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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:喘息発作時のエピネフリン投与/合併症が出ない糖尿病/Empty sella

今週のカンファまとめておきます!
喘息知らなかったなあ。

重症喘息発作時のエピネフリン Epinephrine for severe attack of asthma

 重症喘息発作の患者さんが来院されて、SABA・酸素・ステロイド全身投与・マグネシウム静注・エピネフリン投与・・・。みたいな話題になりました。で、「エピネフリンを筋注しました。」という話題になり、「え?皮下注じゃない?」みたいなモヤモヤが出て、調べてみると、UptodateにもDynamedにもそもそも喘息治療にエピネフリンが記載されていませんでした。
 Dynamedを読むと以前は病院前投与などが検討されていたけど、SABAが使える今基本的には副作用も多いし使用しないようにとされています。
 記載としては、

No proven advantage of systemically administered (e.g., sub-Q) epinephrine therapy over orally inhaled therapy for the acute management of asthma exacerbations.  Parenteral epinephrine may be particularly useful in treating anaphylaxis and angioedema coexisting with asthma.(Dynamed "Epinehrine"より)

 

みたいな。なにー、皮下注とか筋注とかそうゆう問題じゃないじゃん。
 ちょっと衝撃を受けて、喘息の世界的ガイドラインであるGINAを見てみることにしました。ここでも、Treatment in acute care setting such as the emergency departmentという項目にさらっと

Epinephrine (for anaphylaxis) :Intramuscular epinephrine (adrenaline) is indicated in addition to standard therapy for acute asthma associated with anaphylaxis and angioedema. It is not routinely indicated for other asthma exacerbations.
GINA 2015 http://www.ginasthma.org/local/uploads/files/GINA_Report_2015_Aug11.pdf

と記載されていました。ここでは筋注。基本はアナフィラキシーか血管浮腫疑いを合併した患者さんに使うようにとのこと。いやあ無知でした。
 とはいえ、過去に使用経験はありますが、比較的効いていた様な感触を得ています。これは臨床研究をやるしかないでしょう。ちなみに日本の医師会が出しているものには記載あり。こちらは過去の記憶にあった0.1%アドレナリン皮下注射です↓
http://dl.med.or.jp/dl-med/chiiki/allergy/bronchial_asthma.pdf
 
 誰かこの辺りに詳しい方は是非詳細を教えてくださいませ。

 ✓ 重症喘息発作時のエピネフリン投与のエビデンスは実ははっきりしない

 

 

合併症が出ない2型糖尿病 Long standing type 2 diabetes with no complications

 糖尿病罹患歴と合併症の関連はしばしば報告されています。たとえば、ランドマークスタディと言われる神経障害の観察研究では、25年後に神経障害をきたした患者が全体の50%に及ぶとしていますし、網膜症は20年時点で50-80%に認められるという記載があります。
 さらに、罹病期間が5年長くなる毎に、心筋梗塞脳卒中の発症率はHR 1.49(1.41-1.58)、死亡率はHR 1.78(1.68-1.9)と有意に増えており、罹病期間が合併症の発生に関連しているのは間違いありません。

 ただ、実臨床をやっていると、たまたまかもしれませんが、かなり長期間の罹病歴があるのに、まったく合併症がない患者さんに出会うことも稀ではありません。中には、血糖コントロール不良で入退院している方にも似たような方がいます。

 上記の罹病疾患で考えてみると、25年後に神経障害をきたしていない患者が50%はいるし、網膜症をきたしていない方も20-50%はいるということになります。大血管合併症の場合にはもっと発生頻度は少なくなるでしょう。

 個人的に気になるのは、「長期間糖尿病に罹患しても合併症が出ない患者さん」の特徴です。これは前向き観察研究で大規模に見ていくしか無いのかもしれませんが、ここが分かると、糖尿病治療のintensityを下げるか否かが判明してきますし、そもそも血糖コントロール以外の要因が合併症の出現に関連しているという結果になるかもしれません。現に、昨今の多くの研究が血糖を下げること、HbA1cを下げることの有効性に疑問を投げかけていますし、喫煙や血圧・脂質などに介入する方がよほど合併症予防になるかもしれません。

 ✓ 合併症の出ない罹病期間の長い糖尿病患者の研究を

 

 

Empty sella Empty sella

 Empty cella症候群は、脳周囲の脳脊髄液とトルコ鞍を分離する防御組織に欠損がある疾患です。その結果、脳脊髄液が下垂体とトルコ鞍の壁を圧排し、最終的にくも膜下腔がトルコ鞍内に嵌入し、トルコ鞍が脳脊髄液で満たされることになります。分類としては主に原発性と続発性があります。

 原発性は上記の膜欠損の問題が主病態であり、これによって下垂体組織が圧排され、下垂体組織が認められないように見えます(empty cella)。実際には、下垂体組織は鞍壁に押しつけられて平たく延びているので、トルコ鞍の拡大はきたすものの、ホルモン欠乏が出るものと出ないものとがあります。女性に多く、肥満で血圧が高い方が多い様です。ほとんどが無症状だが、まれに頭痛・視野障害・下垂体機能低下をきたすことがある。

 続発性は、基本的には下垂体疾患により、例えば下垂体腺腫術後や分娩後の下垂体卒中(Seehan症候群)、放射線治療後、頭部外傷後などに見られることがあり、この場合には下垂体機能低下症を合併する可能性があります。

http://3.bp.blogspot.com/-ux0XKj0n8Kg/T4FJwkC6kHI/AAAAAAAAAMY/wP94co5uR54/s1600/Empty_Sella_MRT_FLAIR_sag_001.jpg
(http://3.bp.blogspot.com/-ux0XKj0n8Kg/T4FJwkC6kHI/AAAAAAAAAMY/wP94co5uR54/s1600/Empty_Sella_MRT_FLAIR_sag_001.jpg
より引用)

 

 ✓ 頭部MRIでは下垂体に注目しよう