. J Clin Endocrinol Metab. 2010;95(11):4855-4863. PMID: 20719838

 

 

三叉神経痛の治療
Treat trigeminal neuralgia

❶症例

 85歳女性が、2週間前からの右頬と顎の痛みを主訴に受診。痛みは5−60秒ほど持続し、1時間に何回も起こる。痛みは、噛んだり、顔を洗ったり、歯を磨いたりという動作で誘発され、食事も困難になって来た。発熱・結膜充血・流涙・鼻汁・鼻閉・顔面発赤はない。母親に片頭痛、父親に脳梗塞の家族歴あり。内服薬なし。
 身体所見では、T 37.3℃、HR 88bpm、BP 108/70mmHg、RR 16/min。顔面右側の触覚過敏があるが、皮疹・眼瞼下垂・縮瞳・眼脂はない。
 採血ではESR、CRPを含め特記所見なし。脳の造影MRIでも特記所見なし。

 この患者の治療で最も適切なのは以下のどれか?
A.  アシクロビル
B.  カルバマゼピン
C.  ガバペンチン
D.  微小血管除圧術
E.  プレドニン

 三叉神経痛
 本患者は三叉神経痛であり、第一選択はカルバマゼピンで、代替療法としてオキシカルバマゼピンがある。三叉神経痛は、高齢者に多く、痛みは顔面や額など三叉神経の2・3枝領域の発作的な痛みが特徴である。持続時間は数秒-数分で、ほぼ全例に口腔内もしくは顔面のトリガーポイントがある。神経診察と造影MRIでは特記所見は得られないが、可能性は低いが頭蓋内病変がある事があるので検査は必要になる。約30%で薬物治療が効果が無いことがある。

❸その他の選択肢
アシクロビル:アシクロビルやバラシクロビルのような抗ウィルス薬は、帯状疱疹ウィルスの治療として有効である。三叉神経にヘルペス感染が起こると皮疹・水疱・角膜炎が起こり、本症例ではそれに準じる症状は無い。

ガバペンチン:ガバペンチンは第二選択薬で効果を支持する根拠は乏しい。

微小血管除圧術:プレドニンは主に群発頭痛や巨細胞性動脈炎、Tolosa-Hunt症候群、稀に静脈洞の特発性肉芽腫炎症による有痛性眼筋麻痺などの時に使用する。症例では眼の症状が無く、下位三叉神経の症状のみで炎症反応も上昇しておらず、造影MRIでも正常のためこれらの疾患は否定的である。

Key Point
✓ 三叉神経痛は発作的な疼痛が特徴的で、顔面と前額部である三叉神経第2・3枝領域に限局するのが一般的。

Grossman AB. Clinical review: The diagnosis and management of central hypoadrenalism. J Clin Endocrinol Metab. 2010;95(11):4855-4863. PMID: 20719838

 

 

閉経後腟症状の治療
Treat menopausal vaginal symptoms

❶症例

  56歳女性が、重度の膣の痒みと不快感のため受診された。症状は、最近4ヶ月間で徐々に増悪してきた。膣の分泌物や悪臭は無い。膣の乾燥があり、潤滑剤を使っても性交時に痛みがでるようになった。閉経は53歳で、内服薬はカルシウムとビタミンDのみ。
 身体所見では、バイタルサインは正常。BMI 29。膣壁は青く乾燥して、襞が少なく点状出血が見られる。膣分泌物は殆どない。膣のpHは6.0。塗抹標本では白血球は少ない。Whiff試験は陰性。KOH染色でも菌糸や菌体はなし。

 本患者で次に行うべきマネージメントで最も適切なのはどれか?
A.  経口の抱合型エストロゲン+メドロキシプロゲステロン
B.  メトロニダゾール内服
C.  クロトリマゾール膣内投与
D.  エストラジオール膣内投与

 閉経後腟症状

 本症例で最も適切なのはエストラジオール膣内投与である。膣萎縮の診断には病歴、診察所見が有用である。膣壁が蒼白になり、皺が減り、点状出血を起こすのが特徴的。閉経後女性の10-40%が本症に罹患し、膣の痒みや性交時痛を自覚する。閉経後の血管運動症状(いわゆる更年期症状)が数年で改善するのとは異なり、膣萎縮は増悪していき治療を要する事がある。軽症-中等症は潤滑剤で対応し、本症例のような重症の場合にはエストロゲン膣内投与で治療する。低容量の経膣タブレット(10-25μg)やエストラジオール膣リング(ESTRING)8−9μgの方が全身投与となる膣クリームより推奨される。

 ❸その他の選択肢
 経口エストロゲン経口エストロゲン錠も膣萎縮に有効ではあるが、冠動脈疾患やVTE、乳癌リスクなどの観点から、現行のガイドラインでは全身投与より低容量の局所治療の方が推奨されている。
 メトロニダゾール内服
細菌性膣炎は膣の分泌物が増加し膣pHが上昇し、生食処理した検体で菌が確認出来たり、whiff試験が陽性になったりする。これらの所見は本例では見られず細菌性腟炎は否定的であり、細菌性膣炎の治療薬であるメトロニダゾールは適応にはならない。

 クロトリマゾール膣内投与酵母菌感染では白色粘稠の分泌物になり、KOH染色で陽性になる。症例では症状も検査所見も合致しないため、クロトリマゾールでの治療は適応ではない。

Key Point
✓ 膣萎縮の症状が重度で潤滑剤のみで対応困難な場合は、エストロゲン経膣投与を考慮する。

North American Menopause Society. The role of local vaginal estrogen for treatment of vaginal atrophy in postmenopausal women: 2007 position statement of The North American Menopause Society. Menopause. 2007;14(3 Pt 1):355-369. PMID: 17438512

 

MKSAP for Students 5

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MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program (Set of 2 Parts)

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