栃木県の総合内科医のブログ

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論文:Prospective cohort PPIがCKDリスクになる

PPIがCKDリスクになる
Proton pump inhibitor use and risk of chronic kidney disease*1

JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2015.7193 Published online January 11, 2016

【背景】 
・CKDリスクとして糖尿病・高血圧は有名だが、他に関連する因子として薬剤がある。
・薬剤使用が潜在的なCKDリスクを上げることが知られ、その傾向はPolypharamacyで強まるとされる。Expert Opin Drug Saf. 2014;13(1):57-65.
PPIは米国で最も多く処方される薬剤の一つだが、25-70%は適切な適応ではないと言われている。BMJ. 2008;336(7634):2-3.
・処方期間も長期使用がある。小児でも同様の傾向。Pharm World Sci. 2006;28(4):189-193. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2007;45(4): 421-427.
PPIの米国市場データが使用できるようになり、いくつかの疾患との関連が指摘されるようになり、股関節骨折・市中肺炎・CDI・急性間質性腎炎・急性腎障害を増やすことが分かってきている。
AKIを繰り返す仮説と低マグネシウム仮説のどちらかの機序でCKDを起こすのでは?という仮説がある。

【目的】
 PPI使用とCKD発症について住民レベルの観察研究で関連を評価する

【デザイン・患者】
 アテローム性動脈硬化のリスクを調べる前向きコホート研究であるAtherosclerosis Risk in Communities(ARIC)から、eGFR>60ml/min/1.73m2以上の患者を2011年12月31日まで追跡した。データ解析は2015年に解析。結果は、別の大規模コホートであるGeisinger Health Systemを利用した患者で、eGFR>60ml/min/1.73m2以上だった患者24万8751人を対象に同様の分析を行い、結果の再現性を確認した。

【曝露】
 ARICでは自己申告による処方確認を行った。具体的には聞き取り調査で何の薬を飲んでいるかを電話調査し、年1回医薬ヒヒン使用について確認した。また、Geisingerコホートでは、外来のPPI処方歴を確認した。H2拮抗薬使用はネガティブコントロールとして比較された。

【メインアウトカム】
 CKD発症は、ARICでは退院時または死亡時のカルテ記録の診断コードを参照に判断した。また、Geisingerコホートでは外来のeGFR測定値が60ml/min/1.73m2未満の状態が持続した状態と定義した。

【結果】
 ARICコホートではベースラインでPPIを使用していたのは10482人中322人だった。平均63歳、43.9%が男性だった。PPI非使用者と比較して、PPI使用者は有意に白人が多く、肥満があり、降圧薬使用が多かった。最終的にPPI使用者のうちCKDを発症したのが、56/322人(17.4%)、PPI非使用者でCKDを発症したのが、1382/10160人(13.6%)だった。患者背景の調整をしない状態で、PPI使用とCKD発症はHR 1.45(1.14-1.96)と有意に相関した。地理的・社会経済的・臨床特徴的な調整を変数で行ってもリスクはHR 1.50(1.14-1.96)と有意だった。

 GeisingerコホートではベースラインでPPI使用していたのは、24万8751人中1万6900人だった。平均年齢50歳、43%が男性だった。PI使用者はやはり白人・肥満が多く、喫煙者も多かった。また、降圧薬・スタチン・利尿剤・アスピリンなどの使用頻度も高い。PPI使用者のうちCKDを発症したのが1921/16900人(11.4%)、PPI非使用者のうちCKDを発症したのが28226/231851人(12.2%)で、未調整HR 1.20(1.15-1.26)、調整後はHR 1.17(1.12-1.23)だった。PPIの処方頻度が分かった患者のみで比較すると、一日2回投与群は1回投与群より有意にリスクが高かった。

f:id:tyabu7973:20160130193558j:plain(本文より引用)

【結論】
 PPI使用はCKD・AKI発症の独立した予測因子で、H2拮抗薬は関連しなかった。PPIそのものが腎毒性があるのかその機序はどんなものかは更なる検証が必要である。

 

【批判的吟味】
PPI使用群と非使用群のベースラインがかなり異なり、使用群は他のCKDリスクも多く抱えており、交絡因子は十分排除できていない
・電話調査なので、処方の実態が十分把握できておらず、監視バイアスが存在する。OTCなどでも購入できることを考えるとPPI使用者を過小評価している可能性がある。
・特にARICは入院データ。Geisingerコホートでは外来の腎機能もfollowしているが不十分。
・CKD診断の問題点もあり、特にARICでは退院時コードで良いのか?登録漏れなどのリスクも考えられる。 

【個人的な意見】
 PPI長期の新たな副作用というところなんでしょうか。ちょっとコホートの交絡が大きすぎる気がするので、額面通りはとれませんが、間質性腎炎やAKIとの関連が過去に報告されていることを考えるとあながち間違っていないんでしょうね。何にせよ、不要に処方継続はアカンということでしょう。

✓ 大規模住民レベル観察研究でPPI処方はCKD発症の独立した予測因子である